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『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』大河内薫|知らないだけで、お金は静かに出ていく

投資・資産形成 ✍ 大河内薫
約7分で読めます

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『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』
目次

会社を辞めて1年。確定申告を後回しにしていたら、税務署から1通のハガキが届く。「おたずねしたいことがあります」。

これは漫画家・若林杏樹(あんじゅ先生)に実際に起きた出来事です。本書はこの一通のハガキから幕を開けます。

『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』は、税理士・大河内薫さんと若林さんによるコミックエッセイ。

大河内さんは「日本一フリーランスに優しい税理士」を名乗る人で、本書の通奏低音はとてもシンプルです。税金を知らない人は、知らないだけで静かに損をしている。でも逆に言えば、知るだけで財産と夢を守る武器が手に入る、と。

漫画という最も心理的ハードルの低い形式で、しかし内容は実務に耐えるところまで踏み込む——この絶妙なバランスが本書の価値です。

図解

まず「4つの税金」と脱サラの落とし穴を知る

会社員とフリーランスの最大の違いは、税金を会社任せにするか自分でやるかにあります。会社員は給料から源泉徴収され、年末調整まで会社がやってくれる。フリーランスは全部を自分で計算し、確定申告する。本書はまず、フリーランスが押さえるべき税金を4つに整理してくれます。

ひとつめは所得税。売上から経費を引いた所得にかかる国税で、稼ぐほど税率が上がる累進課税(5〜45%)です。ふたつめは住民税で、原則一律10%。

みっつめは事業税(職種により0〜5%、文筆業などは非課税のことも)。よっつめは消費税で、前々年の課税売上が1000万円を超えると課税事業者になります。

ここで本書が声を大にして警告するのが「脱サラ1年目の住民税」です。住民税は前年の所得に対してかかる。つまり退職して収入が不安定になった1年目に、会社員時代の高い給料をもとに計算された通知が、数十万円単位で届く。

これを知らずに退職金を使い込むと詰みます。だから「翌年の住民税分を別口座に避けておけ」と。これは脱サラを考えている人なら、本書を開く前にでも頭に入れておく価値のある一点です。

もうひとつ、企業からの報酬は約1割が源泉徴収で先取りされていますが、これは所得税の前払いに過ぎません。経費を計上して確定申告すれば、払いすぎた分は還付されうる。「引かれっぱなし」だと思っている人が取りこぼしている部分です。

「経費の正解」を、本書はこう語る

本書の白眉は、フリーランス最大の悩みである「どこまで経費にできるのか」への向き合い方です。

ありがちな税金本は、認められる費目を一覧表でずらりと並べます。本書はそうしません。基準はたった一つ、自分の仕事に関連していると第三者に説明できるか、それだけだと言い切る。

法律の条文ではなく、事業との関連性。自宅が仕事場なら家賃・光熱費・通信費を「家事按分」(仕事で使う割合を計算して、その分だけ経費にすること)で落とせるし、美容代やファンクラブ代のようなグレーゾーンでも、税務調査で説明責任を果たせるなら踏み込んでいい、という姿勢を取ります。

あなたが仕事と関係すると自信を持って言える経費については、誰がなんと言おうと、ドンドン確定申告書に反映した方がいい

(本書より)。この一節に思想が凝縮されています。経費に唯一の正解はなく、調査官の数だけ解釈がある。本書はそれを、タレントの板東英二さんが税務調査を受けた逸話で見せてくれます。

同じ「頭」への出費でも、植毛は経費として認められず、カツラは認められた。同種の支出でも判断が割れるという現実を、これ以上なく雄弁に物語る事例です。

ただし本書は浮かれさせません。節税のために何でも経費にするのは「浪費と紙一重」だと釘を刺す。不要なものを買えば、税金で減る額以上の現金が手元から消える。

経費は節約ではなく、必要な投資かどうかで決めるべきもの——この冷静さが、本書を煽り本と一線を画させています。費目の暗記ではなく、判断の軸そのものを手渡してくれるのです。

「払う」を「守る」に反転させる

本書がうまいのは、お金が出ていく場面を片っ端から「守りの装置」に読み替えていくところです。

会社を辞めると、健康保険と年金は全額自己負担になり、負担は重くなります。ふつうはそこで終わるのですが、本書はこの保険料を下げる手も具体的に示す。

家族の扶養に入る(条件を満たせば0円)、文芸・美術・デザインの活動者だけが入れる「文美国保」(所得に関係なく定額。所得の高いクリエイターほど市区町村の国保より大幅に安くなりうる)、退職直後なら会社の保険を最大2年続けられる任意継続——選択肢を並べたうえで、「どれが効くかは状況次第」と現実的に締める。

そして肝心なのは、支払った社会保険料は全額が控除対象になるという事実です。重い保険料は、そのまま所得税を減らす盾になっている。年金の上乗せでは、月400円の「付加年金」が受給開始から2年で元を取れる仕組みとして紹介され、思わず得した気分になります。

退職金のないフリーランスのための「小規模企業共済」も、本書は強く推します。掛金は月1000円〜7万円で全額所得控除。さらに著者が「日本一の有利率」と呼ぶ根拠が具体的で、月7万円を30年積めば元本2520万円に対し受取は約3000万円、利息だけで約500万円つく。

同じ額を普通預金に入れても利息は4000円に届かない、という対比を見せられると、節税と老後資金が同時に解決する制度の威力が腹落ちします。iDeCoや国民年金基金も同様に全額控除の仲間です。

税務調査は「取り調べ」ではなく「答え合わせ」

経費を堂々と計上しよう、と言われても税務調査が怖い。本書はこの恐怖をていねいに解体します。

調査は「恐怖の取り調べ」ではなく、提出した申告書の「答え合わせ」のための話し合い。事前に電話で日程連絡があり、1〜2日かけて帳簿や領収書を確認するだけです。

ドラマの「マルサ」が動くのは脱税額が1億円前後の悪質ケースで、普通の個人にいきなり来る可能性は極めて低い。仮に経費を否認されても、悪意がなければ見解の相違による修正で済み、ペナルティも限定的だと数字で示してくれます。

恐怖が知識不足から来ているなら、知識は最良の精神安定剤になる。逆に本書が繰り返すのは「領収書はお金と同じ価値がある」という一点で、レシート1枚が課税所得を減らし、手元の現金を増やす。少額でも受け取って保管する習慣が、地味に効いてくるのです。

青色申告と、会社にバレる本当の犯人

確定申告には白色と青色があり、本書の立場は明快です。「白色のメリットは1つもない」。青色の最大の武器が「青色申告特別控除」で、要件を満たせば所得から最大65万円を差し引ける。

どれくらい効くかというと、所得65万円以上の人が白色から青色(65万円控除)に変えるだけで、最低でも9万7500円(65万円×15%)税金が減る。

手続きを変えるだけでこの差です。

満額控除の条件は、複式簿記と電子申告(e-Tax)の2つ。難しそうに見えますが、本書は会計ソフト(やよいの青色申告、マネーフォワードクラウド等)の利用を前提にしていて、口座やカードを連携すれば帳簿付けはほぼ自動化される。

簿記の深い知識がなくても最強の節税にたどり着ける設計です。家族への給与を経費にできる専従者給与、赤字を3年繰り越せる純損失の繰越控除なども青色の特典として並びます。

そして会社員の副業組にとって最大の関心事、「副業はどうやって会社にバレるのか」。本書は世間の誤解をきっぱり否定します。マイナンバーでバレることはない、と。

真犯人は住民税です。副業で住民税が増え、その通知が会社に届く。防ぐには確定申告書で住民税を「自分で納付(普通徴収)」に選ぶ。すると副業分の納付書が自宅に届き、会社に知られにくくなります。

ただし本書は「役所のミスでゼロにはならない、不安なら念押しを」というリアルな注意書きまで添える。きれいごとで終わらせない誠実さが、この本を信頼できるものにしています(なお、確定申告が必要になるのは副業の「所得」が年20万円超のラインから。

売上ではなく所得である点に注意)。

読み終えてやりたくなること

本書の終盤に、こんな趣旨の一文があります。血の滲む努力で叶えた夢が、昔の悪意ない税金の過ち一つで水の泡になりかねない、と。税金の知識は単なるお金の話ではなく、自分が積み上げてきたキャリアや夢を守る話なのだと気づかされます。

法人化や複雑な減価償却を深掘りする射程は本書にはありません。そこは別の本に任せるという潔い割り切り。だからこそ、これから独立する人や漫画でサッと基礎を掴みたい人にとって、最初の一冊として過不足がない。

読み終えると、不思議とレシートが捨てられなくなります。開業前の準備費用ですら経費になりうると知れば、机の上の紙切れが急に「お金」に見えてくる。

封筒を一つ用意してレシートを放り込む——その小さな一歩を、今日から始めたくなる本です。

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moto『転職と副業のかけ算』 会社員のまま副業で生涯年収を最大化する戦略書。本書で副業の税金と住民税の落とし穴を押さえたら、次は「何で稼ぐか」を設計するこちらへ。

『「自分で稼ぐ力」を身につける本』伊藤健太 会社に頼らず稼ぐための実践ガイド。独立や副業の「始め方」を学んだうえで、本書の「お金の守り方」を重ねると、攻めと守りの両輪がそろいます。


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