競争している時点で、もう負けている
目次
「競合より安くしよう」 「競合より早く届けよう」 「競合より機能を増やそう」
こうやって考えていた時期がある。
競争に勝てば、市場を取れる。そう信じていた。
でも、ある人の言葉を読んで、考えが変わった。
「競争は敗者のすることだ」
ピーター・ティールの挑発
この言葉を言ったのは、ピーター・ティールという人だ。
PayPalの共同創業者。Facebookの最初の外部投資家。Palantirの共同創業者。
シリコンバレーで最も成功した投資家の一人だ。
彼が言うには、競争とは利益を削り合うだけの消耗戦だという。
最終的には誰も勝者になれないゼロサム・ゲーム。
競合を意識すればするほど、同じような商品を作り、同じような価格で売り、同じように利益が減っていく。
競争に「勝つ」のではなく、競争を「しない」ことが勝利だと彼は言う。
独占は悪ではない
「独占」と聞くと、悪いイメージがあるかもしれない。
市場を支配して、消費者から搾取する。独占禁止法で規制される対象。
でも、ティールが言う「独占」は違う。
他社には真似のできない圧倒的な価値を提供することで、結果的にその分野で唯一無二の存在になること。
Googleは検索で独占的な地位を築いた。でも、誰もGoogleに「使わされている」とは感じない。他の検索エンジンを使う自由はある。でも、使わない。Googleが圧倒的に良いから。
これが「良い独占」だ。
競争相手がいないのではなく、競争する意味がなくなるほど、圧倒的に差をつける。
「10倍良い」を目指せ
じゃあ、どうすれば独占できるのか。
ティールは「少なくとも10倍は優れた独自の技術を持て」と言う。
10%の改善では、顧客は動かない。「まあ、今のままでいいか」となる。
でも、10倍良ければ話は変わる。比較の対象にならない。
PayPalが登場したとき、銀行振込よりも圧倒的に速く、安く、簡単だった。「ちょっと便利」ではなく、「全く別物」だった。
だから、競争ではなく独占になった。
「ちょっと良い」では勝てない。「全く別物」でなければ、結局競争に巻き込まれる。
小さな市場を支配しろ
もう一つ、ティールが言う重要なことがある。
「小さな市場を完全に支配しろ」
大きな市場に飛び込んで、シェアを奪い合うのは競争だ。
小さな市場を見つけて、そこで100%のシェアを取る。それが独占だ。
PayPalは最初、巨大な決済市場全体を狙わなかった。「eBayのパワーセラー」という、非常に狭いけど決済ニーズが極めて高い市場に狙いを定めた。
そこで100%を取ってから、徐々に拡大した。
最初から大きな市場を狙うと、競争に巻き込まれる。小さな市場を独占してから、拡大する。
「競合分析」という罠
ここで、自分の失敗を思い出す。
「競合分析」を一生懸命やっていた。
競合の価格、機能、マーケティング。全部調べて、「どこで差別化できるか」を考えていた。
でも、これ自体が罠だった。
競合を分析している時点で、競争に参加している。
競合の機能を見て、「うちもこの機能を付けよう」と思う。それで、結局同じような製品ができる。
ティールの言葉を借りれば、「人間は他人が欲しがるものを無意識に模倣して欲しがる」。
競合を見れば見るほど、同じものを作ってしまう。
「隠された真実」を探せ
じゃあ、競合を見ないで、何を見ればいいのか。
ティールは「隠された真実」を探せと言う。
多くの人が見過ごしているけど、自分だけが確信しているアイデア。
Facebookに投資したとき、ほとんどの投資家は「SNSはもう終わった」と思っていた。ドットコムバブル崩壊の傷が深かったから。
でもティールは見ていた。「人々がオンラインで実名で繋がりたい」という欲求を。
これが「隠された真実」だった。
市場のコンセンサスを疑え。みんなが正しいと思っていることの中に、間違いがある。
今日から試せること
「独占を目指せ」と言われても、すぐにはできないだろう。
でも、一つだけ、今日からできることがある。
「競合より良い」ではなく、「競合と違う」を考えろ。
「競合より安い」→ 価格競争に巻き込まれる 「競合と全く違うアプローチ」→ 比較されない
同じ土俵で戦っている限り、消耗戦になる。
土俵を変えろ。新しい土俵を作れ。
「競争に勝つ」ことを目標にしていた頃、いつも苦しかった。
競合の動きに一喜一憂して、後追いばかりしていた。
今は少し違う。
「競争しなくていい場所を探す」
この視点を持つだけで、見える景色が変わった。
この記事で参考にした本
『ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望』トーマス・ラッポルト → ティールの「競争は敗者のすること」という哲学と、PayPal、Facebook、Palantirの成功事例。
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