「言葉にできない」の正体
目次
頭の中には、ちゃんとある。
なんとなく、こう思ってる。なんとなく、こう感じてる。
でも、いざ口を開こうとすると、出てこない。
「えーと」「なんていうか」「うまく言えないんだけど」
そう言ってるうちに、相手は別の話を始めてる。
これ、本当に「言葉が下手」なんだろうか。
「言葉にできない」の正体
友人に悩みを相談されたとき。
「わかる」と思った。「大変だね」と思った。
でも、それ以上が出てこない。
「なんて言えばいいんだろう」と考えてるうちに、「まあ、頑張れ」みたいな薄い言葉が出てしまう。
会議で意見を求められたとき。
反対意見はある。でも、なぜ反対なのか言えない。
「なんか違うと思うんですけど…」
「なんか、じゃなくて具体的に言って」と返される。
こういうとき、自分は「話すのが下手」だと思いがちだ。
でも、ちょっと待ってほしい。
本当に「話す技術」の問題なのか。
「考えてない」わけじゃない。整理されてないだけ。
電通でコピーライターとして活躍する荒木俊哉さんは、こう言っている。
「言葉にできないのは、考えていないのと同じ」
これ、最初はムカついた。いや、考えてるし。頭の中、ぐるぐるしてるし。
でも、よく考えてみると、ちょっと違う意味だった。
「考えてない」んじゃない。
「考えが整理されてない」んだ。
頭の中には、たしかに「何か」がある。モヤモヤした塊みたいなもの。
でも、それは言葉という形になっていない。
例えるなら、絵の具を混ぜ続けてる状態。
いろんな色が入ってる。でも、混ぜすぎて何色かわからなくなってる。
その状態で「この色は何?」と聞かれても、答えようがない。
言葉にするには、まず色を分けないといけない。
「あ、これは赤だな」「これは青だな」と。
それが「整理する」ということ。
頭の中を「書き出す」だけで変わる
じゃあ、どうすればいいのか。
答えはシンプル。書き出す。
え、それだけ?と思うかもしれない。
でも、これがバカにできない。
頭の中でぐるぐる考えてると、同じところをずっと回ってる。「あれも気になる」「これも気になる」「でもあれが…」。エンドレス。
書き出すと、それが止まる。
やり方は簡単。
スマホのメモでいい。ノートでもいい。なんでもいい。
頭に浮かんだことを、とにかく書く。文章じゃなくていい。単語でいい。箇条書きでいい。
「なんかモヤモヤする」 「上司がムカつく」 「でも自分も悪いかも」 「いや、やっぱりあっちが悪い」
こんな感じでいい。
書いてみると、わかる。
「あれ、同じこと3回書いてる」 「これ、別々の問題だと思ってたけど、実は繋がってる」 「本当に気になってるのは、これじゃなくてこっちだ」
頭の中だけだと見えなかったものが、見える。
書き出すって、要するに、頭の外に出すこと。
出すと、客観的に見れる。客観的に見れると、整理できる。
「たとえ」が言葉を引き出す
もう一つ、効果的なやり方がある。
「たとえ」を使う。
「なんか調子悪い」
これだけだと、何が言いたいのかわからない。相手も「そうなんだ」としか返せない。
でも、こう言ったらどうか。
「スマホのバッテリー、朝100%だったのに昼で20%になってる感じ」
急に伝わる。
「仕事がうまくいかない」
これも抽象的。
「ずっとルームランナーで走ってる気分。汗だくなのに、景色が全然変わらない」
こう言うと、「あー、わかる」となる。
たとえを作るのって、難しそうに見える。
でも、コツがある。
自分の感覚を、「形があるもの」に置き換えるだけ。
「疲れてる」→「電池が切れそうなスマホ」 「焦ってる」→「締め切り前日の学生」 「先が見えない」→「霧の中を歩いてる」
難しく考えなくていい。最初は下手でもいい。
やってるうちに、言葉が出てくるようになる。
「うまく言わなきゃ」が一番の敵
話が変わるけど。
言葉が出てこない人には、共通点がある。
「ちゃんとしたことを言わなきゃ」と思ってる。
会議で発言するとき。
「正しいこと言わなきゃ」 「的外れだと思われたくない」 「バカだと思われたくない」
そう思ってると、言葉は出てこない。
出そうとする言葉を、全部自分で潰してしまう。
これ、友達との雑談では起きない。
「最近さー」「なんかさー」「てか、あれ見た?」
いくらでも言葉が出る。
なぜか。
うまく言おうとしてないから。
完璧な言葉なんて、いらない。
むしろ、完璧を目指すから詰まる。
「とりあえず、今思ってること言っていい?」 「まだまとまってないんだけど」
こういう前置きをつけるだけで、楽になる。
言葉は、出してから直せばいい。頭の中で完成させようとするから、いつまでも出てこない。
「感じたこと」をまず言う
もう一つ、コツがある。
意見じゃなくて、感情から言う。
会議で意見を求められて、何も浮かばないとき。
無理に意見を言おうとしなくていい。
「正直、ちょっと不安です」 「個人的には、なんかモヤモヤします」 「直感的には、いいと思いました」
感じたことを、まず言う。
感情には、正解も不正解もない。
だから、言いやすい。
そして、感情を言葉にすると、不思議と意見も出てくる。
「なんでモヤモヤするかっていうと…」 「不安の理由は、たぶん…」
感情が、意見の入り口になる。
今日から試せる、一つのこと
長々と書いてきたけど、やることはシンプル。
今日、何か一つ「言葉にならないもの」を書き出してみる。
仕事のこと。人間関係のこと。将来のこと。
なんでもいい。
「なんかモヤモヤしてること」を、スマホのメモに書く。
文章じゃなくていい。単語の羅列でいい。5分でいい。
書いてみると、わかる。
頭の中にあったものが、ちゃんと「形」になる。
形になると、次に何をすればいいか見えてくる。
言葉にできないのは、才能の問題じゃない。
やり方を知らなかっただけ。
書き出す。たとえを使う。感情から言う。
これだけで、言葉は出てくるようになる。
最後に一つ。
言葉にするって、相手のためだけじゃない。
自分のためでもある。
モヤモヤを言葉にした瞬間、それは「問題」から「課題」に変わる。
課題になれば、対処できる。
言葉にできる人は、人生をコントロールできる人だ。
参考書籍
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荒木俊哉『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』 電通コピーライターが教える、頭の中を言葉にする技術。「言葉にできない」の本質的な原因と解決策がここにある。
-
せきしろ『たとえる技術』 「たとえ」の力で言葉が変わる。抽象的な感覚を具体的に伝える技術を学べる一冊。
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