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『神メンタル 「心が強い人」の人生は思い通り』星渉|「強い心」は性格ではなく、作れる

キャリア・働き方 ✍ 星渉
約8分で読めます

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『神メンタル 「心が強い人」の人生は思い通り』
目次

新しいことに挑戦しようとすると、決まって不安になる。あなたが弱いからではありません。

それは、あなたの脳が「死なないこと」を最優先にして、変化を全力で止めにきているからです。

『神メンタル』は、この脳のクセを逆手に取る本です。著者は延べ8000人以上を見てきた星渉さん。気合や根性ではなく、脳科学と心理学で「強い心」を作る方法を、一本の公式に落とし込んでいます。

本稿では、その公式の中身を出し惜しみせずほどき、どこが効いて、どんな人に刺さるのかを、編集部の目線で読み直していきます。

図解

「メンタル=自己評価」という割り切り

本書の出発点は、拍子抜けするほどシンプルです。心(メンタル)とは「自己評価」のことだ、と星さんは言い切る。自己評価とは、自分にどれくらいの価値があるかを脳が下している判断のこと。

これを「目標を達成した未来の自分」に書き換えてしまえば、現実が後から追いついてくる——というのが本書の骨格です。強い心を持つ人は、今の自己評価ではなく「未来の自己評価」で今を生きている、と。

この定義の良さは、「メンタルが弱い」を性格の問題から切り離してくれる点にあります。性格は変えにくいが、評価のものさしなら付け替えられる。つまり「心が強い人」は生まれつきの選ばれた人ではなく、自己評価という設定を書き換えた人だ、という話になる。

読者を責めない構えになっているわけです。スピリチュアルな引き寄せと違うのは、なぜそうなるのかを海馬や心理法則のレベルまで分解して語るところ。

満月に祈るのではなく、メカニズムで説く。だから再現できる、と本書は主張します。ここが類書との一番の差だと感じました。

そして本書を貫くのが、こんな公式です。

現実(未来)= 目的地 × 手段 × メンタル

この3つのうち、星さんが「最重要」と断言するのが、最後のメンタル=自己評価です。面白いのは「手段」の扱いで、多くの人が一番悩む「どうやって実現するか」は、実は自分で考えなくていい、と言い切る。

目的地が明確でメンタルが整えば、手段は自動的に見つかる、という立場です。星さんいわく、99.9%の人は目標設定の仕方を間違えている。掛け算である以上、メンタルがゼロなら結果もゼロになる——だから手段の前に、まず自己評価を整えよ、というのが全体の流れになります。

手段探しに時間を溶かしてきた人ほど、この順番の入れ替えは効くはずです。

「変われない」の正体を、敵として名指しする

本書がうまいのは、変化を邪魔する仕組みに一つずつ名前を付けていくところです。正体不明の不安は怖いが、名前のついた敵は対処できる。

筆頭が「心理学的ホメオスタシス」。脳が「今のままで生きられているのだから、変化しないでおこう」と判断し、不安や”できない理由”を次々に生み出す働きです。

人間の脳が最も大切にするのは死なないこと。新しい挑戦は未知のリスクだから、全力で元の場所へ引き戻そうとする。ここに、損を得の2倍重く感じる損失回避の法則、持ち物を過大評価する保有効果、過去に費やした時間やお金に縛られるサンクコスト、今のままが正しいという証拠ばかり集める確証バイアスが重なります。

どれも、変わらないことを選ばせる力として整理される。挫折を「意志の弱さ」で片づけてきた人にとって、これは免罪符でもあり、地図でもあります。

ここで星さんが悲観に流れないのが良い。不安が湧いたとき、「これはホメオスタシスが働いているだけだ」と名前を知っていれば、冷静に一歩を踏み出せる。敵の正体を知ることが、変化の第一歩だ、と。

もう一つの仕掛けが「スコトーマ(心理的盲点)」です。人間は自分が重要だと認識した情報しか見えず、それ以外は目の前にあっても認識から消える。赤い車を意識した日に街じゅうの赤い車が目に入る、あのカラーバス効果ですね。

脳は1秒に約2000個の情報を感知しながら、同時に認識できるのはたった8〜16個。残りの圧倒的多数は無意識にふるい落とされる。つまり自己評価が低ければ、チャンスも手段も「見えない情報」のまま素通りしていく。逆に評価を「未来の自分」に書き換えると盲点が外れ、今まで見えなかった選択肢が急に目に飛び込んでくる。

「手段は自動的に見つかる」の正体は、この脳の検索機能のことなのです。理屈で説明してくれるから、引き寄せ系が苦手な人でも飲み込みやすいはずです。

「未来の自分」を脳に先に仕込む

では、どうやって自己評価を書き換えるのか。入口は「未来体験シート」、つまり5年後・3年後・1年後・半年後の自分を完了形で書くことです。ルールは3つ。

「年収を上げたい」ではなく「年収が上がった」と完了形で書く。誰が見ても達成とわかる測定可能な形にする。今の能力や状況は一度忘れて制限をかけない。

星さんは、目的地が曖昧な状態を「行き先の決まっていない飛行機」にたとえます。「南の方へ」では着けない、「ハワイのホノルル空港まで」と決めて初めて脳のナビが起動する、と。

ただ書くだけでは足りず、本書は理想を象徴する画像を30枚ほど集め、毎日1回見ることを勧めます。私たちが得る情報の87%は視覚から来る。文字より画像のほうが海馬に強く届き、繰り返し見せることで脳が「これは生死に関わる重要情報だ」と勘違いし、長期記憶に焼きつく、という理屈です。

視覚に振り切るあたりに、星さんの実務家らしさを感じます。

具体例も鮮烈です。ロンドン五輪の村田諒太選手は、本番前から冷蔵庫に「金メダルを獲ることができました。応援ありがとうございました」という完了形の貼り紙をしていた。

未来の自分で生きるをそのまま実践し、日本人には無理と言われたミドル級で48年ぶりの金を獲った。ハーバード大学の調査では、目標を紙に書いていた3%の学生が、10年後に残り97%の10倍の年収を得ていたといいます。

地味な「書く」という行為に、これらのエピソードが体温を与えてくれます。

一番のひっくり返しは「モチベーション」をめぐる主張

本書で膝を打ったのは、常識を真っ向から否定する一節です。普通、目標達成には「やる気を高めること」が大事だと言われる。星さんは正反対に、モチベーションは絶対に上げてはいけない、と言う。

理由は単純で、上がったものは必ず下がるから。やる気に頼ると、切れた瞬間に行動も止まる。やる気が出た日だけ動ける人が抱える根本問題を、一行で言い当てています。

では何を上げるのか。答えは「基準」です。基準とは、「目標を達成した未来の自分なら、これくらいは当たり前」という行動の基準値のこと。やる気を奮い立たせるのではなく、未来の自分の「普通」を今の普通にしてしまう。ここで自己評価はさらにこう分解されます。

自己評価 = 自己肯定力 × 自己効力感

どんな自分も認める力と、自分はできると実感する感覚。後者は「自分で決めたことができた」という小さな成功を積むことでしか育たない。自信を生まれつきの才能扱いせず、後から作れるものとして扱うところに一貫性があって好感が持てます。

未来の自分で生き始めると、今の現実に「違和感」が訪れる、という指摘も印象的でした。星さんはこの違和感こそ自己評価が書き換わった証拠であり、実現が始まる前兆だと言う。

著者自身、無収入の独立直後に200平米超の理想のマンションを内見しに行き、自分の狭いアパートに強烈な違和感を覚えた。その違和感が原動力になって現実が動いた、と。

思い込みが崩れる力も侮れません。かつて人類に1マイル4分は不可能と言われていたのが、1954年にロジャー・バニスターが破ると、わずか1年で23人が4分を切った。

不可能という自己評価が崩れた瞬間、世界の景色が変わったのです。

三日坊主は意志ではなく、設計で防ぐ

習慣化のコツも、意志ではなく設計の問題として語られます。新しい習慣が続かないのは、脳が「順化」して飽きるから。どんな刺激も繰り返すうちに反応が鈍るので、新しい習慣を単独で始めると脳が飽きて止まる。

解決策はシンプルです。新しい習慣を、すでに毎日やっている習慣に付け加える。「朝カーテンを開けたら画像を1枚見る」「エレベーターに乗ったら目標を口に出す」。

歯磨きのように無意識でやっている行動にくっつければ、努力なしで定着する。もう一つの技が「ちょっとだけやる」。面倒なら「画像を1枚だけ」「腹筋を1回だけ」とハードルを極端に下げる。

すると淡蒼球という部位が刺激され、やり始めると自然に続いてしまう。やる気は行動の前ではなく後から来る、というわけです。意志力に頼らないこの設計思想は、行動科学の知見とも素直に噛み合っています。

書き換えを加速させるのが「アファメーション」、自分への肯定的な宣言です。本書はやり方を5つに整理します。実現確率50%くらいの現実的な目標にする。

肯定形で言う(「タバコを吸わない」ではなく「ノンスモーカーになった」)。現在完了形で言う。実現した情景や感情まで臨場感を持つ。朝と夜、30秒を毎日繰り返す。

ここでも手書きが効き、キーボード入力より目標達成率が42%も高いという。キーボードの指の動きが8種類なのに対し、手書きは1万種類。脳への刺激量が桁違いだからです。

逆に捨てるべき言葉もあります。「でも」「だって」「わからない」「難しい」「できない」。この5つは一生使わないと決める。口にした瞬間、脳は思考を止めて「できない理由」を自動的に探し始めるからです。

言葉は、脳に渡す検索ワード。環境も同じ働きをし、すでに目標を実現している人に囲まれると実現のハードルが下がる。著者も起業当初、クライアント0人で集まる勉強会をやめ、結果を出している人とだけ付き合うように変えて流れが変わったと書いています。

神メンタルとは「反射」のことだった

最後に、タイトルの「神メンタル」の正体です。それはブレない強靭な精神力のことではありません。どんな出来事からも、考える前に反射的に「よい意味」を見いだせる人のこと——これが本書の定義です。

悪いことが起きても、批判されても、反射的に「ラッキー!」「ツイてる!」「ありがとう!」と口に出すと、脳が勝手に「なぜラッキーなのか」を探し始め、心が折れずに動き続けられる。

この意味づけを心理学でフレーミングと呼びます。松下幸之助が採用面接で必ず「あなたはツイてる人ですか?」と尋ねた逸話が添えられていて、神メンタルが採用基準ですらあったことが分かります。

不安も無理に消そうとせず「不安になっていい」「緊張してもいい」と認めるほうが、かえって早く鎮まる。悩みは頭の中で考えると無限にループするので、紙に書き出して客観視する。

空のイスにもう一人の自分を座らせて相談する「エンプティ・チェア」や、紙の上で「相談する自分」と「アドバイスする自分」の会話を書く方法で、自分を一段上から眺める。

この客観視がメタ認知です。イチロー選手も「斜め上にもう1人の自分がいて見ている」と語っていました。

正直に言えば、海馬やスコトーマの説明を回りくどく感じる人、理屈抜きの作業手順だけが欲しい人には前置きが長いかもしれません。それでも、自己評価という一点で全体を貫く設計は強い。

お金やモノが人をすぐ幸せにしないことも本書は正直で、年収が300万から600万に倍増しても上がる幸福度はわずか9%、人はすぐ慣れる「富の限界効用」が働くと書く。

だからこそ、自分だけの幸せの軸を持て、と。読み終えてから一番じわじわ効いてくるのが、この「神メンタル=反射」という定義づけでした。

まずは一つだけ。あなたの目標を、完了形で紙に書いてみてください。未来の自分が、もうそこにいる前提で。

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「変われない」の正体 本書の「心理学的ホメオスタシス」と同じ問いを扱った一本。なぜ脳が変化を嫌うのかを腹落ちさせてから神メンタルを読むと、未来体験シートが効く理由まで一直線でつながります。

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