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『こうやって頭のなかを言語化する。』荒木俊哉さん|言語化力のベースは「話す力」ではなく「聞く力」だった

コミュニケーション・文章術
約4分で読めます
『こうやって頭のなかを言語化する。』

会議で急に意見を求められて、頭が真っ白になったことはありませんか。

言いたいことはある。でも言葉が出てこない。あとから「ああ言えばよかった」と悔やむ。私も何度もありました。

そういうとき、多くの人は「自分には言葉のセンスがない」と片づけてしまいます。でも本書『こうやって頭のなかを言語化する。』は、その思い込みを真正面から否定します。

著者の荒木俊哉さんは、言語化力は才能やセンスではなく、正しい方法を反復すれば誰にでも身につく「能力」だと言い切ります。そして、その土台にあるのは「話す力」でも「書く力」でもなく、意外にも「聞く力」だと。

しかも、ここでいう「聞く」は他人の話を聞くことではありません。自分で自分の話を聞くこと――つまり自問自答のことです。この一点で、本書はよくある「伝え方の本」とは別の場所に立っています。

図解

「どう言うか」より先に、「なにを言うか」

世の中の伝え方の本は、たいてい「どう言うか」を教えます。結論から話す、型を使う、間を取る。けれど著者は、そこに大きな違和感を抱いています。

本書のなかで私がいちばん腑に落ちたのは、「伝え方」と「言語化」を料理にたとえる一節でした。

「伝え方」はレシピで、「言語化」は食材

中身(食材)がないのに、外側(レシピ)だけ工夫しても、いずれメッキは剥がれる。言葉にする中身、「なにを言うか」が定まっていないのに伝え方のテクニックだけ磨いても、結局は伝わらない――という指摘です。

ここで著者は、思考そのものを「自問自答」と定義し直します。考えるとは漠然と悩むことではなく、明確な問いに対して自分で答えを探す行為だ、と。プロのコピーライターである著者でさえ、言葉をつくる時間の大半を「ひらめき」ではなく地道な自問自答に費やしている、という告白には説得力がありました。その割合がどれほどかは、本書で確かめてみてください。

看板メソッドの肝は、たった6文字

本書の心臓部は、1日3分でできる「言語化ノート術」です。心が動いたできごとと、それに対して感じたことを短くメモする。「先輩に挨拶されなかった。モヤモヤした」――これくらい砕けた言葉でいい、という気軽さがまずいい。

そのうえで、私がうなったのは「きく」の工程でした。メモの末尾に「のはなぜか?」という6文字を足すだけで、自分への問いが一瞬で完成してしまう。「自分に問いを立てるのが難しい」という、誰もがつまずく壁を、たった6文字で越えさせる。この発明だけでも本書を手に取る価値があると感じました。

問いができたら、あとはきれいに書こうとせず3分間書きなぐる。書いた言葉から「結論」を1行にまとめる。手順としてはこれだけです。ただし、なぜ「手書き」がよく効くのか、なぜネガティブな感情ほど深掘りに向くのか――その理由づけが本書ではていねいに語られていて、ここを読むと「ただのメモ術」ではないことが腑に落ちます。具体的な根拠は本書に預けます。

愚痴が「自分の軸」に変わる瞬間

このメソッドが侮れないのは、単発のスッキリで終わらないところです。

本書には、ある会社員が5日間ノートを続ける実践例が出てきます。最初はただの愚痴、ただのモヤモヤだったものが、問いを重ねるうちに「自分は何を大切にしているのか」という価値観の発見へと変わっていく。その過程を生々しく見せてくれるので、自分の手でも再現できそうだと思わせてくれます。

さらに著者は、個別の結論を「私はこういう場面でこう感じる」という汎用的なルールへ広げる手法を示します。特定の人間関係を超えて、あらゆる場面で使える「自分の判断基準」になる、というわけです。1年続ければ膨大な問いと答えがストックされ、それが揺るぎない自分の軸になる――その具体的なストック数は本書のなかで確かめてほしいところです。

そして本書は最後に、冒頭の「会議で頭が真っ白」へと話を戻します。結論から話せない本当の原因は、伝え方のスキル不足ではない。そもそも結論が自分のなかでまとまっていないだけだ、と。この診断が当たっていると感じる人ほど、本書は深く刺さるはずです。

どんな人に効くか

本書が向いているのは、伝え方の小手先テクニックをひと通り試して、それでも何かが足りないと感じている人です。型は知っているのに、いざ口にすると的外れになる。職場やキャリアに、言葉にならないモヤモヤを抱えている。そういう人にとって、本書は「中身のつくり方」という抜けていたピースを差し出してくれます。

逆に、すぐ使える言い回しのストックだけが欲しい人や、日々の小さな習慣を続けるのが苦手な人には、少し回り道に感じられるかもしれません。本書が求めるのは1日3分とはいえ、続けることそのものだからです。

リスキリングだ新しいスキルだと言われる時代に、本書はあえて逆を行きます。どんな資格よりも、まず「自分」を学べ、と。

明日、心が動く瞬間がきっとあります。そのとき、スマホに一行だけメモしてみてください。「○○があって、△△と感じた」。そこに「のはなぜか?」を足すところから、自分との対話は始まります。その先で著者がたどり着いた象徴的な答えは、ぜひ本書のページで受け取ってください。

合わせて読みたい

『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』荒木俊哉さん 本書の著者の前著で、本書でも続けて読む一冊として挙げられています。ノート術でためた「なにを言うか」を、いざという場面でどう瞬時に引き出すかが詳しく学べます。

『人は聞き方が9割』永松茂久さん 本書が言語化の土台に置く「聞く力」を、対人関係の側から深掘りできます。他人の話を聞く技術と、自分の話を聞く技術を両輪で身につけたい人に。

『すごい言語化』木暮太一さん 「語彙力がないから言葉にできない」という誤解を解く一冊です。語彙ではなく中身(なにを言うか)が問題だという本書の主張と、響き合いながら補い合います。


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