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ブクドリ | BOOK DRIP

なぜ、あの店は潰れないのか

約3分で読めます リーダーシップ・組織
目次

タピオカの店が、街から消えました。

ブームが終わって潰れた、と多くの人は思っています。ただ、税理士の菅原由一さんが『タピオカ屋はどこへいったのか?』で書いているのは違う話です。

あの人たちは潰れていません。同じ場所で、唐揚げやマリトッツォや焼き芋を売っています。

タピオカ屋の開業に必要なのは、茹でる鍋とカップの密閉機くらいです。省スペース、少資金。だから短い流行期間でも初期費用を回収できて、ブームが去る前に内装を変えて次の波に乗れます。

儲けていたのは、タピオカではありませんでした。回収の速さのほうです。

商売は、足し算より引き算で強くなる

もうひとつ、本書の例で分かりやすいのがQBハウスです。

美容室が当たり前に持っていたものを、この業態はほぼ全部引きました。カラー、パーマ、シャンプー、手厚いおもてなし、会話。

シャンプーをやめたことで、水回りの設備も要らなくなります。カットのみ、所要時間およそ10分。

総務省の調べによるヘアカット代の平均は3,600円ほどですから、1,000円は3分の1以下です。それで20年で約600店舗、年間利用者1,500万人、売上200億円超に届き、2018年に東証一部へ上場しました。

安さは値引きではありませんでした。工程を減らした結果です。

同じ商品でも、誰に売るかで価格は10倍変わる

千疋屋のメロンの話も、商売の輪郭をはっきりさせてくれます。

スーパーで1玉1,000円から2,000円で売られているメロンが、千疋屋では2万円前後で売られています。

違いは品質だけではありません。家庭で食べるものではなく、大切な相手へのお土産や贈答品として定義されているという点です。市場が違えば、比較される相手も変わります。

同じ構造は、富士山頂の自動販売機にもあります。街なら100円ちょっとの缶ジュースが500円。カップ麺は800円です。

その場所で、その用途で、他に選択肢がないかどうか。価格はそこで決まっています。

安さを支えているのは、節約ではなく設備投資

一方で、安さを続けるのは節約とは別の仕事です。

サイゼリヤ元社長の堀埜一成さんの本に、こんな例が出てきます。同社はオーストラリア工場で、看板商品ミラノ風ドリアのホワイトソースを生産していました。当初の主原料は現地の生クリームです。

ところが干ばつで価格が高騰し、供給も不安定になります。ここで同社が取った手は、値上げでも原料の切り替えでもありませんでした。

数億円を追加投資して、ミルクを買って自社で濃縮するプロセスを導入したのです。これで、環境が変わっても原価を一定に保てるようになりました。

安いことと、安く保てることは別の能力でした。前者は努力ですが、後者は投資です。

明日からできること

誤解:長く続いている店は、儲かっている店 → 東京商工リサーチの調査によれば、国内企業の6割以上は赤字法人です。菅原さんの本にも、黒字企業は4割弱しかないと書かれています。

続いていることは、儲かっていることを意味しません。逆に、短期間で畳んだ店が損をしたとも限らない。タピオカ屋がそうでした。

正しいアプローチ:自分の仕事を、回収期間で見てみる → 「儲かるか」ではなく「いつ回収し終えるか」で見る。この視点の切り替えは、事業でなくても使えます。

新しいスキルの習得でも、副業でも、社内の新しい取り組みでも同じです。投じた時間を何で回収するのか、どれくらいで回収し終えるのか。そこが決まっていないと、続けるか撤退するかの判断ができません。

もうひとつ、引き算を1つ書き出してみる。いまの仕事から何を外せば、設備や工程ごとなくせるか。QBハウスがシャンプーをやめて水回りをなくしたように、1つ引くと2つ消えることがあります。

おわりに

商売のうまい人を見ていると、勘が鋭いように見えます。

でも本を読むと、やっているのは勘の話ではありませんでした。回収期間を短くする、工程を減らす、市場を定義し直す、原価を一定にする。どれも設計です。

あの店が潰れないのは、運がいいからではありません。潰れない形で始めているからでした。


この記事で参考にした本

『タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ』菅原由一 → 初期費用の回収、引き算の業態、市場の定義。街で見かける商売の裏側を、税理士の視点で解説している。

『サイゼリヤ元社長が教える 年間客数2億人の経営術』堀埜一成 → 低価格を支える製造と調達の設計。安さが工夫ではなく投資で作られていることが分かる。


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