5000万円の借金を抱えた男が、債権者に車でダムへ連れて行かれる。
「もうお金は返してもらわなくていい。その代わりに、ここから飛び降りてよ」
これ、フィクションじゃありません。
村西とおるという男が実際に経験した話です。
で、どうなったか。
1時間の土下座と説得の末、生きて帰ってきた。
しかも1年後、約束通り5000万円を返済しました。
村西とおるさんの『禁断の説得術 応酬話法』を読んで、「説得」の概念が変わりました。
そもそも「応酬話法」って何?
1960年代にアメリカから日本に来たセールステクニック。
簡単に言うと、相手に「ノー」と言わせない説得術。
ただし、ここがポイント。
「論破する技術」じゃないんです。
相手を言い負かさずに、「なるほど」と思わせる技術。
この違い、わかりますか?
論破すると、相手は反発します。
でも「なるほど」と思わせれば、相手は自分で納得する。
村西さんは言っています。「相手を論破しても何の得もありません」。
断り文句は5パターンしかない
これ、この本の核心だと思います。
営業は断られた時から始まる。
で、面白いのが、断り文句って実は5パターンしかないらしいです。
- 「高い」
- 「必要ない」
- 「今すぐ決められない」
- 「同じものを持っている」
- 「お金がない」
これだけ。
奇想天外な断り文句なんて、まず来ません。
つまり、この5つに対する返しを準備しておけば、ほとんどの「ノー」に対応できます。
「ノー」が怖くなくなる。
5つの話法
この本では、5つのテクニックが紹介されています。
1. 間接否定話法
相手の意見を、まず「おっしゃる通りです」と肯定する。その後に「でも」「しかし」とソフトに反論する。
いきなり否定すると、相手は壁を作ります。まず肯定して、プライドを守ってから話を進める。
2. 繰り返し話法
相手の言葉を、そのまま繰り返す。
「高すぎる」と言われたら、「高すぎますか、おっしゃる通りです」。
これだけで、相手は「この人は自分の意見を理解してくれた」と感じる。攻撃的な言葉の「毒」が中和されます。
3. 質問話法
「はい」としか答えられない質問を重ねる。
「英会話の必要性を感じますか?」→「はい」
「もし話せたら素晴らしいと思いませんか?」→「はい」
3回「はい」を引き出したら、もう流れができてます。
4. 実例話法
過去の成功例を見せる。「私だけじゃないんだ」と思わせます。
5. 聞き流し話法
相手が感情的になったら、反論しない。聞き流す。
議論に勝っても、関係が壊れたら意味がありません。
ダムでの説得、何をしたのか
ここが一番面白かったです。
村西さんは、3つのことをやりました。
1. まず相手の感情を全肯定した
「信じていた人間に裏切られた悔しい気持ちは、痛いほどわかります」
怒ってる相手に、いきなり言い訳しても無駄。まず「あなたの怒りは正しい」と認める。
2. 相手の利益を提示した
「生かしておいてくれさえすれば、借りた5000万円を10倍にして返します」
ここで死んだら、相手は1円も取れない。生かしておけば、利益があります。
3. 相手の良心に訴えた
「私が本当にここから飛び降りて死んだら、優しいMさんの気持ちは傷つき、生涯消えることなく自分を責めることになるのではないでしょうか」
これがすごい。
「優しいMさん」と呼ぶことで、相手の自己イメージを「債権者」から「優しい人間」に変えた。
自分が「優しい人間」だと認識したら、殺すことができなくなる。
読んでから変わったこと
「ノー」に対する考え方が変わりました。
前は、「ノー」と言われたら終わりだと思ってました。
でも今は、「ここからが本番」と思えるようになった。
あと、反論されたときに、まず「おっしゃる通りです」と言う癖がつきました。
これだけで、会話の空気が変わります。
こんな人に読んでほしい
- 「ノー」と言われると心が折れる人
- 議論で勝とうとして、関係を壊してしまう人
- 押しの強い営業が苦手な人
- 「説得」を「論破」だと思ってる人
説得は、相手を打ち負かすことじゃない。
相手に「なるほど」と思わせること。
ダムの淵に立たされても、言葉だけで生還した男の話。
フィクションより面白いです。