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『あなたの人生がつまらないと思うんなら、それはあなた自身がつまらなくしているんだぜ。』ひすいこたろう|世界は1秒で塗り替えられる

健康・メンタル ✍ ひすいこたろう
約11分で読めます

※ 本記事はアフィリエイトリンク(Amazonアソシエイト)を含みます。

『あなたの人生がつまらないと思うんなら、それはあなた自身がつまらなくしているんだぜ。』
目次

雨が降ってきた。あなたは「ついてない」と思いましたか。それとも「ちょうど水やりをサボっていた庭にとっては恵みだ」と思いましたか。

降っている雨はまったく同じ一粒です。にもかかわらず、その瞬間に立ち上がる世界の色はまるで違う。前者は灰色で、後者は少し明るい。この差を生んでいるのは天気でも運勢でもなく、雨と自分のあいだに一瞬で挟まる「読み方」のほうだ、というのが本書の出発点です。

ひすいこたろうさんの『あなたの人生がつまらないと思うんなら、それはあなた自身がつまらなくしているんだぜ。』は、その差がどこから来るのかを70のシーンで解き明かしていく一冊です。タイトルがやたら長いので、ここからは『つまらないと思うんなら』と短く呼びます。

著者がたびたび引くのはニーチェの一節です。

事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。

哲学書としてこの言葉に向き合うと、けっこう重たい命題です。けれど本書は、それを書斎から引きずり出して、傷ついたスマホやレジの行列や夫婦ゲンカといった生活のサイズまで降ろしてくる。そこが面白いところで、読み終えると哲学の話というより「明日の朝の気分の話」に変わっています。

図解

こんな人に読んでほしい

毎日が同じことの繰り返しで、面白いことなど何も起きないと感じている人。本書の言葉を借りれば、それは現実そのものの問題ではなく、視点の固定の問題です。

職場の上司や、言うことを聞かない子ども、すれ違うパートナーに、すぐイライラしてしまう人。相手を変えようとして、変わらない相手を前にひとりで消耗している人ほど刺さるはずです。

そして「ポジティブでいなきゃ」と頑張りすぎて、できない自分を責めて疲れている人。後で触れますが、本書はそういう人にこそ「無理しなくていい」と言ってくれる本でもあります。自己啓発というと前向きを強要されそうで身構える人がいますが、この本のスタンスはむしろ逆です。

出来事は何も決めていない。決めているのは「解釈」

本書の土台はシンプルな一本の流れです。

出来事(事実) → 解釈(意味づけ) → 感情 → 行動。

肝心なのは、出来事が直接あなたの感情を動かしているわけではない、という一点です。あいだには必ず「解釈」という名の見えない関所がある。心理学者の加藤諦三さんも、事実は解釈を経由してしか人に影響を与えられないと述べています。

怒りや落ち込みは出来事から自動的に湧くのではなく、自分がそこに与えた意味から湧いている、というわけです。

著者は世界を「真っ白なキャンバス」にたとえます。出来事そのものには、いいも悪いも最初から塗られていない。そこへ色をのせるのは、いつだって私たちの解釈の筆です。

星座の話が、この発想をよく言い当てています。夜空の星は、ただランダムに散らばっているだけです。それを「ここからここまでが、しし座」と勝手に線で結び、物語を見出したのは先人の想像力でした。

人生という散らばった出来事も、どう線を引くかで見える絵がまるで変わる。これが本書の核心的な比喩です。

そして解釈は1秒で書き換えられる。だから世界も1秒で塗り替わる。書名の「1秒で」とは、根性論ではなく、この読み替えの速さを指しています。

出来事はキャンバス、感情は自分が塗った色──この一行を握っておくだけで、本書のすべての具体例は同じ一つの技の応用として読めるようになります。

具体例の鮮やかさが本書の魅力です。iPhoneを落として傷をつけたとき、ふつうは「ショック」で話が終わります。ところが著者は、その傷を「自分らしさ」と読み替える。

好きな偉人・坂本龍馬から「がんばれよ」とエールをもらった証だと、勝手に物語を貼りつけてしまう。すると同じ傷が、世界に一つだけのオリジナルデザインに化けます。

これはスティーブ・ジョブズの哲学とも重なります。初期のiPodに傷がつかないようカバーをかけている人を見て、彼は「傷こそ美しい、傷こそ自分らしさだ」と語ったといいます。

お皿が割れたら「厄払いできた」と万歳し、道に落ちた1円玉を「金運だ、待ってろ、いま助けてやる」と拾い上げる。本書のユーモアは、すべてこの「解釈の付け替え」という一つの動作から生まれています。

ここで一つ留保を置いておきたい。解釈の付け替えは、痛みをなかったことにする魔法ではありません。割れた皿は割れたままだし、傷は消えません。事実は事実として残る。

本書が変えてよいと言っているのは事実ではなく、その事実に被せる意味のラベルのほうです。この線引きを忘れると、ただの現実逃避や強がりになってしまう。

著者自身、後半でこの危うさにきちんと答えを用意しています。

イライラの正体は、相手ではなく「自分の正しさ」

人間関係の章で、本書は読者の痛いところを的確に突いてきます。

ケンカが起きるのは、自分が正しくて相手が間違っている、と思い込んでいるからです。ところが厄介なことに、相手もまた100%「自分のほうが正しい」と信じている。両者がそれぞれの正しさを握りしめて衝突する。まずこの構図に気づくのが第一歩だ、と著者は言います。

そこで提案されるのが「相手の弁護士になる」という発想です。相手には相手の、そうならざるをえなかった事情がある。検事として裁くのをやめ、いったん弁護側に回って事情を想像してみる。

象徴的なのが『7つの習慣』のコヴィー博士の逸話です。電車で騒ぐ子どもを放置している父親に、博士は腹を立てて注意しました。すると父親は、今日妻を病院で亡くしたばかりで、子どもにどう伝えるか考えあぐねていたのだと打ち明けます。

その瞬間、博士の見ていた世界は一変した。これが本書の言うパラダイムシフト、つまり見方の劇的な転換です。事実は何ひとつ変わっていないのに、解釈が変わっただけで怒りが消えた、という見事な実例です。

どうしてもわかり合えない相手もいます。そういうときは「善悪」ではなく「趣味の違い」「芸風の違い」として捉え直す。良し悪しでジャッジするから怒りが点火するのであって、ただの好みの差だと思えば、わざわざ戦う理由がなくなります。

期待値そのものを下げておく、という処方も用意されています。脳科学的に、男女の性格は平均して2割ほどしか重ならないとされる。だとすれば、誰かと2割わかり合えたらそれはもう奇跡だと著者は言います。

レジで遅い列を引いたときには「他の行列は自分の列より必ず早く進む」という、半ば冗談めいた法則を思い出す。最初から世界はそういうものだと諦めておけば、いちいち腹も立ちません。

そして本書はもう一歩踏み込みます。関係は「私」と「あなた」の二人で作るものだから、片方の私が変われば、関係そのものが一瞬で別物になる。相手を動かそうと押し続ける努力を手放すこと、それ自体がすでに解決の半分だ、というわけです。変えられないものを変えようとする消耗から降りる、という意味で、これは人間関係に疲れた人ほど効く視点だと思います。

最悪のハプニングは、最高のジャンプ台になる

ショックな出来事が降ってきたとき、本書はそれを「飛躍のための踏み切り板」として読み替えます。

一番強烈なのが徳川家康のエピソードです。三方ヶ原の戦いで、恐怖のあまり馬上で脱糞しながら逃げ帰った。普通なら一生封印したい黒歴史です。ところが家康は、その情けない姿をわざわざ絵師に描かせ、手元に飾ったと伝わります。

一番かっこ悪い自分を直視したうえで「ここから天下を取る」と誓い、実際に取ってしまった。失敗を消すのではなく、戒めの教材に変えてしまったわけです。

ファッションデザイナーのヨウジヤマモトの逸話も印象的です。ニューヨークのショーの最中に停電が起きた。万事休すかと思いきや、記者がフラッシュをたき、観客が足を踏み鳴らしてリズムを作り、会場が一体となった。

トラブルが、予定調和では決して生まれなかった次元の感動に転化した、という話です。

著者の言葉では「あなたに立ちはだかるすべての問題は、あなたを飛躍させるために存在している」。仏教の「すべてがあなたにちょうどいい」も同じ角度の教えとして紹介されます。

ここは少し信仰に近い断言なので、人によっては受け止め方が分かれるところでしょう。すべての困難に意味があると言い切れるかは哲学的には保留が必要です。

ただ、すでに起きてしまった出来事に対して、後ろ向きに後悔し続けるより、前向きな意味を与えて次の一歩に使うほうが得だ、という実用の知恵としては十分に納得できます。

どん底に落ちたときの、ばかばかしくも効く言葉も用意されています。「人生のドン底」を「人生ズンドコ」と言い換え、声に出して13回唱える。意味は何も変わっていないのに、響きが間抜けになるだけで、深刻さがふっと抜けます。

コンサルタントの小田真嘉さんは、昆布やしいたけのダシは一度カラカラに干からびるからこそ濃く出る、と説いたそうです。どん底とは、自分らしさというダシが出るための熟成期間なのだ、と。

夢のやり方がわからないのは、それが「夢」だから

モヤモヤして動けないときの処方箋もあります。

著者いわく、やり方が最初からわかっていることは、夢ではなく「ただの予定」にすぎない。やり方がわからないからこそ夢の名に値するのだから、わからないまま進んでいい。

今日できる小さな1歩を踏み出せば、その地点に立って初めて次の1歩が見えてくる、というわけです。全ルートが見えてから動こうとする人ほど、永遠にスタートできない。

耳の痛い指摘です。

考え方の軸は「未来基準」です。今の自分の身の丈で発想するのではなく、夢が叶った未来の自分を基準点に置く。服を試着して似合わないと感じたときも、「今の自分」ではなく「これからなりたい自分」に似合うかで選ぶ。先に未来の像を立て、そこから現在へ逆算する発想です。

失敗の捉え方も大胆です。成功の反対は失敗ではなく、失敗の積み重ねの先に成功がある。エジソンは電球を完成させるまでに無数の失敗を重ね、それを「うまくいかない方法を一つ発見しただけだ」と言い切りました。失敗は減点ではなく、発見の記録なのです。

大富豪の菅野一勢さんは、ネット起業で25回、その他の事業でも16回つまずきながら、起業1年で1億円に到達したと紹介されます。講演で「新規事業を10個以上失敗した人」と挙手させると、これまで100%の確率で年収1億円超だった、という逸話まで添えられている。

数字の出所には少し眉に唾をつけて読むべきですが、「打席に立った回数が桁違いだから当たりに出会えた」という主旨は腑に落ちます。ついでに「飽きっぽくて長続きしない」という短所も、著者にかかれば「辞める決断力があり、新しいことを始めるのが得意」という長所に裏返ります。

短所と長所が同じ性質の表裏でしかない、という見立ては、自己嫌悪に陥りがちな人への優しい解毒剤です。

「仕事」の意味を変えると、仕事が動き出す

解釈の付け替えは、毎日の仕事にもそのまま効きます。ここが、本書をふわっとした気分転換本で終わらせない、地に足のついた章です。

著者の弟さんは、赤字のおむすび屋に頭を抱えていました。そこで仕事の解釈を「おむすびを売る」から「食を通して日本の食文化を伝える」へと貼り替えた。

すると関心が、目先の売上から素材や生産者へのこだわりへ移り、働く意味が立ち上がって、店は黒字へ転換したといいます。やっていることは同じおむすび作りなのに、上に乗っている意味が変わると、選ぶ素材も接客も変わってしまう。

松下幸之助は「仕事とは感動を与えること」という解釈を持っていたと紹介されます。だからこそ、簡単に儲かる土地転がしには手を出さず、結果としてバブル崩壊の難を逃れた。意味づけが、長期の意思決定そのものを正しい方向へ導いた例です。

同じ作業でも「これは人を幸せにする行為だ」と読み直すだけで、向き合い方が変わる。仕事に意味を見いだせなくなったとき、転職や環境のせいにする前に、まず自分が貼っている意味のラベルを点検する。これは本書の中でもとりわけ実務的で、再現性のある処方箋だと感じます。

ネガティブな感情は、消さずに「俯瞰」する

本書がほかの量産型ポジティブ本と決定的に一線を画すのが、この章です。冒頭で予告した「無理しなくていい」の正体がここにあります。

著者ははっきりこう言います。無理してポジティブにならなくていい。ほんとうのポジティブとは、ネガティブをありのままに受け入れた状態のことだ、と。これは「解釈の付け替え」をひっくり返すような主張に見えますが、矛盾していません。

むしろ順番の話です。嫌な感情を無理やり明るく塗りつぶしたり、「こんな風に思う自分はダメだ」と否定したりしない。まずはジャッジを止めて、湧いた感情をそのまま認める。

塗り替えは、その後でいい。

そのための道具が「鳥の目で俯瞰する」ことです。空を飛ぶ鳥のように、自分の頭上から自分を見下ろす。人は怒っている最中、「自分=怒り」が視界の100%を占めています。

そこへ、怒っている自分を冷静に眺めるもう一人の自分を立ち上げる。心理学でいうメタ認知、つまり自分を客観視する力の発動です。

手順も具体的です。嫌な感情が体のどのあたりに巣くっているかを感じ取り、そこに「パピーちゃん」のような可愛い名前をつける。そして親友に寄り添うように「何がそんなに嫌だったの」と、その感情の言い分を聞いてあげる。

名前をつけて話を聞いてやる、という行為で、感情と自分のあいだに距離が生まれ、心にスペースが空きます。

もう一つ紹介されるのが「まなゆい」です。小玉泰子さんが考案したコトダマ・メソッドで、「私は、◯◯と思っている自分を受け入れ、認め、ゆるし、愛しています」と唱えるもの。湧き上がった感情をいったん全肯定するための言葉です。

面白いデータも添えられています。トラウマを乗り越えた人は、その記憶を回想するとき映像に「自分」が登場して客観視できているのに対し、乗り越えられていない人は「相手」しか視界に出てこない、という心理実験の話です。

俯瞰できることと回復できることが、構造的に直結している。気分の問題ではなく、視点の角度の問題だ、というわけです。スピリチュアル風の語り口の本ですが、こうした実験を要所に置いて足場を作っているのは、読者として安心できる点でした。

今日からできる3つのこと

本書には実践が山ほど詰まっていますが、最初の一歩としてはこの3つで十分だと思います。

第一に、グチを言ったあとに「いい意味で!」を足す。「あの上司、ほんとおかしい、いい意味で!」のように。グチを我慢する必要はありません。言い切った直後にこの一言を足すと、深刻ぶっている自分を笑い飛ばせて、心にゆとりが戻ります。

第二に、苦しいときは「人生ズンドコ!」と13回声に出す。回数を守るのがコツです。1回で諦めず、間抜けな響きを13回連呼しているうちに、抱えていた重さが少しずつ抜けていきます。

第三に、モヤモヤしたら「まなゆい」を唱える。「私は、◯◯と思っている自分を受け入れ、認め、ゆるし、愛しています」。これは感情を消すためではなく、全肯定するための言葉です。心が静まってから、ようやく出来事に新しい解釈を与え直せばいい。順番を間違えないこと、ここが本書の作法です。

おわりに

本書には、明石家さんまの「生きてるだけで丸儲け」も、福山雅治が誕生日に母へ花束を贈る話も登場します。一見バラバラな70のエピソードは、結局「同じ現実をどう読むか」という一点だけでつながっています。

幸運や不幸は、現実の側があらかじめ決めているのではありません。あなたの心が、最後の一筆でそれを決めている。鏡に映る世界を変えたいなら、鏡を磨くより先に、映っている自分のほうが変わるしかない。

語呂合わせや勢いの強い断言が多く、論理的な裏づけを求める読者には軽く映る場面もあるはずです。けれど、本書の値打ちは理論の精緻さではなく、落ち込んだその瞬間に思い出せる「とっさの言葉」を大量に手渡してくれるところにあります。

次に嫌なことが起きたとき、反射的に落ち込む前に、ほんの一拍だけ置いてみてください。「これ、別の解釈もできるかも」。その1秒が、目の前の世界の色を静かに塗り替えます。


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『究極のマインドフルネス』メンタリストDaiGoさん 不安を敵にせず受け入れるという立場が、本書の「ポジティブにならなくていい」と響き合います。感情の俯瞰を科学的な手法で深めたい人に。

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