本を読む。メモも取る。「いい本だったな」と思う。
1ヶ月後、何も覚えていない。
仕事に活かせた記憶もない。
山口周さんの『読書を仕事につなげる技術』を読んで、その理由がわかりました。
読書量の問題じゃなかった。「読んだ後」の問題だった。
シェフの話をさせてください
著者は、読書をシェフの仕事に例えています。
シェフは食材を仕入れる。でも、仕入れた食材をそのまま出したりしない。
冷蔵庫に保管して、お客さんの要望に応じて、組み合わせて、調理して、料理を出す。
読書も同じ。
本から得た知識(食材)を、そのまま使おうとしても意味がない。
いったんストックして、仕事の文脈に合わせて、組み合わせて、初めて成果(料理)になる。
私がやっていたのは、「食材をそのまま出そうとすること」だった。
そりゃ、まずいわ。
「新刊の9割は読む必要がない」
衝撃的な主張がありました。
「新刊ビジネス書やベストセラーの9割は読む必要がない」
え?でも、みんな読んでるでしょ?
著者の言い分はこう。
多くの新刊は、古典的名著の焼き直しに過ぎない。
しかも、結論だけをまとめているから、思考のプロセスが学べない。
原典を読めば、「なぜそう言えるのか」という思考の道筋がわかる。
焼き直しを読んでも、「へー、そうなんだ」で終わる。
みんなが読む本を読んでも、みんなが知っている知識しか得られない。
それでは、差別化できない。
「ビジネス書マンダラ」という地図
じゃあ、何を読めばいいのか。
著者は「ビジネス書マンダラ」というフレームワークを提示しています。
経営戦略、マーケティング、組織論、ファイナンス…。
各分野の古典的名著を71冊に厳選して、体系的に配置した図です。
中心から外側に向かって、入門→専門→応用と深くなっていく。
20代はまず中心部の入門書から。30代は2階層目へ。
これがあれば、「何から読めばいいかわからない」という悩みが消える。
正直、このリストだけで本の価値があると思いました。
2種類の読書を使い分けろ
ここからが本題です。
著者は、読書を2種類に分けています。
1. ビジネス書:基礎体力を作る 2. 教養書:個性を作る
ビジネス書は「狭く、深く」。
厳選した古典を、何度も繰り返し読む。「1冊を5回読む」方が、「5冊を1回読む」より効果的。
一方、教養書は「広く、浅く」。
哲学、歴史、心理学、生物学…。実用性は問わない。興味の赴くままに読む。
なぜか。
ビジネス書だけだと、みんな同じ思考になる。
教養書から得た「関係ない知識」が、予期せぬ組み合わせを生み、独自の視点を育てる。
著者自身、美術史専攻から経営コンサルタントになった人です。
その「異色のキャリア」が、他のコンサルタントにはない強みになった。
「情報イケス」という革命的な考え方
この本で一番使えると思ったのは、「情報イケス」の概念です。
教養書から得た知識は、いつ役に立つかわからない。
覚えておこうとしても、忘れる。人間だから。
だから、記憶に頼らない。
検索可能な外部データベースに「生きたまま」ストックしておく。
Evernoteでも、Notionでもいい。
著者は「3回読みメソッド」を提案しています。
1回目:線を引く 2回目:重要な箇所を5つ選ぶ 3回目:「イケス」に転記する
これで、必要な時に検索して取り出せる。
「忘れること」を前提にした知識管理。
これ、めちゃくちゃ実用的です。
「損切り」する勇気
もう一つ、刺さった話。
読書も「損切り」が必要。
「ここまで読んだんだから、最後まで読まなきゃ」
これ、サンクコストの罠です。
株でいえば、「ここまで投資したんだから、損切りできない」と同じ。
面白くない本、自分に合わない本は、途中でやめていい。
時間という資本を、リターンの低い銘柄に投下し続ける必要はない。
正直、「読みかけの本」への罪悪感がずっとありました。
この考え方で、救われた気がします。
こんな人に読んでほしい
- 「年間〇〇冊読んでます」が自慢になっていない人
- 読んだ本の内容を覚えていない人
- ビジネス書ばかり読んで、思考が固まってきた人
- 何を読めばいいかわからない人
この本が教えてくれるのは、「たくさん読め」ではない。
「読んだ後のプロセスを設計しろ」。
読書量を競っても意味がない。
食材をいくら仕入れても、料理を出さなければシェフとは言えない。
読書も同じ。
知識を仕入れて、ストックして、組み合わせて、成果を出す。
そのプロセスを設計できた人だけが、読書を「仕事につなげる」ことができる。
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