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発想力 大前研一

『発想力』大前研一|前年踏襲の企画しか出ないのは、才能より考える型が足りないからだ

思考法・問題解決 大前研一
約8分で読めます

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この本の全体像
『発想力』の図解

本の結論

発想はひらめきではなく、稽古で身につく型です。

明日やること

いま抱えている課題を一つ選び、二つ上の役職の人ならどう決めるかを3行で書いて、今週の上司との面談か定例に持っていく。

効く悩み

  • 企画会議で、前年踏襲の案しか出てこない
  • 競合と同じスペック比べから抜け出せない
  • 新規事業や新商品を考えろと言われても、取っかかりがない

読むべき人

  • 商品企画や新規事業に関わり、発想の型を増やしたい人
  • 提案の質を一段上げたい中堅の会社員

読まなくていい人

  • 今日の業務を手早く回すコツや、会議の進め方を探している人
  • 最新の事業事例を知りたい人(事例は2018年以前のもの)
目次

動画で読む要約

写真がまだフィルムだったころ、店頭の定番は20枚撮りと36枚撮りでした。旅行に持っていくと20枚では途中で切れ、36枚では撮りきれずに現像が先延ばしになります。そこへ、20枚撮りの値段のまま4枚多く撮れる24枚撮りが出て、大きく売れました。二つの規格のあいだに眠っていた小さな不満を拾っただけの商品です。

動画で見る

大前研一の『発想力』は、こうした商品を生む頭の使い方を、才能ではなく型として教える本です。2018年の刊行で、AIが人の知能を追い越すと予測される時代には、知識の量や既存品のカイゼンだけでは個人も企業も生き残れないと説きます。そのうえで、無から有を生む「0から1」の力を、剣道の形のように稽古できる15の発想法に分けて示します。

向いているのは、企画会議で前年踏襲の案しか出ずに困っている人、新規事業や商品企画に関わる人、スペックの議論に寄りがちなメーカー勤めの人です。反対に、今日の業務を手早く回すコツや、そのまま使える会議の進め方を探している人には合いません。事例の大半は経営者の目線で語られる企業戦略で、現場の作業手順にはほとんど触れていません。

図解

発想はひらめきではなく、稽古で身につく型である

発想はひらめきではなく、稽古で身につく型です。本書の出発点は危機感です。著者は、2040年代にAIが人間の脳を超えるという予測を引き、答えを覚えているだけの人材は要らなくなると言います。検索すれば答えが出る時代に残るのは、まだ答えのない問題に自分で筋道をつける力で、著者はこれを対AI競争力と呼びます。日本企業が得意としてきたカイゼンは、0.7を0.85に引き上げる仕事であって、市場そのものをつくる仕事とは種類が違います。

そのうえで著者は、発想を生まれつきの才能として片づけません。剣道で形を繰り返すように、行き詰まったとき別の角度へ切り替える型を身につけておけば、ひらめきを待たずに次の手が出ます。15の方法は基礎編の11と実践編の4に分かれ、それぞれに企業の成功例と失敗例が付いています。全部を一度に覚えるより、手持ちの型を一つずつ増やしていく読み方が合う本です。

考え始める場所を、自社の技術から顧客の目的に移す

競合と同じ物差しで勝とうとするかぎり、新しい軸は見えてきません。最初に置かれるのが戦略的自由度(SDF)です。作り手が何を売りたいかでなく、使い手が最終的に何を得たいかから考える方法です。

目的関数:使い手が最終的に何を得たいかという、その「何を得たいか」のこと。

目的が定まれば、そこへ至る道筋を残らず洗い出せます。

失敗例として挙がるのがシャープの液晶テレビです。亀山モデルと呼ばれた技術の優位にこだわりましたが、画質の差は買い手が余分に払う理由にならず、値下げ競争に巻き込まれました。掃除機も同じ構図で、国内メーカーが吸い込む力や静かさを競っているあいだに、使い手の目的は部屋をきれいにすることから、手間をかけずに掃除を済ませることへ移っていました。その変化に応えたのがルンバでした。

成功例のコーヒーメーカーでは、他社製品との比べ合いをやめ、おいしいコーヒーの条件を突き詰めました。すると水の質、豆の挽き方、抽出の時間という、それまで誰も競っていなかった軸が見つかり、浄水機能とミルを内蔵した製品につながりました。

目的をつかむには、理屈だけでなく使い手の身になることも要ります。ユニ・チャーム創業者の高原慶一朗は、生理用ナプキンの開発にあたって自分で着けて暮らし、使い心地を確かめたそうです。本書はこれを感情移入という独立した型に数えています。

新しいものの多くは、組み合わせと持ち込みでできている

新しいものの多くは、すでにあるものの組み合わせと、他業界からの持ち込みでできています。シュンペーターの新結合を、著者はニュー・コンビネーションという発想法として扱います。発明の大半はまったく新しい何かではなく、すでにあるものの新しい組み合わせだという見方です。カメラ付きの携帯電話が当たったのは、二つの機械を足したからではなく、撮った写真をその場でメールで送れるという使い道が生まれたからでした。DeNAのモバオクも、携帯のカメラとネットオークションを結びつけ、パソコンが主流だった市場で先行するヤフオク!に挑みました。

組み合わせる相手は、業界の外にいることが多いです。ZARAは半年先の売れ行きを予測する衣料業界の常識を捨て、トヨタのかんばん方式を取り入れて、デザインから店頭までを2〜3週間に縮めました。メキシコのセメント会社セメックスは、生コンの配送遅れに悩んだ末に宅配ピザや救急隊の配車を調べ、GPSで車両を動かす仕組みを築きました。自社の悩みと似た問題をすでに解いている業界を探すのが、本書のいう横展開です。

二択のあいだに答えが埋まっていることもあります。冒頭のフィルムのほか、東京駅と新横浜駅の間に品川駅を設けた例や、エンジンは2発か4発が当たり前だった旅客機に3発のボーイング727を投じた例が並びます。逆に、細かく分けすぎた市場では一本化が当たります。ヘアケア製品の細分化が進んだところで、リンスインシャンプーが受け入れられました。極端に振れた業界の振り子を、反対側へ戻す発想です。

情報の差と遊んでいる資産には、まだ値段がついていない

市場のあいだにある情報の差と、遊んでいる資産には、まだ値段がついていません。アービトラージは、金融の裁定取引をビジネスに持ち込んだ考え方で、市場のあいだにある情報や価格の差から利益を得ます。ユニクロは、商社や問屋を通すのが普通だった時代に中国での生産と物流の事情をつかみ、企画から販売までを自社で抱えて、安さと高い利益率を両立させました。QBハウスは、シャンプーやブローが付いて当然という理容業界の思い込みを外し、カットだけに絞りました。

思い込みを外す訓練として、著者はGEのジャック・ウェルチが社員に出した指示を紹介します。自分の会社をつぶす方法を考えろ、というものです。他社に崩される前に自分たちの事業の急所を自分で突くと、見落としていた差が見えてきます。

もう一つの鉱脈は、空いているものです。Uberは使われていない車を、Airbnbは余っている部屋を、Upworkなどのクラウドソーシングは個人の手すきの時間と技能を、それを求める人とネットでつなぎました。企業の中にも同じ発想があります。ホテルや航空会社の空室や空席を直前に安く売るラストミニッツ・ドット・コムのように、遊ばせている固定費は、変動費さえまかなえれば値を下げてでも動かしたほうが利益になります。客の少ない平日の観覧車を、近くにいるスマホの利用者にだけ割り引くという案も、この型から出てきます。

他人の椅子に座り、事実の先にある意味まで跳ぶ

他人の椅子に座って考えると、自分の立場では出ない案が出てきます。会社員がいちばん手軽に始められるのはRTOCSでしょう。

RTOCS:いま進行中の事例を教材にする訓練。まだ答えの出ていない問題について、当事者の立場で解決策を考える。

本書では、茨城県の魅力度をどう上げるか、Airbnbの日本法人をどう伸ばすかといった問いが題材になっています。自分の会社や肩書きに縛られた頭では、この案は出てきません。

応用として、自分の役職を二段上げて考える方法も勧めています。係長なら部長、部長なら社長の目で同じ問題を見ると、事業をたたむ、売るといった、いまの立場では選択肢に入らない判断まで視野に入ります。

いま抱えている課題を一つ選び、二つ上の役職の人ならどう決めるかを3行で書いて、今週中の上司との面談か定例に持っていきます。書いた案がそのまま通らなくても、上の人が何を材料に判断しているかの見当がつきます。

時間の軸を動かす型もあります。孫正義がアメリカで生まれたばかりのヤフーを日本に持ち込んだように、海外で伸びている企業の動きを兆しとして集め、頭の中で早送りして数年後の暮らしを思い描きます。著者は、グーグルが何を買収しているかや、デロイトのFast 500のような急成長企業の一覧を、兆しの情報源に挙げています。

発想法の頂点に置かれるのは、集めた事実から一段上の結論へ跳ぶ問いです。子どもの数が減り、犬や猫の飼育数がそれを上回ったという二つのデータを並べ、要するに何が起きているのかと問えば、ペットが家族の一員になったという結論に届きます。そこからペットを子どものように扱う商売が見えてきます。その先にあるのが構想で、荒れ果てていたロンドンのドックランズに第二の金融街を思い描いたカナリー・ワーフの開発が、例として挙がります。

日本の会社員が読むときの留保

本書は経営者やコンサルタントの目線で書かれています。会社員がそのまま当てはめると、ずれる点が三つあります。

一つ目は事例の古さです。本書は著者の旧著『「0から1」の発想術』に手を入れて2018年に出たもので、カメラ付き携帯やモバオク、シャープやソニーのつまずきは、いま読むと一世代前の話に見えます。UberやAirbnbも、新しい仕組みというより定着した大企業になりました。情報の差には賞味期限があると本書も認めているとおり、紹介された差の多くはすでに埋まっています。事例は答えとしてでなく、型の使い方を示す見本として読みたいです。

二つ目は権限の差です。中抜きや事業の売却、異業種の仕組みの移植は、会社の方針を決められる立場でなければ実行できません。一般の会社員が使えるのは、RTOCSや「要するに何か」の問いのように頭の中で完結する型で、まずは提案の質を上げるところまでと考えたほうが現実的です。

三つ目は失敗の扱いです。著者は任天堂の山内溥の言葉として「1勝14敗でもやっていける」(本書より)を引き、挑み続けることを勧めます。ただ、減点方式の評価が残る職場では、14敗を個人で背負う余裕は小さいです。0から1を本気で試すなら、失敗しても評価に響きにくい小さな場、たとえば部署内の試行や社外の勉強会を先に確保しておきたいです。

紹介される成功例が、結果を見てから選ばれている点も割り引いて読む必要があります。それでも、自社の技術から考え始めていないか、競合と同じ物差しで比べていないかという問いは、事例が古びても使えます。次の企画会議では、案を評価する前に、使い手が最後に何を得たいのかを一文で書き出してみてほしいです。

合わせて読みたい

『アナロジー思考』細谷功 遠い業界の仕組みを自分の問題に借りてくる考え方を、手順として分解した本です。本書の「横展開」を自分で使えるようにするための一冊です。

『メタ思考トレーニング』細谷功 一段上から問題を眺め直す練習を、34の問いで積む本です。「要するに何か」と問う型を、日々の仕事で鍛えたい人に向きます。

『実践 スタンフォード式 デザイン思考』ジャスパー・ウ 使い手の身になって課題を見つける手順を、ワーク形式で学べます。本書の目的関数と感情移入を、具体的な進め方に落とすときに役立ちます。

明日の1アクション

いま抱えている課題を一つ選び、二つ上の役職の人ならどう決めるかを3行で書いて、今週の上司との面談か定例に持っていく。


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