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うまくいったやり方から捨てなさい 椎原崇

『うまくいったやり方から捨てなさい』椎原崇|あなたをここまで連れてきたものは、あそこまで連れていかない

キャリア・働き方 椎原崇
約8分で読めます

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この本の全体像
『うまくいったやり方から捨てなさい』の図解

本の結論

次の段階に進むために手放すべきは、失敗したやり方ではなく、うまくいったやり方のほうです。

明日やること

続けている習慣を1つ選び、「喜びでやっているか、もったいないからやっているか」を自問して手放すか決める

効く悩み

  • これまで結果を出してきたやり方を強めているのに、最近は空回りしている感覚が消えない
  • 部下に任せた方が早い場面でも、つい自分が口や手を出してしまい現場が育たない
  • 資格や勉強を重ねているのに「まだ足りない」という焦りだけが増えていく

読むべき人

  • 転職・独立・昇進など人生の節目にいて、正体不明のもやもやを抱えている人
  • 自力で成果を出してきた分、人に任せることへの苦手意識が強いリーダー

読まなくていい人

  • 売上を伸ばす具体的な戦術やスキルの習得法を求めている人(本書は行動の仕組み化ではなく心の持ち方が主題)
  • 占いや精神論に懐疑的で、フェーズ論や感情の擬人化のような比喩表現に抵抗がある人
目次

スターバックスで「Lサイズを」と頼んで、店員に首をかしげられたことはないだろうか。ショート、トール、グランデ、ベンティ。他の店では当たり前に通じる言葉が、そこでは通じません。少し恥ずかしいような、居心地の悪い気分になります。

著者の椎原崇さんは、この感覚を「スタバの洗礼」と呼びます。そして人生のステージが切り替わる瞬間にも、これとそっくりな戸惑いが起きるといいます。これまで自分を押し上げてきたはずのやり方が、ある時期から嘘のように機能しなくなります。

もがくほど、かえって前に進めない感覚。この不快感は実力不足の証拠ではなく、立っている場所のルールが更新された合図なのだ、という読み替えから本書は始まります。

図解

「捨てる」対象は失敗ではなく、うまくいったやり方そのもの

次の段階に進むために手放すべきは、失敗したやり方ではなく、うまくいったやり方のほうです。椎原さんは1981年生まれ。学校教育の枠から外れてパチンコ店に居場所を見出し、そこで培った勝負勘を武器に飲食業の経営者となり、やがて複数の事業を持つオーナーへと立場を変えてきた人物です。

学歴も前職も長らく人に明かさずにいましたが、あえて自分から公言するようにした途端、仕事の流れが目に見えて変わったという経緯が示すとおり、本書の主張自体が著者自身の実践から来ています。

その椎原さんが、お金にも仕事にも人間関係にもストレスなく生きている人たちを観察して見つけた共通点はひとつだけでした。彼らはそろって「捨てる人」だった、という発見です。

世の自己啓発書の多くはスキル・知識・人脈といった「何を足すか」を語ります。本書はその逆を突きます。その言い切りが独特です。

成長のとらえ方も独特で、大きなさなぎへと膨らんでいく延長線上の話ではなく、まったく別の生き物である蝶へと姿を変える話として描かれます。輪郭そのものを組み替える変化には、身につけたものを一度手放す軽さが求められるという発想です。

手放せない理由を、本書は意志の弱さのせいにしません。人は「新しく得られるかもしれない良いもの」より「今持っているものを失う恐怖」を強く避けるようにできているからです。

物差しは一つだけで、今のその行動を続ける動機が喜びなのか「もったいない」なのかを、自分に問いかけてみればいいのです。もったいないという感覚の正体は、結局のところ損失への抵抗感であり、そこに喜びが伴っていない行動は、すでに今の自分には合わなくなっている可能性が高いです。

いきなり大きなものを手放す必要はない、というのも本書らしい配慮です。いつもと違う通勤路を歩きます。普段選ばない色を選びます。その程度の小さな「捨てる練習」を重ねて、手放しても壊れないという感覚を先に脳に覚えさせます。

もう一つ、律儀な人ほど響くのが過去の発言との向き合い方です。幼い頃に苦手だった食べ物を大人になって好きになっても誰も咎めないのに、人生の岐路となると、かつての決断を撤回してはいけないと自らを縛りつける人が途端に増えます。

方針を変えたことは、成長した動かぬ証拠として肯定的に読み替えるべきだと本書は説きます。

「嫌だ」と「怖い」を仕分ける、判定のセンサー

感情を「嫌だ」と「怖い」に仕分ければ、動くべきかどうかが判定できます。捨てて余白ができたら、次に何を入れるか。ここで渡されるのが感情の仕分け方です。「嫌だ」は自分の尊厳を脅かすもので、全力でやらなくていいサイン。

「怖い」は本心では挑みたい気持ちがあるのに、未経験ゆえに腰が引けているだけの状態で、むしろ一歩踏み出す価値があるサインだといいます。見分け方が愉快で、本気で嫌がっている人は真顔で「無理だから」と言うのに対し、怖がっている人は悲鳴を上げながらもどこか楽しそうにしている、とたとえられます。

椎原さん自身のエピソードが具体的です。知人から翌日に著名な資産家を訪ねると聞かされ、自分も一緒に行きたいと思いながら、断られる可能性を思うと切り出せずにいました。

同じ場に居合わせた2時間半のうち、実に2時間20分をぐずぐずと迷うことに費やし、残りわずかな勇気をかき集めて「連れて行ってもらえないか」と口にできたのは、終盤に差しかかってからでした。

答えは二つ返事の快諾で、そこを境に内面も仕事も人づきあいも一気に動き出したといいます。人生を変えるひと言を発するまでに2時間20分を要した、という時間の使い方の生々しさが、この判定法に説得力を与えています。

「やりたいことが分からない」という相談についても、本書は探し物のアプローチ自体を退けます。人の中には複数の人格めいたモードが同居していて、そのときどのモードにいるかによってやりたいことは自然に変わります。

だから今日と明日でやりたいことが違っていて当たり前だ、という前提に立つだけで悩みの形が変わってきます。

停滞から抜け出せない理由についても、本書は意志ではなく環境に答えを求めます。望む結果が当たり前になっている人たちの輪の中に身を置くほうが、自力でコンフォートゾーンを破ろうとするより早いです。

人生には波があり、次の5つの時期がサイクルとして巡っているとも説明されます。

今のフェーズに合わない行動を無理に続けているだけで、消耗の多くは説明がつくという視点は、頑張っているのに報われない感覚に心当たりがある人ほど刺さるはずです。

進みたいのに動けない、という板挟みについても本書は独特の解釈を示します。相反する二つの気持ちは、たいてい根っこの願いが同じで、対立しているように見えるだけの「ダミー」だといいます。

ある事例では、家族と離れて自由に生きたい気持ちと、家族のそばにいて安心させたい気持ちを、それぞれ人格のように扱って掘り下げたところ、どちらの奥にも「自分らしく自主性を持って生きたい」という同じ願いが見つかりました。

共通の目的に気づいた瞬間、綱引きは止まったといいます。

「スキルアップは逃げ」という一節の真意

スキルアップは、今の自分では受け入れてもらえない恐れから目をそらす逃げ場になりえます。本書でもっとも刺さる読者が多いのが、この主張でしょう。知人の実業家から椎原さんが言われたという「スキルアップは逃げだ」という言葉が出発点になります。

誤解しないでほしいのは、本書がスキルそのものを敵視しているわけではない点です。技を極める過程は生きる喜びの一つであり、事業を支える基盤にもなりえます。

槍玉に挙げられているのは目的の設定の仕方で、収入を伸ばしたいという願いに対して、技術力の向上は必ずしも近道にならないと本書は指摘します。

言いたいことの核心はこうです。今の自分のままでは受け入れてもらえないという恐れから目をそらすため、資格取得や講座通いに逃げ込んでしまいます。準備がまだ足りない、経験がまだ浅い。

そうした思い込み自体が、飾らない自分で勝負する怖さを先延ばしにするための言い訳になっているという指摘です。どれだけ多くを学んでも、表現や実践に移した分しか身についた実感が持てないという一文も痛いです。

日々発信を続ける人とインプットだけを続ける人とでは、数年単位で埋めがたい差がつくと本書は続けます。

では何を武器にするか。答えは、他人から見れば面倒そうなのに自分だけは苦もなく続けてしまうことの中にあります。誰に命じられるでもなく何年も続いている習慣、無条件にテンションが上がる小さな行為。

そうした当たり前になりすぎて自覚しにくい行動の中に、その人固有の土俵が眠っています。厄介なのは、器用にこなせる人ほど「やらないことを決める」のが苦手で、他人の土俵にまで上がって消耗しがちなことです。

得意な領域以外からはさっさと降りる、という引き算が、結果として土俵をくっきりさせます。

すべての人に好かれようとする完璧主義についても、本書は容赦がありません。誰からも嫌われない料理など存在しないように、万人受けを狙うほど、肝心のファンからも支持を失います。

全員に薄く好かれる代わりに、自分を好きな人にまっすぐ好かれる方を選びます。捨てるべきはコントロールへの執着の方だ、という結論です。椎原さん自身、中卒であることを長年隠していましたが、あえて自虐として公言するようになってからは、隠すために使っていたエネルギーから解放されただけでなく、その経歴そのものにファンがつくようになったといいます。

欠点は克服する対象ではなく、ブランドの素材にもなりうるという実例です。

とことん受け取る、という最後のサイクル

手放して預け、分け与え、自分にも許すことが、次のサイクルを動かします。最後に置かれるのが、受け取る側の話です。椎原さんが賭け事の世界から飲食業へと軸足を移したばかりの頃は、自分が誰よりも現場で汗をかかないと店は立ち行かないと信じ込んでいました。

ところが思い切って実務の采配をスタッフに預けてみると、現場は予想を上回る勢いで動き出し、経営は目に見えて上向きました。経営者が四六時中顔を出して指示を出すこと自体が、働き手の主体性とやりがいを奪っていたのだといいます。

「うまくいくやり方を捨てることは、怖くない。まだ捨てたことがないから怖いだけ。」

同じ発想は競合との関係にも及びます。パチプロ時代は「あの人に勝たせたくない」という敵対心を抱いていましたが、先輩から情報を分け合うほうが結局は得だと諭され、良い情報を独り占めしないようにしたところ、以前よりずっと勝てるようになったといいます。

奪い合うより分け与えるほうがリターンが大きい、という実感です。

自分を後回しにして差し出す貢献は、いずれどこかで見返りを求める気持ちに変わりやすいです。周りの人には財布も時間も気前よく使うのに、自分自身のためとなると「贅沢だ」とブレーキをかけてしまう人ほど、この順序を組み替える意味は大きいです。

高級ホテルで紅茶を飲む、気になっていたマッサージを受けてみる。その程度の甘えを、まず自分に許してみましょう。

できなかったことで自分を責めるのをやめ、自分に向ける態度を少しだけ優しくすること。それが、他力を受け取り価値を世に還元していくための土台になるといいます。

読み終えて残るのは、足りないから頑張るという発想への静かな疑いです。停滞しているとき、多くの人はスキルや実績や根性が足りないと考えます。本書はその足し算をいったん止めさせ、むしろ持ちすぎているのではないかと問い直します。

今、あなたが「もったいない」と感じて手放せずにいるものは何でしょうか。

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暮らしの引き算、極端な手放し方、学び直しの前提。関連する3本を挙げておきます。

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新しく学ぶより、いったん捨てるほうが難しい 資格取得や勉強を続けても満たされないと感じている人向けの一本。新しい知識を足す前に、古い成功体験をどう手放すかを扱っています。

明日の1アクション

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