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『1年で億り人になる』戸塚真由子さん|「まず稼ぐ」を捨てた人から、お金は動き出す

投資・資産形成
約5分で読めます
『1年で億り人になる』

毎月10万円を、年利3%で10年積み立てる。真面目で、堅実で、何ひとつ間違っていない方法です。

でも、その積立に「この速度で本当に間に合うのか」と一度でも不安を覚えたことがあるなら、本書はあなたの常識を一度ぶっ壊しにきます。著者の戸塚真由子さんは、世界中の大富豪100人以上から直接学び、わずか数カ月で資産1億円を築いたという人物。その彼女が突きつけるのは、たった一つの問いです。「稼いでから投資する」という順番、それ自体が間違っているのではないか、と。

図解

こんな人におすすめ

どれも、特別ダメな人の話ではありません。むしろ真面目に生きてきた人ほど当てはまる。私もそうでした。だからこそ、この本の言うことは耳が痛いのです。

「まず稼ぐ」を捨てた瞬間に、お金は動き出す

本書の核心を一言でいうと、「PL脳」を捨てて「BS脳」を持て、ということに尽きます

PL脳とは、損益計算書(Profit & Loss)のように、稼いだお金から経費を引いて、残った利益の範囲で投資する発想。多くの人がこれです。一方でBS脳は、貸借対照表(Balance Sheet)の発想。「どうやって元手を稼ごう」ではなく「どうやって元手を集めよう、借りよう」と考える。

ここで効いてくるのが、負債のとらえ方の転換です。100万円持つ人が銀行から50万円を借りたとき、普通は「借金ができた」と落ち込む。でもBS脳では「手元の資産が150万円に増えた」と考える。負債もまた資産の一部だ、という視点の入れ替えです。

「大きなお金に小さなお金が吸い寄せられる」

少額の積立では、時間がかかりすぎる。だから先に大きな元本を用意し、それを減らさずに運用して配当を得る——。投資の世界では能力よりも「最初にいくら持っているか」が勝負を分ける、という少し残酷な事実が、ここには横たわっています。

そして本書は「本物のお金持ち」を、高収入の人ではなく「自動的にお金が入ってくる仕組みを持つ人」と定義し直します。その仕組みを著者は印象的なある呼び名で表現するのですが、その比喩が腹に落ちた瞬間、FIREという言葉の意味が少し変わって見えました。何と呼ぶかは、本書で確かめてみてください。

元手は「稼ぐ」のではなく「集める」もの

BS脳を持ったあと、では実際にどう元手を用意するのか。本書はここで「悪い借金」と「良い借金」を線引きします。毎月のキャッシュフローがマイナスになるのが前者、プラスになるのが後者。住宅ローンや見栄の車は前者、自分の足で探した収益不動産は後者、という具合です。

調達の手段も、融資だけではありません。補助金、クラウドファンディング、第三者割当増資——手元の自己資金だけで考えない事例が次々に出てきます。たとえば、空きテナントの改装資金の大半を補助金とクラウドファンディングで賄った小さな飲食店の話。数字の生々しさが、「自己資金がないから始められない」という言い訳を静かに崩しにきます。

法人化を「1秒でも早く」と勧める章もありますが、その具体的な金額やスキームの一つひとつまでは、ここでは追いません。大事なのは手順の暗記ではなく、「調達する力こそ資産家の究極の能力だ」という視点の転換そのもの。残りの実例は、本書でまとめて浴びるのが効きます。

投資とギャンブルを分ける、たった一つの線

集めたお金を、何に入れるのか。本書の答えは株でもFXでも仮想通貨でもなく、不動産や農業のように実体のある「ブツ」が存在する現物投資です。価値がゼロになりにくいのが強みだと言います。

ここで本書がいちばん強く言い切るのが、「出口」の話です。

「安く買い、高く売る。それが『現物投資』成功の、最大の秘訣です。このとき大切なのは、買ったブツの『売り先』、つまり『出口』が決まっていること。」

買う前に売り先が見えていればそれは投資、見えていなければただのギャンブル。たったこれだけの線引きが、驚くほど鋭い。退職金をFXで溶かした人が、築古アパートと意外な入居者の組み合わせで月数百万円の収入を得るまでになる——そんな具体例が出てきますが、その「意外な入居者」が誰なのか、なぜ滞納も空室も起きにくいのか。ここは本書で読んだほうが、構造の美しさが伝わります。孫正義さんの巨大ファンドと、地方の築古アパート大家が「まったく同じ構造」だと言い切るくだりも、本書の真骨頂です。

なお、海外のオーガニック農地への投資といった事例は、正直ハードルが高い。情報が富裕層のクローズドな人脈にしか出回らないと著者自身が認めており、ここは本書の限界が出る部分でもあります。だからこそ並行して語られる「投資詐欺を見抜く原則」のほうが、多くの読者には実用的かもしれません。

どんな人に、この本は効くか

読み終えて思うのは、これは万人向けの本ではない、ということです。借金をして投資しろ、見栄を捨てろ、夢を否定する相手とは距離を置け——主張はかなり過激で、私も全部は鵜呑みにできませんでした。堅実な少額インデックス積立で十分満足している人や、レバレッジに強い抵抗がある慎重派には、たぶん刺さりません。

逆に効くのは、「真面目にやっているのに、なぜか前に進んでいる気がしない」人です。本書には「ビジネスで稼げる人ほど投資には向かない」という意外な指摘もあって、稼ぐ力と増やす力はまったく別物だと突き放す。この一文に、自力でなんとかしようと頑張ってきた人ほどハッとするはずです。

そして面白いのは、お金の本なのに、最後は人との関わり方に着地する点。時間を「命」と呼び、与えることから始めよと説く。

「お金で解決できる問題は、サッと資産構築で解決してしまう。そののちに、お金では解決できない、人生のもっと大切なことに取り組む。」

お金は二の次、と言いながら、ずっとお金に振り回されてきた。その順番を一度だけ疑ってみる価値はある、と私は思いました。

まずは、自分が毎月いくら欲しいのか。その数字を、今夜紙に書いてみる。本書の入口は、案外そんな静かな一歩から始まります。


合わせて読みたい

『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』橘玲 「まず稼ぐ」発想の限界を、税制と制度の側から解き明かす一冊。本書のBS脳に進む前に、なぜ真面目に働くほどお金が貯まらないのかを押さえておくと、調達と運用の話がより腹落ちします。

『ユダヤ人大富豪の教え』本田健 本書がメンター(師匠オリバー等)の教えを軸にするのと同じく、こちらも大富豪から学ぶ物語。「先に与える」「幸せな金持ちと不幸な金持ちを分けるもの」という視点が、本書の最後のマインドと響き合います。

『THE WEALTH LADDER 富の階段』ニック・マジューリ 資産レベルが変われば正しい戦略も変わる、というデータベースの本。本書の「最初に大きな元本を持て」という主張を、より冷静に検証したい人に。アグレッシブな本書と並べて読むと、自分に合う速度が見えてきます。


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