本文へスキップ
ブクドリ | BOOK DRIP
戻る

『はしゃぎながら夢をかなえる世界一簡単な法』本田晃一|苦労して叶える道と、はしゃいで叶える道は選べる

キャリア・働き方 ✍ 本田晃一
約9分で読めます

※ 本記事はアフィリエイトリンク(Amazonアソシエイト)を含みます。

『はしゃぎながら夢をかなえる世界一簡単な法』
目次

夢をかなえるには、苦労して、努力して、歯を食いしばらないといけない。そう信じている人は多いと思います。

私自身、長らくそう刷り込まれてきました。だから「ラクして夢なんてかなうわけがない」という言葉に、どこか安心していた節があります。苦しんでいる自分には、少なくとも誠実さがある。そう思いたかったのでしょう。

本田晃一さんの『はしゃぎながら夢をかなえる世界一簡単な法』は、その前提そのものを揺さぶってきます。著者の主張はシンプルで、夢をかなえる道は二本あって、どちらを選ぶかは自分次第だ、というもの。

崖をよじ登る断崖絶壁ルートと、お花畑を眺めながらはしゃいで登るルート。同じ山頂に着くなら、後者を選んでいい。そのための具体的なルールを、著者がお金持ちや成功者から学び取った知恵としてまとめています。

ここで早合点してほしくないのは、これが「何もしなくていい」という怠けの本ではない点です。自己受容から始まり、人とのつながり、お金の循環、仕事の作り方へと、内側から外側へ順番に整えていく。むしろ手数の多い実践書だと言ったほうが正確です。

図解

こんな人に効く

頑張っているのに報われず、自分にムチを打ち続けて疲れている人。努力の量を増やすのではなく、努力の「前提」を疑ってみたくなる本です。

ほめられても反射的に「いえいえ」と否定してしまい、チャンスをうまく受け取れない人。受け取り下手は、夢の取りこぼしと地続きだと著者は言います。

そして、自分の好きを仕事にしたいのに、すでに同じことをやっている先行者がいて勝てる気がしない人。後半で出てくる「複合化」という考え方が、その閉塞を解いてくれます。

出発点もゴールも「楽しさ」にする

本書の核心は、選択の基準を「はしゃいだ気持ちになれるかどうか」に置くことです。

著者は人生の指針として「俺の人生の目的は、笑う時間を長くすること」という言葉を掲げています。どんな成功よりも、楽しさと笑顔を上位に置く。だから夢をかなえる過程でも、出発点は楽しさ、そしてゴールも楽しさでなければならない、と。

ここで鋭いのは、楽しさを欠いたまま自分にムチを打って努力すると、本来望んでいた場所とは違う「あさっての方向」にたどり着いてしまう、という指摘です。

プロセスを犠牲にして結果だけを追っても、待っているのは苦しい結末でしかない。これは精神論ではなく、目的地の設定ミスの話だと私は受け取りました。

苦行を続けた先には、苦行に耐えられる人生が手に入るだけなのです。

著者自身、かつては低学歴・低収入・低身長の「3低」で、身長は160センチ。劣等感の塊だったと振り返ります。オーストラリア大陸を自転車で横断しようとして、55日かけて挫折した過去もある。

それでも人生が好転したのは、苦労の総量を増やしたからではなく、選択の基準そのものを入れ替えたからでした。この告白があるからこそ、本書の軽やかさは「持てる者の余裕」ではなく、底から這い上がった人の実感として響きます。

「ダメな自分も最高!」とOKを出す

夢をかなえる最初の鍵は、セルフイメージを高めることだと著者は言います。セルフイメージとは、自分が自分をどう思い、どう扱っているか。人は、自分で自分をどう見ているかによって、無意識に選択肢を狭めている、というわけです。

ただし、ここに落とし穴があります。「セルフイメージを高めよう」と頑張ること自体を目的にすると、「今の自分は低い」と毎回宣言しているのと同じになり、かえって苦しくなる。

だから高めること自体ではなく、「高めて何をしたいのか」「何を感じたいのか」のほうにフォーカスせよ、と。この但し書きが、ありがちな自己啓発との分かれ目だと感じます。

そのうえで著者がすすめるのが、立派な自分を目指すのではなく、「最低な自分、最高!」「失敗した自分も最高!」と、ダメな自分をあらかじめ全肯定してしまうこと。

頑張って積み上げたものは崩れるけれど、ダメな自分を最高と決めてしまえば、もう崩れようがない。

理屈で言えば、これは自己評価の土台を「成果」から「存在」へ移す操作です。成果は奪われうるが、存在を肯定する決断は誰にも奪えない。著者は自転車横断の挫折を人に話して笑い飛ばすうちに、失敗が怖くなくなり、どんどん挑戦できるようになったと言います。

ここに「ない」ではなく「ある」にフォーカスする発想も重なります。不足に意識を注げば不足前提で夢がかない、すでにあるものに意識を注げば豊かさ前提で夢がかなう。

心理カウンセラーの心屋仁之助さんも「ダメな自分を最高!と決める」と実践したらテレビや出版の話が勝手に舞い込んだと言い、ベストセラー作家のひすいこたろうさんは講演でしょっちゅう噛むのに、ファンは「今日も噛んだ!」

と喜ぶ。人は長所で尊敬され、短所で愛される。欠点でこそ深く愛される、という逆転がここにあります。

相手の「喜びフォルダー」を開く

夢もチャンスも豊かさも、すべては人を介してやってくる。だから良い人間関係を築くことが、そのまま夢への近道になる。本書はここで具体的な技術を惜しみなく出してきます。

中心にあるのが「喜びフォルダー」という考え方です。相手の心の中にある、好きなことや夢中になっていることが詰まったフォルダー。それを見つけて一緒に喜ぶ。

やり方は拍子抜けするほど単純で、「いま、何に夢中になっていますか?」と聞き、相手が話し出したら目を輝かせて「すごい!」と返す。相手が見ている楽しそうな映像を、こちらも一緒に想像しながら聞く。

それだけで心の距離は一気に縮まります。

摩擦を減らす道具もいくつか紹介されます。ひとつは、価値観の違いを「部活が違うだけ」と捉えること。親や社会から植え付けられた優劣の「縦のものさし」を、ジャンル分けの「横のものさし」に置き直す。

ファーブル博士がカマキリやフンコロガシに優劣をつけず観察したように、「ふーん、この人は要領よく生きるタイプね」とフラットに眺める。

もうひとつが、対立を共創に変える「どうしましょう?」という一言。世界銀行で働いていた中野裕弓さんは、もめそうな場面でこの言葉を投げかけ、相手を敵ではなく「一緒に問題を解決する仲間」に変えたといいます。

意見が食い違うときは、反論の前にまず共感する。相手の心が開いてから話せば、提案は驚くほど通りやすくなる。

細かいけれど実用的なのが、男女で「してほしいこと」が違うという話。女性は共感してほしいので「わかる」「かわいい」、男性は認めてほしいので「すごい」「カッコいい」と翻訳して伝える。

さらに、本人のいないところでほめる「影ほめ」は、巡り巡って自分への評価として返ってくる。そして、嫌いな人や不幸せな場所からは逃げていい。逃げても自分の価値は一ミリも減らないからです。

お金は「喜びのダム」に貯めて、喜んで使う

お金の章で本書がくり返すのは、お金は喜びのエネルギーだという見方です。自分と人を喜ばせるために使うほど、お金は循環して戻ってくる。

まず外すべきは「ノミの天井」。エアコンの設定温度のように、人は無意識に「自分が貯められるのはここまで」という上限を決めてしまう。たとえば「親の収入を超えてはいけない」という、誰に頼まれたわけでもない思い込み。この上限を取り払わないと、収入が増えても不思議と手元に残りません。

貯金についても発想を反転させます。我慢して苦労して貯めたお金は「辛抱の結晶」になり、反動でいつか散財してしまう。そうではなく、将来の自分や誰かを喜ばせるための「喜びのダム」として貯める。頑張らないのに貯まる、という設定を自分にインストールするのです。

使い方も同じで、渋々払うのではなく「お金さん、僕を幸せにしてくれてありがとう!」と喜んで使う。自分に使うお金を「ムダ使い」と思うのは、自分の存在を「ドブ」と見なすのと同じだ、という言い回しは耳に痛い人もいるでしょう。

著者は心屋さんに「なんで自分のためにお金を使えないの?」と問われ、普段9800円のビジネスホテルに泊まる身で、思い切って1泊8万5000円のリッツ・カールトンに一人で泊まってみたそうです。

その体験でお金の制限が外れ、自由な感覚を得たといいます。

道で1ドル札を配ると貧乏な人ほど警戒して受け取らず、お金持ちほどためらいなく受け取った――そんなニューヨークの逸話も引きながら、著者は受け取り上手になることを説きます。

ほめられたとき反射的に「いえいえ」と否定してしまうクセを「反射的否定フィルター」と呼び、これを外して「ありがとう」と素直に受け取る練習をすすめる。

受け取り下手は、お金もチャンスも取りこぼすのです。

才能を「複合化」して、競争から降りる

仕事の章は、「仕事ができること」と「人生が豊かになること」は別だ、という整理から始まります。仕事は人生をハッピーにするための道具であって、目的ではない。

だから自分を一番大切にして、楽しそうにしている人のところに、良い仲間や顧客が自然と集まる。義務感で人を動かすのではない「この指とまれ」スタイルです。

競争から降りるための鍵が、才能の「複合化」です。ひとつの才能で勝負すれば、小さな池でメダカを奪い合うことになる。けれど、一見無関係な複数の経験や才能を掛け合わせると、誰も真似できないオンリーワンになれる。

著者自身、ネット販売の先見性と、自転車で放浪した自由人という二つを掛け合わせ、独自のコンサルタントの座を築きました。才能は、自分では当たり前すぎてスルーしていることの中に隠れている。

だから人にほめられたことは、謙遜せず受け取っておくのが得策です。

苦手なことは克服しようとせず、それを「大好き」な人に任せる。ロバート・キヨサキ氏の「従業員・自営業者・ビジネスオーナー・投資家」の分類を引きながら、苦手を手放して自動化すれば仕事はラクに回ると説きます。

ここで足を引っ張るのが、苦労して身につけたスキル由来の「自己重要感」、つまり「自分がいないと回らない」というプライドへの執着。これを手放せないと、人に任せられず、自由も豊かさも遠のく。

仕事づくりで効くのが「そもそも掘り」です。「そもそも自分はなぜこれをやっているのか」という動機を掘り下げ、ストーリーとして語る。著者の父親は「遠足の前夜のようにワクワクするゴルフの楽しさを伝えたい」という動機でゴルフ会員権の会社を作り、その思いをホームページに書いたところ、共感した人の注文が集まって売上が3倍になったといいます。

スターバックスがチラシに「このコーヒーを買うと学校が建つ」とそっと添えるように、ストーリーは静かに人を動かす。お客様も全員を満たそうとせず、自分のオタク度を理解してくれる人に絞ったほうがいい。

今日からできる三つのこと

本書の実践は、内側から外側へと積み上がります。すぐ試せるものを三つ。

ひとつ。寝る前に、その日の自分をねぎらう。「何もやれていないのに、ほめようとしている自分はえらいな!」というくらいハードルを下げていい。松下幸之助さんは会長室で自分の頭を撫で、「ここまで来て、えらいなぁ」と自らをねぎらっていたそうです。

ふたつ。クレームや対立の前に「どうしましょう?」と言う。反論する前に問題を共有し、相手を敵から仲間へと変える一言です。

みっつ。ほめられたら「ありがとう」と受け取る。「いえいえ」をやめるだけで、豊かさやチャンスを受け取る筋肉が鍛えられていきます。

おわりに

この本を読んで意外だったのは、「ラクして」という言葉の中身が、実はかなり能動的だったことです。秀吉が信長のぞうりを温めたように、相手の喜びを先読みする。わからないままでも、とにかく行動する。他者への貢献は、むしろ強く求められている。

ラクとは、苦労や我慢や競争を手放すこと。その代わりに、自分を大切にし、人の喜びを一緒に喜ぶ。著者が芥川の「蜘蛛の糸」から読み解いたのは、「みんなで登れば糸は切れない」という解釈でした。幸せは分け合っても減らず、むしろシェアするほど総量が増えていく。

今夜、寝る前に一度だけ、自分をねぎらってみる。はしゃぐ道への第一歩は、案外そんなところから始まるのかもしれません。


合わせて読みたい

『やらなきゃ確率ゼロ%』大野晃|意志力を捨てたら、人生が動き出した 「努力して頑張らないと夢はかなわない」という前提を外す点で、本書と同じ方向を向いています。意志力に頼らず人生を動かす発想を補強したい人に。

『世界一やさしいやりたいことの見つけ方』八木仁平|「好き×得意×大事」で人生のモヤモヤが晴れる 本書の「複合化」で競争しない仕事を作る話と響き合います。自分の好きと得意を掛け合わせて進路を決めたい人におすすめです。

『喜ばれる人になりなさい』永松茂久|「運は買える」と教えた母の、壮絶で温かい人生哲学 相手の喜びを起点に人とつながる、という本書の人間関係論と重なります。喜びフォルダーの考え方をもう一歩深めたい人に。


この記事をシェア:

次に読む一冊

同じテーマを、もう一段深く考えるための一冊です。

キャリア・働き方『嫌なこと、全部やめても生きられる』プロ奢ラレヤー|諦めと逃げを「無敵コマンド」に変える生存戦略『嫌なこと、全部やめても生きられる』(プロ奢ラレヤー)の要約。銀行口座の残高は、だいたい2万円。