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『「知っているかいないか」で大きな差がつく! 人生逃げ切り戦略』やまもとりゅうけん|凡人が経済的不安をゼロにする設計図

キャリア・働き方 ✍ やまもとりゅうけん
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『「知っているかいないか」で大きな差がつく! 人生逃げ切り戦略』
目次

「人生を逃げ切る」と聞いて、まず思い浮かぶのは何だろうか。宝くじの当選、起業の大当たり、あるいは早期リタイア。どれも、ひと握りの幸運か才能を前提にした絵だ。

ところが本書の言う「逃げ切り」は、拍子抜けするほど地味である。経済的な不安が限りなくゼロに近づき、面倒な人間関係や、決められた場所と時間に縛られなくなる。著者が描くゴールは、ただそれだけだ。

そして著者のやまもとりゅうけんさんは、この状態に最も近いのは天才でも富裕層でもなく「凡人」だと言い切る。一流の才能はいらない。むしろ凡人であることそのものが武器になる──そう断言できる根拠を、せどりや動画編集といった生々しい手段にまで降りて書いたのが本書だ。

新卒時の手取りは17万4000円。それが今では当時の100倍近くになり、約4000人が集うオンラインサロンを運営する。その人物が「自分は天才ではない」と前置きしたうえで明かす戦略には、精神論が一切混ざっていない。読後感が説教くさくないのは、そのためだと思う。

図解

稼ぎは「能力」ではなく「ポジショニング」で決まる

本書の主張を一行に圧縮すると、こうなる。稼げるかどうかは能力ではなくポジショニング(立ち位置の選び方)で9割決まる

努力の総量でも、生まれ持った才能でもない。お金が実際に流れ込んでいる市場を選び、そのなかで自分が勝てる場所を取れるか。著者の関心は、ほぼそこに集中している。

これは身も蓋もない話だが、納得感は強い。どれだけ全力で走っても、人の通らない道に店を出していれば客は来ない。逆に、そこそこの腕でも人通りの多い角に立てば商売は回る。

仕事に悩む人の多くは「もっと頑張れば」と能力の軸で考えがちだが、本書は「そもそも立つ場所を間違えている」という、別の軸を突きつけてくる。

ありがたいのは、この主張が抽象論で止まらないことだ。「では具体的に何をするのか」という問いに対して、せどり・プログラミング・動画編集という実名の副業と、その稼ぎ方まで踏み込む。著者本人やサロンメンバーの数字が随所に出てくるので、絵に描いた餅になりにくい。

ただし限界もある。手法の多くがYouTubeや特定SNSへの依存度が高く、規約変更やアルゴリズム変動のリスクと隣り合わせだ。著者自身もこれは認めており、一つの場所に賭けず横へ展開していくことで補おうとしている。読む側も、ここは割り引いて受け取っておきたい。

なぜ「逃げ切り」が凡人に向いているのか

かつて逃げ切りは、成功した経営者や一部の富裕層だけの特権だった。それが個人の手に降りてきた。著者はこれを「個人の時代」と呼ぶ。

理屈はシンプルだ。SNSやブログによって、無名の個人でも影響力を持てるようになった。時間を切り売りする労働は、自分一人が提供できる労働力に上限があるので、収入はどこかで頭打ちになる。ところが影響力は青天井に伸びていく。ここに、資本も人脈もない凡人の勝ち筋がある。

では、なぜ凡人のほうが有利なのか。答えは「共感」だ。

一流経営者の成功談は、多くの人にとって遠い世界の出来事でしかない。一方で、同じ悩みをくぐってきた凡人の発信には、別の凡人がすっと共感する。そして世の中の大多数は凡人なのだから、共感の届く範囲こそが最も大きな市場になる。

華々しい実績がないことが、むしろ参入の入場券になるという逆転の発想だ。

この有利さを活かす戦略が「一点集中から全面展開」である。最初から広い層を狙わず、まずニッチな領域でマイクロインフルエンサーとして認知を取り、そこから少しずつ横へ広げる。

本書で挙がるのはYouTuberのしゅんダイアリーさんの例だ。最初は金沢大学での仮面浪人という極端に狭いネタで陣地を取り、その後ターゲットを大学生全体、さらに就活系へと拡張していった。

狭く始めて広げる──この順番を逆にすると、誰の記憶にも残らず埋もれる。順序の話だと理解しておくのが肝心だ。

続かないのは意志のせいではない

副業や勉強が三日坊主で終わる。誰もが身に覚えのある悩みに、著者は実に身も蓋もない答えを返す。人間の意志は弱いもので、いつもどこかで欲に負ける、と。

だから意志でなんとかしようとしない。意志の弱さを前提に、それをカバーする「仕組み」を作る。ここが発想の転換点だ。

説得力があるのは、著者自身がつまずいているからだ。会社を辞めてフリーランスになった直後、彼は自堕落な生活に陥った。通勤という生活のルーティンが消えた瞬間、生産性が崩れたのだという。

自由を手に入れた途端にダメになる、という生々しい失敗から、彼は強制力のある日課を自分に課すことを学ぶ。

具体的には三つ。朝起きる時間を固定する。仕事を1時間単位で区切る。そして週に一度、ライバルやメンターと会って近況を報告する

なかでも効くのが最後の「人と会う」だと著者は言う。報告する相手がいれば、報告できる成果を出さざるを得なくなる。自分の意志ではなく、人間関係の強制力で自分を動かす。

怠ける自分を信用せず、外側に逃げ場のない約束を設計する。これはダイエットでも勉強でも応用が利く、汎用性の高い考え方だと感じた。

副業は「強み」ではなく「即金力×発信力」で選ぶ

副業選びで多くの人がやる失敗が、「自分の得意なこと」から入ることだ。著者はこれをはっきり否定する。

強みに縛られると、本当に稼げる市場の入り口を自分の手で閉ざしてしまう。ビジネスに感情論はいらない。「今、お金になる技術」をその都度手に入れるのが正解だ、と。

好きや得意を起点にせよという世間の助言とは真逆で、ここは賛否が割れるところだろう。だが「稼ぐ」という一点に絞れば、筋は通っている。

ではどう選ぶか。基準は「即金力」と「発信力」の二軸だ。即金力はすぐ現金になるか、発信力はSNSなどで影響力という資産になるか。この二つで副業を採点する。

推されるのは、せどり・プログラミング・動画編集。とくにせどりは初期費用がほぼいらず、クレジットカードさえあれば仕入れができる。即金性が高く、軍資金作りに向く。著者によれば、せどりで月の粗利30万円程度を出すのはそう難しくないという。

賢いのは組み合わせ方だ。即金力の高いせどりで種銭を作り、その経験をブログやYouTubeで発信して発信力へ変える。一方のデメリットを、もう一方で補う。点で稼ぐのではなく、稼いだ経験そのものをコンテンツ化して二重に回収する発想である。

逆に、手を出すなと釘を刺される副業もある。一つはネットワークビジネス。対面営業が基本で時間も労力も膨大になり、効率が悪い。著者自身、過去にこれで400万円の借金を抱えた経験があるだけに、警告の重みが違う。

もう一つはクラウドソーシングへの依存だ。構造的に発注者が有利で、安く買い叩かれやすい。駆け出しの一時期は仕方ないとしても、早く抜け出すべき場所だと言う。

過去の自分に向けて発信し、稼げたら手放す

いざ発信となると、誰に向けて書くのかで手が止まる。本書の答えは明快で、「過去の自分」に向けて書け、だ。

かつて自分が抱えていた不安や苦悩を、実体験ベースで解いてみせる。これが最も簡単で、最も共感を得やすい。検索で出てくる二次情報より、自分が通った一次情報のほうが、個人の発信では価値が高い──これが著者の立場だ。

そのとき大事なのが、目線を下げること。世の中の大半は初心者なのだから、専門用語を避け、目線を45度下げて発信する。ベテランよりも「初心者に毛が生えた程度」の人のほうが、初心者の気持ちがわかり、リアルタイムな情報を届けられる。

実績が浅くても発信していい、というこの指摘は、「自分にはまだ早い」という言い訳を静かに奪ってくる。

マネタイズの順番にもこだわりがある。最初から課金しない。潔く全部を無料で差し出し、お金より先にフォロワーという「資産」を集める。信頼が積み上がってから、個別性の高い情報を有料で売る。

順番を間違えれば、信頼が育つ前に客は逃げる。先に与え、後で回収する。短期で売り急がない胆力が要る戦略だ。

そして影響力がついたら、次は手放すフェーズに入る。動画編集や文字起こしのような「自分でなくてもできる作業」は、お金を払って他人に任せる。著者はYouTube動画を月50本近く専属の編集チームに外注し、合計50万円ほどを払っているという。

外注で空いた時間を、新しい事業の種まきに回す。一人の労働力には限界があるので、ここを越えないと収入は頭打ちになる。これが、個人の労働を「自動化されたビジネス」へ変える分かれ目だ。

サロンメンバーの逃げ切り方も多様で、動画編集者向け教材で月商1000万円を超えた人もいれば、地方で農業をしながらEC物販で「地元のウェブ名士」になった人もいる。

手段は違っても、ニッチで認知を取り、発信し、仕組み化するという骨格は共通している。

アンチとAI、二つの不安への答え

発信を始めると怖いのがアンチだ。著者の対処は拍子抜けするほど明快で、基本は無視、つまりミュートする。

アンチは発言の中身ではなく発言者そのものを否定してくるので、議論しても平行線にしかならない。だから相手にしない。応用として、言われて嫌な弱点を先回りして自分から公言しておくと、質の低い批判を予防できるという技も紹介される。

サロンメンバーが自ら「情報商材屋」と名乗ってギャグにし、アンチを封じた例が痛快だ。攻撃の材料を先に手放してしまえば、相手は振り上げた拳の置き場を失う。

もう一つの不安がAIだ。仕事を奪われるのでは、と。著者の見立てはむしろ逆で、AIによって人々の可処分時間が増えれば、SNSや動画を見る時間も増える。結果としてインフルエンサーはより稼ぎやすくなる、と読む。これは現時点では著者の予測である点は、フェアに添えておきたい。

お金の使い道にも順番がある。収入が心許ないうちは、いきなり金融商品や不動産に向かわない。まず自分の知識に投資する。稼ぐ力が上がってから、お金にお金を稼いでもらうフェーズへ移る。自己投資が先、金融投資が後。元手の小さい凡人にこそ妥当な順序だろう。

まず月数万円の「成功体験」を作る

本書を読んで明日から動くなら、やることは驚くほど絞られる。

第一に、会社を辞めずに副業を始める。本業はセーフティネットだ。安定収入があるからこそ、失敗を恐れず挑める。背水の陣を敷くのは、才能を頼れない凡人にはリスクが高すぎる。

第二に、即金性の高い副業で軍資金を作る。せどりのように、やればすぐ利益が出るものから入る。理屈を学ぶより先に、まず月数万円でいいから自分の手で稼ぐ感覚をつかむ。著者の言う「アウトプットありき」だ。

第三に、過去の自分に向けて発信を始める。副業でぶつかった壁と、それを越えた経験を、そのままSNSやブログに書く。専門用語を避け、初心者の目線で。最初は反応がなくて当たり前なので、無料で出し続けてフォロワーという資産を貯める。

どれも、今日から始められることばかりだ。

「逃げ切り」という言葉は受け身に聞こえる。だが本書が説くのは、徹底して能動的な行動である。市場を選び、仕組みで自分を動かし、過去の自分に語りかける。才能がないと立ち止まっている人にこそ、最初の小さな一歩を踏ませてくれる本だと感じた。

まずは、せどりで1000円でいい。自分の力で稼いでみる。その小さな成功体験こそが、逃げ切りの入り口になる。


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