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ブクドリ | BOOK DRIP

10年目の停滞は、能力ではなく役割の問題

約3分で読めます キャリア・働き方
目次

仕事はできるようになった。評価も悪くない。それなのに、これでいいのかという感じが消えない。

社会人10年目前後に、この状態はよく起きます。

河野英太郎さんは『社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ』で、この時期をキャリア思春期と呼びます。知識やスキルが身についた分だけ、他者との比較やこの先への不安が増える時期です。

そして本書が示すのは、この停滞感が能力の頭打ちではないという見立てでした。

成長は直線ではなく、階段でできている

本書によれば、中堅社員の成長の軌跡は直線ではありません。踊り場を伴う階段状です。

だから、仕事にストレスを感じなくなる「慣れ」は、健常なサインでもあります。伸び悩んでいるように見えるのは、階段の平らな部分にいるからです。

問題はその先にあります。放置すると、コンフォートゾーンに取り残されて退化する。

そのタイミングの目安も具体的です。同じ仕事を3年続けたら、4年目は一歩踏み出す時期だと本書は書きます。

10年目の停滞は、10年かけて溜まったものではなく、3年サイクルを2回か3回、動かずに過ごした結果かもしれません。

動かすべきなのは、能力ではなく役割のほう

では何を変えるのか。本書が挙げるのはストレッチアサインメントです。

現在の知見が活かせる業務範囲の中で、役割だけを変える。プレイングマネージャーやプロジェクトリーダーへの抜擢がその例です。

新しい分野に移るのではなく、同じ場所で立ち位置を変える。ここが、この本の実務的なところだと思います。

そのためには、マネジメントに対する見方も変える必要があります。本書は、マネジメントは人の価値を決めるものではなく、単なる役割に過ぎないと言い切ります。

そして究極の目標は、自分がいなくても回るチームを作ることだ、と。

昇進を偉さとして捉えているうちは、役割の変更が損得の話になってしまいます。

誰を評価者だと思っているかで、10年後が変わる

もうひとつ、本書が繰り返す指摘があります。評価者とライバルの再定義です。

社内の上司や同僚を評価者やライバルと見なしていると、行き着くのは社内政治と足の引っ張り合いです。

本書の主張は明快で、真の評価者はお客様であり、ライバルは競合他社である、というもの。

同じ方向の話は、村上臣さんの『転職2.0』にもあります。同書は、ヤフー元社長の宮坂学さんが社員に語っていた「自分にとっての幸せが最大になるように、自分自身の経営者になること」という考え方を紹介しています。

社内の順位を上げることと、市場での価値を上げることは、途中まで同じ道に見えます。ただ、10年も走れば別の場所に着きます。

明日からできること

誤解:10年やって誇れる仕事がないのは、遅れている証拠 → 本書は、たった10年で人に誇れるような仕事を持てる人はほんの一握りで、20年にひとつでも立派だと書いています。

著者自身、人生30年の中で没頭体験は2回しかなかったそうです。平均すると15年に1回になります。

孔子は15歳で学問を志し、40歳まで惑い続け、50歳でやっと天命を知りました。焦る根拠のほうが、実は薄い。

正しいアプローチ:やりたい仕事を、しつこく口に出しておく → 著者はIBM在職中、やりたい仕事が3つあり、事あるごとに上司や人事部長に伝え続けました。結果、3つすべてを実現しています。

意思決定者の頭の片隅に自分を焼き付ける。そういう表現をしています。

異動や抜擢は、たいてい誰かが誰かを思い出した瞬間に決まります。思い出してもらえる状態を作っておくのは、自分にしかできない仕事です。

もうひとつ。会社や経営への疑問が出てきたら、それは視座が高まったサインです。ただし、愚痴や評論で止めると、そこから先には進みません。

ルー・ガースナーは、企業変革において人は4つに分かれると書きました。変化を起こす人、巻き込まれる人、見守る人、気づきすらしない人です。

いまの自分がどれかを言葉にしてみる。それだけで、次にやることが変わってきます。

おわりに

10年目の停滞を、能力の問題として扱うと、対策は勉強することになります。

でも本書を読むかぎり、動いていないのは能力ではなく役割のほうでした。

同じ場所で、同じ立ち位置のまま、上手になっただけ。だとすれば、次に変えるものははっきりしています。


この記事で参考にした本

『社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ 若手でもベテランでもない中堅社員の教科書』河野英太郎 → キャリア思春期、階段状の成長、ストレッチアサインメント。中堅特有の停滞感を、能力ではなく役割の問題として扱っている。

『転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール』村上臣 → 自分自身の経営者になるという視点。社内評価と市場価値の違いを、転職市場の側から補ってくれる。


合わせて読みたい

「一番」をやめた人から、代わりがきかなくなる 複数の領域を掛け算して希少性を作る話です。役割を変えるという発想の、その先にあたります。

「自己認識」が、キャリアの成否を決めていた 自分をどう見ているかがキャリアを左右するという記事です。停滞の正体を見誤らないために効きます。

成長したい。でも、何から始めればいいかわからない。 最初の一歩が決まらないときの記事です。役割を変えると決めたあとの実行に使えます。