本文へスキップ
ブクドリ | BOOK DRIP

休日の使い方が、20年後の選択肢を決める

約4分で読めます キャリア・働き方
目次

平均寿命は、過去200年にわたって、10年ごとに2年以上のペースで延び続けてきました。

リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットが『LIFE SHIFT』で示す数字です。この傾向が続けば、先進国で今生まれる子どもの半数以上は105歳以上まで生きます。

長生きは、ふつうに考えれば良い話です。問題は、私たちの人生設計が、その長さに合わせて作られていないことでした。

教育を受けて、働いて、引退する。この一本道が、寿命の伸びに耐えられなくなっている。

3ステージの人生は、寿命に耐えられない

グラットンたちの計算は、かなり厳しいものです。

100年ライフで「教育→仕事→引退」の3ステージを維持しようとすると、十分な老後資金を得るために80代まで働き続ける必要が出てきます。

つまり、モデルを変えないという選択は、働く期間を20年ほど延ばすという選択と同じです。

しかも、働く先の条件も変わります。グラットンたちは、テクノロジーの進化で定型業務が機械に代替され、中程度のスキルの雇用が空洞化すると指摘しています。

これは日本ではもう見えている変化です。たとえば、定型的な事務処理や、決まった手順の営業事務。20年前より必要な人数が減っています。

代わりに求められるのは、複雑な問題解決や、人と人のあいだを扱うスキル。ここは短期の研修では身につきません。

だから3ステージから、年齢とステージが一致しないマルチステージへ。グラットンたちが提示するのは、探検者、独立生産者、ポートフォリオ・ワーカーといった、順番も回数も決まっていない働き方の組み合わせです。

資産は、お金だけではない

ここからが、この本の面白いところです。

グラットンたちは、人生を支える資産を有形と無形に分けます。有形は貯金や不動産。無形は、こう分類されます。

生産性資産。スキル、知識、評判。仕事の生産性を高めるものです。

活力資産。健康、家族、友人関係。長く動き続けるための土台になります。

変身資産。変化に対応し、自分を作り直す力。多様な人的ネットワークや、自分を見つめ直す習慣がここに入ります。

3つ目が、100年ライフの鍵だとされています。

なぜか。人生が長くなるほど、途中で前提が変わる回数が増えるからです。20代で選んだ職種が、50代でも同じ形で存在している保証はありません。

たとえば、同じ会社に20年いて社内で高く評価されている人。生産性資産はあるように見えます。でも、その評価が社外で通じるか、別の分野に移れるかは別の話です。変身資産は、平時には見えません。

お金の話も出てきます。ただ、グラットンたちが重視するのは金融知識そのものより、目先の誘惑に負けずに将来へ配分する自己コントロールのほうでした。

余暇は、レクリエーションからリ・クリエーションへ

では、無形資産はいつ積むのか。

グラットンたちの答えが、余暇の再定義です。余暇はレクリエーション、つまり娯楽から、リ・クリエーション、つまり自己の再創造へと役割を変える。

ここは、読んでいて少し身構えました。休みまで自己投資に使えというのは、しんどい話にも聞こえます。

ただ、よく読むと娯楽を否定してはいません。活力資産には、休息も人間関係も含まれます。問題は、余暇のすべてが消費で埋まっているときです。

たとえば、休日を全部、動画とSNSで過ごす月が続いたとします。悪いことではありません。ただ、その月に増えた無形資産はゼロに近い。

一方で、月に1回でも社外の人と会う、興味のある分野を少し学ぶ、体を動かす。これらは全部、生産性資産か活力資産か変身資産のどれかに入っていきます。

リンダ・グラットンは『ワーク・シフト』でも、同じ方向の処方箋を出しています。広く浅いゼネラリストではなく、専門性を連続して修得する「連続スペシャリスト」へ。孤独な競争ではなく、多様なネットワークによる協力へ。所得と消費ではなく、情熱を傾けられる経験へ。

「連続」という言葉が効いています。1つの専門で一生食べる想定ではなく、専門を移り続ける前提です。

ひろゆきさんは『僕が若い人たちに伝えたい 2035年最強の働き方』で、もっと身も蓋もない言い方をしています。将来の不安を消す方法は、常識やこだわりに囚われずに選択肢を増やすことに尽きる、と。

表現は違いますが、指しているものは近い。選択肢の数が、そのまま安心の量になります。

明日からできること

誤解:将来に備えるとは、お金を貯めることだ → 貯金は必要ですが、それだけでは足りません。前提が変わったときに動ける力は、お金では買えない部分があります。

正しいアプローチ:月に一度、無形資産のどれかに時間を配分する → 今月の休日の使い道を3つ書き出し、それぞれが生産性資産、活力資産、変身資産のどれに当たるかを書いてみる。どれにも当たらないものが並んでいたら、そこが調整できる場所です。

もうひとつ、変身資産を増やすいちばん簡単な方法があります。

社外の人と会うこと。同じ会社の人とだけ話していると、評価軸が1つしかない世界に閉じます。月に1回、別の業界の人と1時間話すだけで、自分の市場が見えてきます。

やることは小さくていい。人生が長くなるということは、複利が効く期間も長くなるということです。

おわりに

100年ライフという言葉は、遠い未来の話に聞こえます。

でも実際に問われているのは、今週の休みをどう使うかという、かなり具体的なことでした。

20年後の選択肢は、20年後には増やせません。


この記事で参考にした本

『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット → 3ステージの人生の限界と、生産性資産・活力資産・変身資産という無形資産の枠組み。余暇の再定義まで示した一冊。

『ワーク・シフト』リンダ・グラットン → 連続スペシャリスト、協力によるイノベーション、情熱を傾けられる経験。3つのシフトで未来の働き方を描く。

『僕が若い人たちに伝えたい 2035年最強の働き方』ひろゆき → 不安を消す方法は選択肢を増やすこと。ポータブルスキルと開拓力という、身も蓋もないが実務的な視点。


合わせて読みたい

【人生100年時代】あなたの「キャリア設計」を根底から覆す「無形資産」とは?〜『LIFE SHIFT』が示す新しい人生戦略〜 このコラムの土台にした本の紹介記事です。無形資産と新しいステージをもっと詳しく知りたい人へ。

『僕が若い人たちに伝えたい 2035年最強の働き方』ひろゆき|真面目に働くほど損する理由 選択肢を増やすという発想を、より具体的な行動に落とした記事。日本の状況を踏まえた戦略が知りたい人へ。

1年で結果を出そうとして、7年を失う人へ 短期の成果に時間を吸われる構造の話。長期資産への時間配分を考えたい人におすすめです。