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『医師や薬に頼らない! すべての不調は自分で治せる』藤川徳美|不調の正体は「バランスの良い食事」だった

健康・メンタル ✍ 藤川徳美
約8分で読めます

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『医師や薬に頼らない! すべての不調は自分で治せる』
目次

「毎日バランスよく食べているのに、なんだか疲れやすい」。

その心当たりがある人ほど、この本は危ない一冊です。なぜなら本書は、あなたが「健康的」と信じてきた食事こそが不調の原因だ、と言い切るからです。

精神科医の藤川徳美さんによる『医師や薬に頼らない! すべての不調は自分で治せる』は、うつやパニックから、がん、リウマチ、認知症まで、まったく違う病気の根っこにあるのは同じひとつの状態だと主張します。その状態を、著者は「質的栄養失調」と呼びます。

図解

こんな人に読んでほしい

病院に通って薬も飲んでいるのに、長引く不調が一向によくならない人。原因がはっきりしないまま「歳のせい」「ストレスのせい」で片づけられてきた人に、別の見方を差し出してくれます。

理由もなくイライラしたり、午後になると動けないほど疲れたりする女性。本書は、その背景に「隠れ鉄不足」がある可能性を具体的なデータで突きつけます。

医者任せにせず、自分で知識を持って体を管理したい人。高額なサプリ療法に挫折した人にも、安く始められる現実的な手順が用意されています。

すべての慢性疾患は「同じ原因」から来ている

本書の出発点は、私たちの常識を壊すところにあります。

白米、味噌汁、焼き魚、野菜中心の和食。これがバランスの良い健康食だと、多くの人が信じています。ところが著者は、この食事を続けるとタンパク質やミネラルが足りず、不要な糖質ばかり過剰になると言います。

この状態が「質的栄養失調」です。中身は「糖質過多+タンパク不足+脂肪酸不足+ビタミン不足+ミネラル不足」。食べる量ではなく、栄養の質が崩れている状態を指します。

ここが本書の核心です。長年この状態が続くと、代謝、つまり体内でエネルギーを作る仕組みに異常が起き、それが遺伝子の弱い部分に出る。だから、うつ病もアトピーもリウマチもがんも、現れ方は違っても根は同じだ、というのです。

著者の言葉では、こうなります。

「がん、リウマチ、膠原病、神経難病、発達障害、アトピー性皮膚炎、糖尿病、うつ、パニック、認知症などなど、すべての慢性疾患は同じ質的栄養失調が原因です。」

本書の後半は、まさにこの証明にあてられています。ADHD、アルツハイマー型認知症、リウマチ、白血病。一見すると無関係な病気が、同じ栄養療法で改善した臨床例が並びます。著者はそれを「藤川メソッド」と呼びます。

体の7割はタンパク質、なのに足りていない

では、何から始めるのか。答えは「タンパク質」です。

人間の体は、水分を除くと約70%がタンパク質でできています。生命を維持し、病気を治す自然治癒力を働かせるための、文字通りの材料です。著者は「生命とはタンパク質の動的平衡である」と書きます。

体は常にタンパク質を作っては壊しているので、毎日補い続けなければ追いつかない、という意味です。

必要な量は明確です。健康維持なら1日「体重×1g」が最低ライン。回復を目指すなら「体重×2g」。体重50kgの女性なら、1日100gという計算になります。

ただ、これを食事だけで満たすのはかなり難しい。そこでプロテインの出番です。著者が推奨する規定量は、ホエイプロテイン20g(約60cc)を1日2回。

これは卵6個分のタンパク質に相当します。摂ったタンパク質は数時間で代謝されてしまうため、1回ではなく分けて続けることが効果の条件になります。

プロテインはホエイ(牛乳由来)を選びます。大豆由来のソイは効果が劣る、というのが著者の立場です。根拠として、ホエイの筋タンパク合成率はソイより18〜31%高いという報告が挙げられています。

ここで一つ、優しい補足があります。長年タンパク質が不足してきた人、特に女性は、いきなり規定量を飲むと胃がムカムカしたりお腹を下したりします。これは消化吸収する力そのものが落ちているサインです。その場合は1回5g(15cc)を1日3回から始め、数ヶ月かけて少しずつ増やします。

タンパク質が満たされてくると、面白い変化が起きます。

「タンパク質が満たされていくことで、『甘いものがほしい』『白飯をお腹いっぱい食べたい』という偏った食欲が治まってくるからです。」

糖質をやめられないのは意志が弱いからではなく、タンパク質が足りないからだ、という説明です。

自分のタンパク質が足りているかは、血液検査の「BUN(尿素窒素)」でわかります。10以下は最重度の不足、10〜15は重度、15〜20は軽度から中等度、20以上が理想値。数字で現在地が見えるので、改善も追いやすくなります。

女性の7割が、隠れ鉄不足

プロテインが規定量飲めるようになったら、次は鉄です。特に女性にとって、ここが分かれ目になります。

健康診断のヘモグロビンが正常でも、安心はできません。著者が重視するのは、体内に貯金されている鉄の量を示す「フェリチン」です。ヘモグロビンが正常でもフェリチンが低い「隠れ鉄不足」が、うつやパニック、慢性疲労、イライラの大きな原因になっている、というのが本書の指摘です。

その規模が衝撃的です。日本人女性の20〜49歳で、フェリチン30以下(重度の鉄不足)の人が約70%。フェリチン100以上を示すのは20代で0%、30代で0.3%、40代でわずか1.9%にとどまります。

背景もはっきりしています。日本人の鉄摂取量は1950年から約6分の1に減り、欧米は肉を日本人の3倍ほど食べる、と説明されています。

鉄を食事だけで補うのも非現実的です。ほうれん草だけで必要量を摂ろうとすると、毎日バケツ4杯以上になる。植物に含まれる非ヘム鉄は、肉のヘム鉄に比べて吸収率が10分の1だからです。

そこでサプリですが、著者はヘム鉄ではなく「キレート鉄」を推します。ヘム鉄サプリは高価な割に効きが弱く、フェリチンを上げるのに数年かかる。キレート鉄なら数ヶ月で同等の上昇が見込め、しかも安い。目標はフェリチン100です。

「鉄剤は鉄過剰症になって危険」という不安についても、著者は明確に否定します。経口摂取である限り、体は必要な分だけ吸収し、余りは便で排出するので過剰症にはならない。危険なのは静脈注射のほうだ、というのが本書の立場です。

ATPを増やす「メガビタミン」という考え方

タンパク質と鉄を満たしたら、最後がメガビタミンです。狙いは、生きるためのエネルギーである「ATP(アデノシン三リン酸)」を量産すること。著者の言葉では「ATPが十分ある=元気に過ごせる」となります。

ポイントは、エネルギーの作り方を変えることです。糖質をブドウ糖のまま処理する「解糖系」では、グルコース1個から作れるATPはわずか2個。

ところが、ミトコンドリアで酸素を使って燃やす「好気性代謝」に切り替えると同じ材料から38個、脂肪酸を燃やせば129個ものATPが作れます。同じ食べ物から取り出せるエネルギーが、桁違いに変わるわけです。

この効率の良い代謝を回す補酵素として、著者は「ATPセット」を提示します。中身は、キレート鉄、ビタミンB50、ビタミンC1000、ビタミンE400の4点。さらに粘膜や免疫を強化したい場合は、ビタミンA・D・セレンを足す「アドオンセット」に進みます。

ここで多くの人がつまずく疑問があります。「なぜそんな大量のビタミンが必要なのか」。

理由は二つです。一つは「確率的親和力」という個体差。代謝に必要な酵素と、それを助けるビタミンの結びつきやすさには、遺伝子による差があります。

結びつきにくい体質の人は、代謝を回すために通常の何十倍ものビタミンが要る。もう一つは、長年の栄養失調で「ビタミン依存症」に陥った場合で、通常の100〜1000倍が必要になることもあります。

量の感覚をつかむために、本書はこう例えます。ビタミンC1000にはレモン50個分、ビタミンB50には豚肉5kg分が含まれている。食事でこの量を満たすのは、現実には不可能です。だからこそ「サプリメントは人類の英知の結晶」だと著者は言い切ります。

なお、鉄とビタミンEは互いに吸収を邪魔するので、8時間以上空けて飲む。こうした細かな注意も手順に組み込まれています。

順番を間違えると、効かない

本書がくり返し強調するのが、実践の「順番」です。良かれと思って一気にサプリを始めると、効かないどころか体調を崩します。著者の手順は4ステップです。

ステップ1:高タンパク/低糖質食+プロテイン+鉄 血液検査でBUNとフェリチンを確認し、糖質を減らして肉・卵・チーズを増やす。プロテインは20gを1日2回。プロテインがどうしても用意できないなら、まずゆで卵を毎日5個でも効果が期待できます。

ステップ2:ビタミンB群、ナイアシン、ビタミンC、ビタミンE タンパク質と鉄が満たせてから、ATPセットのビタミン類を加えます。プロテインが規定量飲めないうちは、ここに進みません。

ステップ3:その他の脂溶性ビタミン、ミネラル ビタミンA・D・セレンといったアドオンセットで、抗酸化力と免疫を底上げします。

ステップ4:オプションのサプリメント 慢性疾患の状況に応じて、必要なものを足していきます。

順番を守ること自体が治療の一部だ、という設計になっています。

糖質制限についても同じです。いきなりゼロにするのではなく、タンパク質が満たされて甘いものへの欲求が落ち着いてから減らすほうが、無理なく続きます。著者にとって糖質は栄養素ではなく「栄養ドロボー」。代謝の過程で貴重なビタミンやミネラルを浪費してしまうから、というのが理由です。

なぜ医師は栄養を教えてくれないのか

ここまで読むと、当然の疑問が湧きます。「そんなに効くなら、なぜ病院で教えてくれないのか」。本書はこの問いにも一章を割いています。

著者の答えは二つです。ひとつは、医学教育に栄養学がほとんど含まれていないこと。多くの医師は、栄養で病気を治すという発想自体を学んでいません。

もうひとつが、より刺激的な指摘です。著者は、医学論文の多くが「メガ・ファーマ」と呼ばれる巨大製薬メーカーの資金援助を受けており、内容が偏っていると言います。

製薬会社に都合のいい結果は発表されやすく、ビタミンは安全で効果があるとする論文は掲載を拒まれてきた。その結果、医学界全体に大きな偏り(パブリケーションバイアス)が生まれている、というのです。

「そもそも、臨床医学のエビデンスは科学ではありません。」

著者が信じるのは論文ではなく、実際に治った患者です。理論や引用の寄せ集めより、目の前の患者が元気になったかどうか。その立場が、本書を症例集で締めくくる理由になっています。ここは賛否の分かれるところですが、著者の強い動機がどこから来ているかは、はっきり伝わってきます。

この本との付き合い方

最後に、率直な注意点も書いておきます。私が読んで一番引っかかったのはここでした。

本書が示すビタミン量は、厚生労働省の推奨量や一般的な医学常識を大きく超えています(通常の数百倍という記述もあります)。鉄過剰症やメガビタミンの安全性については、医学界で議論があるテーマです。

著者は薬や標準治療を「製薬業界の利益のため」と強く批判します。だから、かかりつけ医がいる人は方針が対立する可能性が高いと感じました。

だからこそ本書は、体の反応を観察しながら段階的に、自己責任で進めることを求めています。鵜呑みにするのではなく、自分の主治医として判断する。それが本書の流儀です。

それでも、この本が手渡してくれる出発点は明快です。不調をストレスや加齢で片づける前に、まず食事とタンパク質を見直す。そして自分の数値を知る。著者の言葉で締めくくります。

「あなた自身が、あなたの医師なのです。」

まずは次の食事で、糖質を少し減らして卵を一つ足すところから。それが、自分を主治医にする最初の一歩になります。


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「カロリーを減らしても、痩せない。」 カロリーという「量」の常識を疑う点で、本書の「質的栄養失調」と通じます。食べる量ではなく中身を見直す、という発想を補強してくれます。

「なんとなく不調なあなたへ」 原因のはっきりしない不調に悩む人へ向けたコラム。本書のターゲットそのものなので、栄養の話に入る前の入口として読むと、自分ごととして響きます。


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