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『Google流 疲れない働き方』ピョートル・フェリークス・グジバチ氏|疲れているから成果が出ない

キャリア・働き方
約6分で読めます
『Google流 疲れない働き方』

毎晩どっと疲れ、週末に休んでも回復しない。その原因は頑張り不足ではなく、頑張り方にあります。

こんな人におすすめ

この本の核心――「疲れているから成果が出ない」という逆転の発想

本書を貫く主張は、私たちが信じてきた因果関係をひっくり返します。多くの人は「成果が出ないから、もっと働いて疲れる」と考えます。しかし著者のピョートル氏は逆だと言います。

「成果が出ないから疲れる」のではなく、「疲れているから成果が出ない」。

疲労が創造性と集中力を削り、結果として生産性が落ちる悪循環。これが日本の職場で起きている構造です。

事実、養命酒製造の2017年の調査では、東京で働く人の8割が「疲れている」と回答し、40代では85.8%に達しました。一方で日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟35カ国中20位、米国の6割強にすぎません。

頑張りが足りないのではありません。エネルギーの使い方を知らないだけです。

そこで本書が提案するのが、時間を管理する「タイムマネジメント」から、活力を管理する「エネルギーマネジメント」への転換です。グーグルの社員が真昼間にバレーボールに興じるのは、怠けているからではありません。最大限のアウトプットを出すために、心と体を戦略的に整えているのです。

4つのエネルギーをマネジメントする

グーグルには「Managing Your Energy」という研修があります。そこでは人間のエネルギーを4つに分けて整えることを重視します。

重要なのは、この4つが独立していない点です。睡眠不足という体の低下は、苛立ちという感情の低下を呼び、集中力を散漫にします。一つが崩れると連鎖して崩れていく。だからこそ、バランスよく整えることが持続的な成果につながります。

究極の集中「フロー」を意図的に作る

集中のエネルギーを極限まで高めた状態が「フロー」です。時間を忘れるほど没入し、最高のパフォーマンスを楽に発揮できる心理状態を指します。

その効果は驚くべきものです。

経営者がフロー状態を経験することで、その会社は5倍の生産性を発揮できるようになる。

マッキンゼーの調査が示したこの数字に加え、Flow Genome Projectの研究では創造性が4倍、学習スピードが2倍になるとされています。

スティーブン・コトラー氏によれば、平均的な人は勤務時間のわずか5%しかフローに入れていません。これを15%、つまり8時間勤務で約1時間半に引き上げるだけで、生産性は2倍になります。

では、どうすればフローに入れるのか。本書は「スプリント仕事術」を勧めます。人間の集中力には約90分周期のウルトラディアンリズムがあります。これに合わせて90分集中し、その後10〜15分はしっかり休む、このサイクルが鍵です。

ただし休憩の質が決定的に重要です。休む時はメールを見ない。スマートフォンをチェックする行為は、本当の休息になりません。意識的に脳を休ませて初めて、次のスプリントで力を発揮できます。

加えて著者は「反射で仕事をしない」ことを強調します。依頼が来るたびに即反応するのは、自分の時間を他人に明け渡すのと同じです。「いつまでに対応すればよろしいですか?」と一言聞くだけで、主導権を取り戻せます。

身体エネルギーは「仕組み」で整える

集中や感情の土台になるのが身体です。本書が面白いのは、意志の力に頼らず「仕組み」で健康的な行動を促す点です。

グーグルのカフェテリアは行動経済学の「ナッジ」を活用しています。入り口の目立つ場所に新鮮なサラダバーを置き、糖分の多い飲み物は下段に隠す。社員が無意識に健康的な選択をするよう設計されているのです。

実際、スナックを飲み物から1.8mから5.5mへ移動させただけで、消費量が69%減ったという調査結果もあります。

睡眠も同じ発想です。最も重要なのは就寝時間ではなく起床時間を一定にすること。週末の寝だめでは平日の睡眠不足は回復できません。

また午後2〜3時の眠気は体内時計による自然な現象なので、10〜20分のパワーナップが午後を救います。30分以上眠るとだるさが残るので逆効果です。

運動は「わざわざ」ではなく「ついでに」。階段を使う、一駅手前で降りて歩く。日常に混ぜ込むことが続ける秘訣です。

疲れの最大原因は「人間関係」――心理的安全性

ここまでの個人の努力も、組織の土壌が悪ければストレスで消耗してしまいます。ビジネスパーソンが疲弊する最大の原因は、仕事の量ではなく職場の人間関係です。

グーグルの社内調査「プロジェクトアリストテレス」は、生産性の高いチームに共通する唯一最大の要因を突き止めました。それが「心理的安全性」です。学歴やスキル、組織がフラットかどうかとは相関がなく、決め手は「他者への思いやりに支えられた安心感」でした。

心理的安全性の有無は、組織を大きく変えます。疲れる組織では「わからない」と言えず、忖度が蔓延し、失敗は個人の責任として追及されます。疲れない組織では「わからない」と素直に言え、本音で対話でき、失敗を組織の学びに変えられます。忖度は上司の意向を推測し続ける行為で、脳のエネルギーを静かに浪費させます。

この安心感を育む鍵が、共感の3段階です。Sympathy(同情)からEmpathy(共感)へ、さらにCompassion(思いやり)へ。Compassionは「相手を助けたい」という能動的な意志を伴います。この他者への貢献意欲こそが信頼の土台になります。

実践としては、マネージャーの週1回の1on1ミーティングが効果的です。進捗確認ではなく、部下が話したいテーマに耳を傾ける時間にします。部下の側も「Manage your manager」、つまり自ら期限や優先順位を確認し、上司を動かす姿勢が求められます。

問題が起きたときは「誰のせいか」ではなく「次に同じ問題を防ぐ仕組みは何か」を問う。メルカリの反省会がまさにこの形です。

最も持続するエネルギーは「働きがい」

4つのエネルギーの中で最も強力で持続的なのが、意義のエネルギーです。自分の仕事が価値観や人生の目的と結びついているとき、人は困難でも粘り強く取り組めます。

本書は幸せに働くための5段階を示します。自己認識から始まり、自己開示、自己表現、自己実現、そして「自分はできる」という自己効力感へ。

出発点となる自分の「軸」を見つけるには、過去を振り返り「何をしている時が一番楽しかったか」を問うこと、未経験の分野に挑戦すること、そして遊びと仕事を混ぜる「Play work」が有効です。

軸を見つけたら、それを守る勇気も必要です。合わない環境にいるなら、異動や転職を選ぶ「建設的なわがまま」も長期的には不可欠な判断です。最終的に目指すのは、長時間労働で稼ぐのではなく、自分の時間単価の価値を上げること。これこそが疲れない働き方の本質だと著者は説きます。

明日から何を変えるか

おわりに

疲れ果てることは、ハードワークの宿命ではありません。それは多くの場合、働き方の「スタイル」がもたらす結果にすぎません。時間を管理する古い発想を捨て、エネルギーと集中力、そして心理的な環境を整える。これは才能ではなく、誰にでもできる戦略的な選択です。

私が本書から受け取った最大のメッセージは、「休むこと」と「遊ぶこと」が最高の成果を出すための仕事そのものだという視点でした。明日の働き方を一つだけ変えるとしたら、あなたは何を選ぶでしょうか。

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