一つのことを、とことんやった人だけが見える景色
目次
バンドをやっていた。
高校から大学にかけて、毎日スタジオに入って、曲を作って、ライブをやって。プロになるつもりだった。結局ならなかったけど。
でも、あの時間は無駄だったのか。
そんなことを考えていたとき、ある人の話を読んで、ちょっと救われた気がした。
「突き抜けた先に、本質がある」
佐藤可士和さんという人がいる。
ユニクロ、セブン-イレブン、楽天のロゴを手がけたクリエイティブディレクターだ。日本で最も有名なデザイナーの一人だろう。
彼が面白いことを言っている。
「一つのことにフォーカスして入り込むことが大切です。深く入り込めば、いつか突き抜ける瞬間があり、その先の、本質的な部分に行き着けるはずです」
突き抜けた先に、本質がある。
この言葉、最初は「かっこいいこと言ってるな」くらいにしか思わなかった。でも、彼の具体的なエピソードを聞いて、ちょっと見方が変わった。
音楽への没頭が、デザインを変えた
佐藤さんは美大に入る前、音楽に夢中だった。
バンドを組んで、毎日曲を作って、ライブをやって。プロを目指していたという。
結局、音楽の道には進まなかった。でも、その経験が後のデザインに影響を与えたという。
どういうことか。
「作曲するのと絵を描くことは同じだ!」
音楽に没頭する中で、この発見があったという。
音楽には構成がある。イントロがあって、Aメロがあって、サビがある。緊張と緩和のリズムがある。静と動のバランスがある。
デザインも同じだった。
レイアウトには構成がある。視線の流れがある。緊張と緩和がある。静と動のバランスがある。
表面上は全く違うものに見える。でも、深く入り込んだからこそ、その「本質」が見えた。
音楽とデザインは、構造が同じだったのだ。
「役に立つ」と「意味がある」は違う
ここで一つ、考えてほしいことがある。
「それ、何の役に立つの?」
この質問をされたこと、あるだろう。趣味でも、勉強でも、仕事でも。
でも、「役に立つ」と「意味がある」は違う。
佐藤さんの音楽経験は、直接的には「役に立たなかった」。プロになれなかったのだから。
でも、「意味はあった」。
デザインの本質を理解するための、大きな糧になった。
没頭した経験は、必ずどこかで繋がる。
ただし、条件がある。「突き抜ける」まで没頭することだ。
スノーボードで「バランス」を知った
もう一つ、佐藤さんのエピソードがある。
彼はスノーボードにも没頭した時期があるという。毎週末、山に通い詰めた。
そこで体感したのが「バランスという概念の大切さ」だった。
スノーボードは、バランスのスポーツだ。重心が少しでもずれると転ぶ。力を入れすぎても、抜きすぎてもダメ。微妙な調整の連続だ。
この感覚が、デザインにも通じた。
レイアウトのバランス。色のバランス。情報量のバランス。「ちょうどいい」を見つける感覚。
本で読んでも、わからない。頭で理解しても、できない。
体で覚えるしかないのだ。
「器用貧乏」の罠
ここで、逆のパターンを考えてみる。
色々なことを「ちょっとずつ」やる人がいる。
プログラミングも少し。英語も少し。投資も少し。筋トレも少し。
悪くない。でも、どれも「突き抜けない」。
表面をなぞっただけでは、本質は見えない。
器用貧乏という言葉がある。何でもそこそこできるけど、どれも突出しない。
これ、実は「何も見えていない」状態かもしれない。
一つのことを深くやった人には、「本質」が見える。その本質は、他のことにも応用できる。
ちょっとずつ色々やった人には、「表面」しか見えない。応用するための「核」がない。
「好き」を深掘りしろ
じゃあ、何を深掘りすればいいのか。
答えはシンプルだ。好きなことをやれ。
佐藤さんは、音楽が好きだった。スノーボードが好きだった。だから没頭できた。
「これが将来役に立つかどうか」なんて考えなかった。好きだから、やった。
結果として、突き抜けた。本質が見えた。それが他の分野に活きた。
逆に、「役に立ちそうだから」で始めたことは、たいてい続かない。
没頭できないから、突き抜けない。表面で終わる。本質が見えない。
皮肉なことに、「役に立つかどうか」を考えた時点で、役に立たなくなる。
今日から試せること
この記事を読んで、「じゃあ何かに没頭しよう」と思ったかもしれない。
でも、没頭は「しよう」と思ってできるものじゃない。
一つだけ、提案がある。
今、なんとなく続けていることを、もう少しだけ深くやってみろ。
週末の趣味でもいい。仕事の一部でもいい。
「このくらいでいいか」と思っているところを、もう一段深く掘ってみる。
「なぜそうなるのか」を考えてみる。「もっと上手くできないか」を試してみる。
その先に、何かが見えるかもしれない。見えないかもしれない。
でも、掘らなければ、絶対に見えない。
あの頃、バンドに夢中だった自分。
無駄だったとは思わない。
突き抜けたかどうかは、正直わからない。でも、あの時間があったから、見えるようになったものがある。
「一つのことを、とことんやる」
その価値を、今は少しだけ信じている。
この記事で参考にした本
『佐藤可士和のクリエイティブ・シンキング』佐藤可士和 → 「没頭することで本質に到達する」という考え方。音楽やスノーボードの経験がデザインに活きたエピソードが印象的だった。
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