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『ハッタリの流儀』堀江貴文|「できます」と言い切る覚悟が、信用に変わる

キャリア・働き方 ✍ 堀江貴文
約7分で読めます

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『ハッタリの流儀』
目次

「ハッタリ」という言葉に、口先だけの見栄っ張りというイメージを持つ人は多いだろう。だが堀江貴文はこの語を、ほぼ正反対の意味で使う。いまの実力では届かないことを「できます」と言い切り、宣言したあとに必死で辻褄を合わせにいく——その覚悟のことを、本書はハッタリと呼ぶ。

嘘との違いはたった一つ、宣言の後に圧倒的な努力が続くかどうかだ。『ハッタリの流儀』は、AIやロボットに労働が明け渡されていく時代に、人とお金をどう手元へ引き寄せるかを説いた本である。

副題「ソーシャル時代の新貨幣である『影響力』と『信用』を集める方法」に、その狙いが凝縮されている。派手な成功論に見えて、読み進めるほど泥臭い努力論へ着地していく——この落差こそ、本書の面白さだと私たちは受け取った。

「ハッタリ」は見栄ではなく、できない宣言に努力を追いつかせる覚悟

まず言葉の定義を丁寧に押さえたい。堀江の整理はこうだ。できるに決まっていることを口にするのは、そもそもハッタリではない。いまはできないことを断言し、そこから逆算して自分を追い込む覚悟こそがハッタリであり、その覚悟が10も100も積み重なると「信用」に変わる。

裏付けとして語られるのが、学生時代のエピソードだ。堀江は未経験だったオラクルのシステム制作を「できます」と引き受け、書店で専門書を読み漁って納品した。

数カ月で得た報酬は90万円。時給1200円のアルバイトと比べれば桁違いの経験値で、しかも報酬以上に「引き受けてから覚える」という筋肉がここで鍛えられている。

方法論の核は「走りながら学べ」の一言に尽きる。一から十まで体系立てて学ぶ必要はなく、必要なときに必要な分だけツマミ食いで覚えればいい。見切り発車で着手し、わからない箇所はその都度つぶす。

宣言が先にあるからこそ、後戻りできない状況そのものが最大の学習エンジンになるという理屈だ。これを桁外れのスケールでやり続けたのがロケット開発で、私財60億円超を投じ、2019年に日本初の民間単独ロケットとして宇宙空間へ到達した。

言葉が現実を引き寄せた、象徴的な実例である。

ここで見落としたくないのは、ハッタリが「信用」という貨幣に両替されていく回路のほうだ。一度の大言壮語は運任せでも、辻褄合わせを繰り返して実績へ変えていくと、周囲は次の宣言も信じるようになる。

堀江が影響力と信用を新貨幣と呼ぶのは、それがお金や人を呼び込む原資になるからだ。逆に言えば、宣言したのに辻褄を合わせられなければ、手元に残るのは「ただのホラ吹き」という負の評価にすぎない。

ハッタリは、外せば信用を毀損しかねない賭けでもある——本書はその危うさをあまり強調しないが、実践する側は肝に銘じておきたい。

労働がオワコンになる時代、価値は「役に立つ」から「面白い」へ移る

なぜいまハッタリなのか。前提には、堀江の時代診断がある。計算や単純作業、論理で処理できる仕事は、休まず正確に働ける機械のほうが得意だ。だから人間の労働は少しずつ需要を失い、いわば「オワコン」になっていく——時代遅れで用済みになる、という意味の俗語だ。

生活コストが下がり労働から解放されると、人には膨大な余暇が生まれる。そこで値がつくのは「役に立つ」ことではなく「面白い」「心が動く」ことだ、と堀江は言う。

分かりやすい例が、ヒカキンがスライムをこねて遊ぶ動画だろう。実用性はゼロなのに莫大な影響力とお金を生む。意味がないからこそ機械には代替できない、という逆転がここで起きている。

補助線として引かれるのが、2019年に発表された小学生のなりたい職業ランキングだ。上位をユーチューバー、プロゲーマー、ゲーム実況者が占めた。

子どもたちは、価値の置き場所が移ったことをすでに嗅ぎ取っている。ただし留保もいる。「面白い」で食える人はごく一部で、その裏には無数の埋もれた発信者がいるはずだ。

本書はその生存率の低さにはあまり触れない。だからこの診断は、未来の予言というより「自分の努力をどこへ張り替えるべきか」を測る指針として読むのが実際的だと思う。

完成品より「ダダモレ」する過程が共感を集める

第二の柱が「ボケ」と「ダダモレ」だ。他人の行動に横から口を出す一億総ツッコミ時代にあって、希少なのは批判を恐れず自分から動く「ボケ」の側の人間だと堀江は言う。

そして、そのボケる過程を隠さず見せる技術が「ダダモレ」である。情報解禁日を待って完成品を披露するやり方はもう古い。企画段階の迷いも、失敗して血を流す姿も、SNSで発信し続ける。

その生々しさが人の心をつかむ。

例として、「モテるために生きている」を掲げ続けたゆうこす(菅本裕子)、副業のメルマガから著書累計100万部超へ広げたMB、美術館建設のため十数億円の借金を宣言し、その無謀ごとオンラインサロンで見せた西野亮廣らが並ぶ。共通するのは、挑戦している姿そのものをコンテンツにしている点だ。

もっとも、過程をダダモレさせれば誰でも共感を得られるわけではない。同じ失敗の開示でも、応援に変わる人もいれば、冷笑や炎上を浴びる人もいる。差を分けるのは、その挑戦に他人を巻き込むだけの大きな旗が立っているかどうかだろう。

本書の実例が軒並み「途方もない目標」を掲げている点は見逃せない。小さくまとまった挑戦をいくら実況しても、人を動かす熱量までは生まれにくいのだ。

ここで本書の核心が顔を出す。お金より「共感」が先だ、という主張である。投資したいお金は世の中に余っており、だからこそ共感を先に集められる人が強い。

共感さえあれば、クラウドファンディングやサロンを通じてお金は後からついてくる。家入一真の「ポルカ」——「財布をなくした」程度の理由でも仲間から数百円ずつ集まるアプリ——が、その仕組みが現に動いている証拠として挙げられる。

堀江の比喩「ほっとけない孫」も鋭い。完璧な優等生は応援されない。むしろ未熟なのに大きな夢を語り、可愛げを持って甘えてくる若者を、大人は放っておけない。

あえて手のかかる余白を残すことこそ、応援される側の条件になるという発想だ。

常識・親の教え・プライドを捨て、パクって客目線で磨く

ではハッタリ人間になるために何を手放すのか。本書は3つに絞る。第一に世間の常識。「こうあるべき」という言葉に従う限り、常識の外側からしか来ないハッタリは生まれない。

第二に親の教え。親の価値観は子ども世代から見れば数十年古く、悪気なく古い地図で今の道を案内される、と堀江は表現する。第三に高すぎるプライド。

「バカにされたくない」がいちばんの足枷で、むしろ恥をかくことこそ最高のプロモーションだと捉え直す。

実践面では、人を動かす技術としてのプレゼン論が印象に残る。堀江いわく、勝負は始まる前に決まっている。きれいなスライドでも巧みな話術でもなく、事前に相手を調べて心のバリアを解き、本番では業界の裏ネタや儲けのカラクリといったビビッドな雑談を投下する。

「こいつは面白い」「乗らないと損だ」と思わせた時点で勝ち、というわけだ。資料づくりに時間を注ぐより、自分の話を面白がる相手を探すほうが早い。

オリジナリティの捉え方も痛快だ。ゼロから考えるのは時間の無駄で、成功ノウハウはネットに出そろっているのだから片っ端からパクればいい。ただしパクって終わりではなく、「自分が客ならこうしてほしい」という消費者目線の改善を重ねる。

真似と改善を往復するうちに、自分でも狙っていなかった独自の色がにじみ出てくる。堀江自身、勝間和代や岡田斗司夫のコミュニティを観察して自分のサロンを立ち上げたと明かしており、パクりを恥じない姿勢は本書を一貫して貫いている。

派手なハッタリの裏にある、地道な足し算という現実

そして最終章で、本書は一気に地に足をつける。ここまでの華やかなハッタリ論の裏で堀江が本当に伝えたいのは、実は努力の話だ。テクノロジーや他人の力を借りて大きな成果を出す「掛け算」が効くのは、地道な「足し算」で自力を底上げした後だけ。

土台がなければ、ゼロに何をかけてもゼロと同じだ、と言い切る。

面白いのは、努力が楽しくなる条件を明かしている点だ。努力がつらいのは、まだレベルが低いから。自転車の練習と同じで、ある程度勝手がわかって成長を実感できると、そこから急に面白くなる。

だからまずはガムシャラに80点まで一気に引き上げろ、と説く。本気で努力する人でも多くは65点あたりで止まり、100点まで到達する人はわずか、120点までやり切る人は皆無だ——この数字の刻み方に、突き抜ける者とそうでない者の分岐がくっきり示される。

この足し算論は、前半のハッタリ礼賛と一見矛盾するように読めるが、実は本書の背骨をなしている。ハッタリという掛け算は、足し算で積んだ地力があってこそ辻褄が合う。

見切り発車で始めても、着手した後の詰めを怠れば、宣言はただの空手形に終わってしまう。堀江が最後に泥臭い努力論へ着地させるのは、勢いだけを真似したがる読者への、周到な予防線でもあるのだろう。

読み終えると、「実力がついてから」という言い回しが、少し言い訳めいて聞こえてくる。実力は挑戦の後についてくる、という順序の逆転こそ本書の背骨だ。

もっとも、この本はかなり読者を選ぶ。着実に積み上げるやり方に満足している人には刺激が強すぎるし、宣言の後に本当に努力を続けられる胆力があってはじめて成り立つ論でもある。

ハッタリと嘘を分けるのは結局その努力なのだから、覚悟だけを都合よく切り取れば、ただの口先だけの人になりかねない。裏を返せば、最初の一歩をいつも先送りにしてしまう人にとって、これほど背中を押してくれる一冊もない。

まずは小さく一つ、誰かに「やります」と言い切ってみる。言葉にした瞬間から、辻褄合わせという名の成長が静かに始まる。


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