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ブクドリ | BOOK DRIP

手取りを増やすのに、年収は上げなくていい

約4分で読めます 投資・資産形成
目次

収入を増やす方法は、だいたい大変です。

昇進する、転職する、副業を始める。どれも時間がかかりますし、確実でもありません。

一方で、同じ額を稼いでいても手取りが変わる領域があります。制度の使い方です。

税理士の大河内薫さんと漫画家の若林杏樹さんによる『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』は、この領域の入口を丁寧に開いてくれる一冊でした。

以下の数字は本書の刊行時点のものです。税制と社会保険の基準額は改定されるので、実際に判断するときは必ず現在の制度を確認してください。

「扶養」は、ひとつの制度ではなかった

まず、いちばん誤解されている話から。

「扶養の範囲で働く」と言うとき、多くの人はひとつの基準を思い浮かべます。実際には、まったく別の2つの制度があります。

ひとつは所得税の扶養。もうひとつは社会保険の扶養です。本書が書かれた時点で、前者の基準は年収103万円、後者は130万円でした。

所管も違えば、超えたときに起きることも違います。所得税のほうは税額が変わるだけですが、社会保険のほうは自分で保険料を払う側に回ります。金額のインパクトは後者のほうが大きい。

なお、この2つの基準額はその後の税制改正で見直されています。数字は変わっても、別々の制度が2つあるという構造は変わりません。

稼ぎを増やさずに、税額が10万円変わる

本書の例で分かりやすいのが、確定申告の形式です。

所得が65万円以上ある人が、白色申告から青色申告(65万円控除)に切り替える。それだけで、最低でも9万7500円の税金が減ります。65万円に税率15%をかけた金額です。

売上は1円も増えていません。帳簿の付け方を変えただけです。

同じ構造の話は、ほかにもあります。青色申告の特例を使うと、通常なら10万円までしか一度に経費にできない資産を、30万円未満まで1年で経費にできます(年間300万円が上限)。

こうした知識は、努力や才能とはまったく関係のないところにあります。知っているかどうかだけです。

同じ金額でも、置き場所で結果が変わる

貯める場所についても、同じことが言えます。

本書が挙げるのが小規模企業共済です。掛金は月1000円から7万円まで、金利は約1〜1.5%。毎月7万円を30年預けると、元本2520万円に対して受取額は約3000万円。利息だけで約500万円になります。

普通預金に同じ額を置いた場合、利息は4000円に満たない。しかも小規模企業共済は掛金が全額所得控除になります。

会社員が使える制度でも、構造は同じです。山崎元さんの『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』は、確定拠出年金を利用することで得られる節税効果を、毎年3万円から4万円と見積もっています。

年利数%を追いかけるより、まず確実に効く部分がここにあります。

明日からできること

誤解:副業が会社にバレるのは、マイナンバーのせい → 本書によれば、マイナンバーが原因でバレることはありません。一番の原因は、住民税の通知が会社に届くことです。

関連して、もうひとつ誤解が多い点があります。副業の所得が年間20万円以下なら確定申告は不要、と言われます。正確には、不要なのは所得税の確定申告だけで、住民税の申告は別途必要です。

正しいアプローチ:自分に関係する制度を、3つだけ名前で書き出す → 全部を勉強する必要はありません。会社員なら確定拠出年金と医療費控除、副業があるなら青色申告。この3つの名前を知っているだけで、調べるときの入口ができます。

医療費控除は年間10万円を超えた部分が対象です。それに届かない人向けに、対象医薬品を年1万2000円超買った場合のセルフメディケーション税制もあります。

そして、経費の線引きに完璧な正解を求めないこと。本書は、経費の判断は税務調査官の数だけ解釈があり、絶対的な正解はないと書いています。悪意のある脱税でなければ、見解の相違による修正で済むことがほとんどだ、とも。

おわりに

山崎さんの本には、もうひとつ印象的な数字があります。

生涯年収が3億円と見込まれる健康な若い人の人的資本は、現在価値に換算して1億円以上になる。つまり、最大の資産はすでに自分の中にあるということです。

制度の知識は、その資産から出てくるお金の目減りを防ぐ役割を果たします。増やす話ではなく、漏れを止める話です。

年収を上げるのは大変ですが、漏れを止めるのは今日からできます。


この記事で参考にした本

『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』大河内薫、若林杏樹 → 2つの扶養、青色申告の効果、小規模企業共済、住民税と副業の関係。税の知識を漫画で入口から説明している。

『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』山崎元、大橋弘祐 → 確定拠出年金の節税効果と人的資本の考え方。制度を使うことと運用することの優先順位が整理できる。


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