10年目の停滞は、能力ではなく役割の問題
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仕事はできるようになった。評価も悪くない。それなのに、これでいいのかという感じが消えない。
社会人10年目前後に、この状態はよく起きます。
河野英太郎さんは『社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ』で、この時期をキャリア思春期と呼びます。知識やスキルが身についた分だけ、他者との比較やこの先への不安が増える時期です。
そして本書が示すのは、この停滞感が能力の頭打ちではないという見立てでした。
成長は直線ではなく、階段でできている
本書によれば、中堅社員の成長の軌跡は直線ではありません。踊り場を伴う階段状です。
だから、仕事にストレスを感じなくなる「慣れ」は、健常なサインでもあります。伸び悩んでいるように見えるのは、階段の平らな部分にいるからです。
問題はその先にあります。放置すると、コンフォートゾーンに取り残されて退化する。
そのタイミングの目安も具体的です。同じ仕事を3年続けたら、4年目は一歩踏み出す時期だと本書は書きます。
10年目の停滞は、10年かけて溜まったものではなく、3年サイクルを2回か3回、動かずに過ごした結果かもしれません。
動かすべきなのは、能力ではなく役割のほう
では何を変えるのか。本書が挙げるのはストレッチアサインメントです。
現在の知見が活かせる業務範囲の中で、役割だけを変える。プレイングマネージャーやプロジェクトリーダーへの抜擢がその例です。
新しい分野に移るのではなく、同じ場所で立ち位置を変える。ここが、この本の実務的なところだと思います。
そのためには、マネジメントに対する見方も変える必要があります。本書は、マネジメントは人の価値を決めるものではなく、単なる役割に過ぎないと言い切ります。
そして究極の目標は、自分がいなくても回るチームを作ることだ、と。
昇進を偉さとして捉えているうちは、役割の変更が損得の話になってしまいます。
誰を評価者だと思っているかで、10年後が変わる
もうひとつ、本書が繰り返す指摘があります。評価者とライバルの再定義です。
社内の上司や同僚を評価者やライバルと見なしていると、行き着くのは社内政治と足の引っ張り合いです。
本書の主張は明快で、真の評価者はお客様であり、ライバルは競合他社である、というもの。
同じ方向の話は、村上臣さんの『転職2.0』にもあります。同書は、ヤフー元社長の宮坂学さんが社員に語っていた「自分にとっての幸せが最大になるように、自分自身の経営者になること」という考え方を紹介しています。
社内の順位を上げることと、市場での価値を上げることは、途中まで同じ道に見えます。ただ、10年も走れば別の場所に着きます。
明日からできること
誤解:10年やって誇れる仕事がないのは、遅れている証拠 → 本書は、たった10年で人に誇れるような仕事を持てる人はほんの一握りで、20年にひとつでも立派だと書いています。
著者自身、人生30年の中で没頭体験は2回しかなかったそうです。平均すると15年に1回になります。
孔子は15歳で学問を志し、40歳まで惑い続け、50歳でやっと天命を知りました。焦る根拠のほうが、実は薄い。
正しいアプローチ:やりたい仕事を、しつこく口に出しておく → 著者はIBM在職中、やりたい仕事が3つあり、事あるごとに上司や人事部長に伝え続けました。結果、3つすべてを実現しています。
意思決定者の頭の片隅に自分を焼き付ける。そういう表現をしています。
異動や抜擢は、たいてい誰かが誰かを思い出した瞬間に決まります。思い出してもらえる状態を作っておくのは、自分にしかできない仕事です。
もうひとつ。会社や経営への疑問が出てきたら、それは視座が高まったサインです。ただし、愚痴や評論で止めると、そこから先には進みません。
ルー・ガースナーは、企業変革において人は4つに分かれると書きました。変化を起こす人、巻き込まれる人、見守る人、気づきすらしない人です。
いまの自分がどれかを言葉にしてみる。それだけで、次にやることが変わってきます。
おわりに
10年目の停滞を、能力の問題として扱うと、対策は勉強することになります。
でも本書を読むかぎり、動いていないのは能力ではなく役割のほうでした。
同じ場所で、同じ立ち位置のまま、上手になっただけ。だとすれば、次に変えるものははっきりしています。
この記事で参考にした本
『社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ 若手でもベテランでもない中堅社員の教科書』河野英太郎 → キャリア思春期、階段状の成長、ストレッチアサインメント。中堅特有の停滞感を、能力ではなく役割の問題として扱っている。
『転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール』村上臣 → 自分自身の経営者になるという視点。社内評価と市場価値の違いを、転職市場の側から補ってくれる。
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