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ブクドリ | BOOK DRIP

去年の成功を、今年も繰り返した。通用しなかった。

約4分で読めます 戦略・経営・事業
目次

「前もこれでうまくいったから」

この言葉、何回言ったことがあるだろう。

去年の施策をそのまま使う。前回成功したやり方を繰り返す。うまくいった方法を変えない。

なんの問題もないように思える。

でも、これが一番危ない。


日本軍が負けた本当の理由

太平洋戦争で、日本軍はなぜ負けたのか。

物量の差? 技術の差? 兵士の能力?

どれも要因の一つだけど、本質じゃない。

『失敗の本質』という本がある。

そこに書かれている結論は、こうだ。

「日本軍は、過去の成功体験に適応しすぎて失敗した」

逆説的に聞こえるかもしれない。適応しすぎて失敗?

でも、これが真実だった。

日露戦争で大勝利を収めた日本軍は、その成功体験を神聖化した。

白兵戦、夜襲、精神主義。「これでうまくいった」から、同じことを繰り返した。

でも、戦場は変わっていた。

航空機が主役になり、火力が決定的な意味を持つようになった。

環境が変わったのに、やり方を変えなかった。

結果は、壊滅的な敗北。


「学習」には2種類ある

組織論では、学習を2つに分けて考える。

シングルループ学習ダブルループ学習

シングルループ学習は、「やり方を改善する」学習。

サイクルタイムを短くする。ミスを減らす。効率を上げる。

ダブルループ学習は、「そもそもこのやり方でいいのか?」を問い直す学習。

目標自体を変える。前提を疑う。ルールを書き換える。

日本軍は、シングルループ学習は得意だった。

白兵戦をもっと上手くやる。夜襲の精度を上げる。訓練を強化する。

でも、ダブルループ学習ができなかった。

「そもそも白兵戦で勝てる時代じゃないのでは?」という問いが、組織の中で封じられていた。


会社でも同じことが起きてる

これ、現代の会社でも毎日起きてる。

「去年これでうまくいったから、今年も同じでいこう」

「前回の成功パターンを横展開しよう」

「うちのやり方を変える必要はない」

シングルループ学習ばかりで、ダブルループ学習をしていない。

最初は問題ない。むしろ効率的に見える。

でも、環境は変わる。競合は進化する。顧客のニーズは移り変わる。

気づいたときには、「前もこれでうまくいった」やり方が、通用しなくなっている。

そして、なぜうまくいかないのかがわからない。

だって、やり方は間違ってないから。変わったのは、環境のほうだから。


成功体験ほど捨てにくい

なぜダブルループ学習は難しいのか。

理由は単純。

成功体験ほど、捨てにくいから。

失敗したやり方なら、すぐ変えられる。「あれはダメだった」と言える。

でも、成功したやり方は違う。

「これで結果を出した」「これで評価された」「これで勝ってきた」

自分のアイデンティティにまで組み込まれてしまう。

だから、「それ、もう通用しないかも」と言われると、自分自身を否定された気になる。

組織全体で成功体験を共有していると、さらに厄介だ。

「うちの強みはこれだ」という暗黙の了解ができあがる。

それを疑うことは、組織への裏切りのように感じられる。


「うまくいった」を疑う習慣

じゃあどうすればいいのか。

答えは簡単だけど、実行は難しい。

「うまくいった」と思ったときこそ、疑う。

「これ、なぜうまくいったんだろう?」

「今の環境だからうまくいっただけじゃないか?」

「環境が変わったら、通用しなくなるんじゃないか?」

成功したときこそ、この問いを立てる。

失敗したときは誰でも反省する。でも、成功したときに反省できる人は少ない。


今日からできること

ここまで読んで、「じゃあ何をすればいいの?」と思ったかもしれない。

一つだけ。

次に「前もこれでうまくいったから」と言いそうになったら、一回止まってみて。

「前と今で、何が変わった?」

この問いを、自分に投げかけてみる。

顧客は変わってないか。競合は変わってないか。技術は変わってないか。

何も変わってないなら、同じやり方でいい。

でも、何かが変わってるなら。

「うまくいった方法」が、「うまくいかない方法」に変わってるかもしれない。

成功体験は、味方にも敵にもなる。

どっちになるかは、自分で疑えるかどうかにかかっている。


よくある失敗

「うまくいったから変えない」と思考停止すること。

成功したやり方は、成功したときの環境に最適化されている。環境が変わればうまくいかなくなる。失敗したときより成功したときこそ、「なぜうまくいったのか」を分解して考える必要がある。


参考書籍

  • 野中郁次郎さん、戸部良一さん他『失敗の本質』 日本軍の組織的失敗を分析した名著。成功体験への過剰適応がもたらす悲劇を解明している。

  • クリス・アージリス氏『組織の罠』 シングルループ学習とダブルループ学習の理論を提唱。なぜ組織は学べなくなるかがわかる。


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