スペックでは勝っていた。選ばれたのは別の会社だった。
目次
日本の家電メーカーは、世界一だった。
性能で勝っていた。品質でも勝っていた。価格も適正だった。
なのに、いつの間にか、AppleやSamsungに負けていた。
スペックでは上回っている。壊れにくさでも負けていない。
なのに、なぜ選ばれないのか。
「役立つ」だけでは足りない時代
かつて、企業の勝ちパターンは明確だった。
良い製品を、安く、早く作れば売れる。
性能を上げる。機能を増やす。コストを下げる。
このゲームで日本は勝ち続けた。
でも今、このゲームが終わりつつある。
なぜか。
「役立つ」価値が過剰供給されているから。
どの製品を買っても、だいたい同じくらい便利。だいたい同じくらい高品質。
「役立つ」では差がつかなくなった。
スイスの時計が生き残った理由
1970年代、セイコーのクオーツ時計がスイスの時計産業を壊滅させかけた。
日本のクオーツは正確で安い。スイスの機械式時計は高くて不正確。
「役立つ」で勝負したら、日本の圧勝だった。
でも、スイスの時計ブランドは生き残った。
どうやって?
「意味がある」価値に切り替えた。
ロレックス、オメガ、パテックフィリップ。
彼らは時間を測る道具を売るのをやめた。
「成功の象徴」「職人の魂」「受け継がれる伝統」。
そういう「意味」を売り始めた。
結果、日本の時計メーカーより何十倍も高い価格で売れるようになった。
Appleは何を売っているのか
iPhoneは、スペックだけ見れば、Android端末に負けている部分も多い。
カメラの画素数。メモリ容量。拡張性。
でも、iPhoneは売れ続けている。
なぜか。
Appleは「世界観」を売っているから。
1987年、Appleは「Knowledge Navigator」というショートフィルムを作った。
タブレット端末、タッチパネル、音声入力、ビデオチャット。
30年以上前に、今の技術を映像で「構想」していた。
これは予測じゃない。「こうあるべき未来」を自ら創り出していた。
Appleが売っているのは、製品じゃない。
「未来への入場券」だ。
「便利」の向こう側
テレビのリモコンを見てほしい。
65個のボタンがついている機種もある。
誰が65個も使うのか。
実際に使うのは、せいぜい10個程度。
残りの55個は、「役立つ」という名目で追加された機能。
でも、誰も求めていなかった。
便利さの追求は、どこかで飽和する。
その先にあるのは、「意味」の競争。
「この製品を持っていることで、自分が何者であるか」を示す。
「このブランドに共感することで、ある世界観の一部になる」。
機能ではなく、意味で選ばれる。
今日からできること
じゃあ、どうすればいいのか。
一つ、問いを変えてみる。
「どうすればもっと便利になるか」ではなく、
「これは誰の物語に登場するのか」
自分の製品、自分のサービス、自分の仕事。
それを使う人は、どんな物語の主人公なのか。
その主人公にとって、これは何を「意味する」のか。
よくある失敗
スペックで勝とうとすること。
機能を足すのは簡単だ。でも、機能では差がつかない時代になった。
「役立つ」で勝負すると、価格競争に巻き込まれる。「意味」で勝負すると、価格を超えた価値が生まれる。
数字で勝っても、ブランドで負けることがある。
逆に言えば、数字で負けても、意味で勝てる可能性がある。
参考書籍
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水野学さん・山口周さん『世界観をつくる』 「役立つ」の先にある本当の価値創造。スペック競争を超えて世界観で選ばれる方法がわかる。
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クレイトン・クリステンセン氏『ジョブ理論』 顧客が「雇用」する真の理由を見抜く視点。機能ではなく、顧客の「片づけたいジョブ」から価値を定義する方法がわかる。
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『ジョブ理論』クレイトン・クリステンセン 顧客が「雇用」する真の理由を見抜く視点。機能ではなく、顧客の「片づけたいジョブ」から価値を定義する方法がわかる。
『デザイン思考が世界を変える』ティム・ブラウン 人生をデザインする思考法。スペックではなく、人間中心で価値を創造するアプローチが理解できる。