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『Learn Better』アーリック・ボーザー氏|蛍光ペンと読み返しは、ほぼ意味がなかった

学習・インプット
約4分で読めます

教科書を繰り返し読む。大事なところに蛍光ペンを引く。多くの人が信じているこの勉強法、研究では効果がほとんど確認されていません。

私もずっと線を引く派でした。なぞった分だけ頭に入る気がしていた。でも本書を読んで、あれはただの作業だったと突きつけられました。

著者のアーリック・ボーザー氏は、教育研究の専門家です。膨大な認知科学の論文を読み込み、本当に効く学び方を体系としてまとめ直したのが本書『Learn Better』です。

面白いのは、著者自身が小学校時代に「学習障害」と判定され、特別支援学級に通っていたこと。将来は料理人になるしかないとまで言われた人が、学び方を変えただけで成績を伸ばし、名門大学に合格しています。才能の話ではなかった。学び方の話だったわけです。

「努力の量」ではなく「学び方の方向」を疑う本

本書の主張は、驚くほどシンプルです。学習は生まれつきの才能ではなく、誰でも習得できる体系的なプロセスだ、というもの。

私がこの本を信頼できると感じたのは、主張のひとつひとつに実験データが添えられているからです。たとえば学業成績の何割がメタ認知(自分の思考を客観視する力)で説明でき、IQの寄与はどの程度にとどまるのか――著者はその具体的な数字を挙げて、「頭の良さ」より「学び方の自覚」のほうが効くと示します。その比率を見たとき、私は素直に背筋が伸びました。正確な数値は、本書で確かめてみてください。きっと自分の勉強観が少し揺らぐはずです。

そして著者は、学習のゴールを暗記には置きません。

学習の目的はある事実や概念についての考え方を変えることであり、学習にあたってめざすのは思考の体系を学ぶことなのだ。

覚えることではなく、世界の見え方をつくり替えること。この立場が本全体を貫いています。本書はこの考えのもと、学習を6つのステップに分解していくのですが、ここでその全工程を並べることはしません。代わりに、私がいちばん効いた一点だけを紹介します。

4回読むより、1回読んで思い出す

本書の核心を一行で言えば、こうなります。学習は、受け取る受動的な作業ではなく、頭を働かせる能動的な「活動」だ。

だから蛍光ペンや読み返しは効きにくい。脳が汗をかいていないからです。逆に効くのが「検索練習」、つまり記憶から情報を引っ張り出す練習です。

ここで本書には象徴的な実験が出てきます。同じ文章を何度も繰り返し読んだ人と、一度だけ読んでから「何が書いてあったか」を思い出す練習をした人。どちらの定着率が高かったか――答えは想像どおりかもしれませんが、その差の大きさは想像を超えてきます。自己テストが学習成果を何割押し上げたか、その数字は本書で確かめてほしい。私はそこを読んで、自分の「読み返し」がいかに自己満足だったかを思い知りました。

検索練習と並んで著者が重視するのが、フィードバックと、適度な苦労です。

優れた学習にコンフォートゾーンはない。

簡単すぎる課題では伸びない。間違いは避けるものではなく、理解を深める入り口だ、と著者は言います。楽な学習ほど身につかないという逆説は、線を引いて満足していた私には耳が痛い指摘でした。

このほかにも本書には、「教えるつもりで学ぶと理解が深まる効果」「点ではなくつながりで覚える類推の技術」「わかったつもりを剥がすメタ認知」「忘却を味方にする分散学習」といった武器が、それぞれ実例とともに用意されています。ファインマンの逸話や、忘却アルゴリズムを使ってクイズ王になった人物の話など、読み物としても面白い。ただ、それらを要約で先に味わってしまうのはもったいない。仕掛けと結論はぜひ本書で受け取ってください。

どんな人に効くか――そして効きにくい人

この本が刺さるのは、努力の量では足りないと薄々気づいている人だと思います。

本もセミナーも読んでいるのに1ヶ月後には何も残っていない。資格のテキストを何周もしているのに点が伸びない。あるいは、部下や子どもの学習をどう支えればいいか迷っている。こうした「方向のずれ」に心当たりがあるなら、本書は実験データという地図を渡してくれます。

一方で、科目別の暗記テクニック集を期待すると肩透かしかもしれません。本書が示すのは原理であって、レシピ集ではないからです。すでに検索練習や分散学習を日々実践している人にとっても、確認以上の発見は少ないでしょう。それでも、自分のやり方の「なぜ効くのか」を言語化したい人には、十分に読む価値があります。

おわりに――学習は「活動」だ

この本を読んで、いちばん効いたのは「学習は活動だ」という一文でした。

線を引く。読み返す。マーカーで色をつける。やった感はあるけど、脳はほとんど働いていない。私の勉強は、長いあいだ「作業」でした。

私たち誰もが、学び方を学ばなければならない。

何を学ぶかより、どう学ぶか。試しに、今読んだこの記事も、5分後にいったん画面を閉じて要点を思い出してみてください。たぶん、半分も出てこない。その「出てこなさ」に気づくところから、本当の学びは始まります。残りの答え合わせは、ぜひ本書で。


合わせて読みたい

『学びを結果に変えるアウトプット大全』樺沢紫苑さん 本書の「検索練習」「教える効果」を、もっと具体的なアウトプット術に落とした一冊。読み返しをやめて思い出す習慣をつくりたい人に響きます。

『読書を仕事につなげる技術』山口周さん 「年間50冊読んでも何も変わらなかった」人へ。本書が説く、読むだけで満足する受動的学習の限界と、ぴたりと重なります。

『新版 思考の整理学』外山滋比古さん 「忘れる」ことを頭の味方にする発想。本書の分散学習や忘却の活用と響き合い、覚え込む学びから解放してくれます。


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