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ブクドリ | BOOK DRIP

うまくいかないときのやり方は、教科書に書かれていない

約3分で読めます 戦略・経営・事業
目次

経営書の多くは、うまくいく方法を教えてくれます。

問題は、実際の経営でいちばん時間を取られるのが、うまくいっていない期間だということです。

ベン・ホロウィッツの『HARD THINGS』は、そこだけを扱った本でした。答えのある問題ではなく、答えのない難問をどう扱うか。

彼自身が経験した数字を並べると、その苦さが伝わります。

難しいのは目標ではなく、届かなかったあとの処理

ホロウィッツが率いたラウドクラウドは、上場申請書の時点で直近6か月の売上が194万ドル、翌年度の売上予測が7500万ドルでした。

IPO後、この予測は5500万ドルに引き下げられ、従業員の15%が削減されます。株価は一時1株35セント、手元現金の半分以下という企業価値まで落ちました。

彼はこう書いています。大きく大胆な目標を設定することが一番難しいと思われがちだが、実は目標を達成しそこなったときに社員をレイオフすることのほうが本当に難しい、と。

3回のレイオフで、計400名を失っています。

そのうえで彼は、レイオフが必ず文化を壊すという通説も否定します。正しい方法で実行すれば、企業文化を維持し、最高の社員を留めておくことはできる、と。

前向きに振る舞うほど、士気は下がる

危機のときにリーダーがやりがちなことを、本書は名指しで否定します。

きっかけは、AT&Tで作業員として働く義理の弟の一言でした。うちの重役は四半期に一度やってきては、くだらない景気付けを言っていく、と。

ホロウィッツは、自分がCEOとしてやっていることが、まさにそれだと気づきます。

前向きになりすぎて問題を隠すほうが、会社をダメにする。だから彼は、ありのままを語るべきだと書きます。

社員は状況を知っています。知らないふりをしているのは、たいてい上のほうだけです。

特効薬を探している時間が、いちばん高くつく

ネットスケープ時代、マイクロソフトが5倍速く、しかも無料のウェブサーバーを出すと分かったときの話も印象に残ります。

彼らはまず、銀の弾丸を探しました。この状況を一発でひっくり返す何かです。

そこでビル・ターピンから受けた助言が、銀の弾丸はない、鉛の弾丸を大量に撃つしかない、というものでした。地道な性能改善の積み重ねです。

結果、そのサーバー製品は4億ドルを超えるビジネスになりました。

一方で本書は、平時のCEOと戦時のCEOでは求められるスキルがまったく違い、両方の状況で優秀な人間はめったにいないとも書いています。

いま自分がどちらにいるのかを取り違えると、正しいはずの打ち手が全部外れます。

明日からできること

誤解:苦しいときこそ、リーダーは強いメッセージを出すべき → 藤田晋さんの『起業家』に、対照的な行動が記録されています。

アメーバ事業が不振だったとき、藤田さんは事業本部長を更迭して自ら本部長になり、社長室を21階から麓のビルへ移しました。現場で指揮を執るためです。

同事業は立ち上げから通期黒字化まで6年かかり、累積赤字は60億円に達しました。途中では、サーバー入れ替えで72時間のシステムダウンも起こしています。

やったのは宣言ではなく、いる場所を変えることでした。

正しいアプローチ:悪い知らせを、早く、そのまま出す → 隠している時間だけ、対処できる選択肢が減っていきます。そして周囲はたいてい気づいています。

もうひとつ、特効薬を探している自分に気づいたら、時間を区切ってください。探すこと自体が悪いのではなく、探し続けることで地道な改善に手をつけられなくなるのが問題です。

そして、いま自分は平時にいるのか戦時にいるのかを言葉にしてみる。平時の作法で戦時を乗り切ろうとすると、判断がすべて遅れます。

これは会社に限った話ではありません。個人のキャリアでも、順調な時期と立て直しの時期では、取るべき行動が変わります。

おわりに

成功した経営者の話は、たいてい終わったあとに語られます。だから、うまくいった判断だけが残ります。

でも本人が実際に立っていたのは、株価が35セントになった日や、400人に辞めてもらった日でした。

その日にどうするかは、どの教科書にも書かれていません。だから、書き残した人の本には価値があります。


この記事で参考にした本

『HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか』ベン・ホロウィッツ → レイオフ、資金枯渇、幹部の解任、平時と戦時。うまくいっていない期間の判断だけを、実額と実名で書いた一冊。

『起業家』藤田晋 → アメーバ事業の6年と累積赤字60億円。苦境で経営者が何を変えたかが、日本の事例として読める。


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