「自分の頭で考えろ」が、一番危ない。
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「自分の頭で考えろ」
上司に言われた。本も読んだ。セミナーでも聞いた。
だから、考えた。必死に。
3時間デスクに向かって、うんうん唸った。 結果、何も出なかった。
──こんな経験、ないだろうか。
私もそうだった。「考える力がない」と自分を責めた。でも、後から気づいた。考えられなかったんじゃない。考え方が間違ってただけだった。
「自分の頭」が、一番狭い
面白い訓練法がある。
大前研一さんが提唱する「RTOCS」という。Real Time Online Case Studyの略。何かというと、「もし自分が〇〇の社長だったら」と仮定して、今まさに起きている問題に対する解決策を考えるという訓練だ。
例えば、「もし自分がスターバックスの社長だったら、今の市場環境でどう動くか」と考える。「もし自分が楽天の三木谷さんだったら、次の一手は何か」と考える。
大事なのは、自分の立場から離れること。
係長なら部長の視点で。部長なら社長の視点で。自分の会社じゃなくて、競合の社長の視点で。今の自分とは全く違う立場から、同じ問題を見つめ直す。
なぜか。
「自分の頭」は、一番狭いから。
自分の経験、自分の立場、自分の知識。そこから考えると、どうしても同じところをグルグル回る。見えてる範囲でしか発想できない。それを「考える」と呼んでいたら、ずっと同じ答えしか出てこない。
他人の立場で考えると、縛りが外れる
これ、実際やってみると面白いことが起きる。
例えば、「売上が伸びない」という課題があったとする。
自分の立場で考えると、「もっと営業頑張らなきゃ」「価格を下げようか」みたいな、今やってることの延長線上の答えしか出ない。
でも、「自分が孫正義だったら」と考えてみる。
急に、発想のスケールが変わる。「そもそもこの事業、続ける意味あるか?」「M&Aで一気に拡大できないか?」みたいな選択肢が浮かんでくる。
自分の立場では絶対に考えつかなかったこと。それは、孫正義の方が頭がいいからじゃない。立場が違うと、見える景色が違うからだ。
係長は係長の責任範囲で考える。だから小さな改善しか思いつかない。 社長は会社全体を見る。だから「この部門ごと売却する」という選択肢が見える。
同じ問題でも、どの視点から見るかで答えが全然違う。
「正解」を探すから、詰まる
もう一つ、大事なことがある。
「正解を出さなきゃ」と思うと、人は動けなくなる。
でも、他人の立場で考えると、不思議と気が楽になる。だって、「自分が孫正義だったら」なんて、仮定の話だから。間違っても恥ずかしくない。
この「気が楽」という状態が、実はすごく大事だ。
考えることに抵抗がなくなる。自由に発想できる。「こんなこと言ったらバカだと思われるかも」という心理的なブレーキが外れる。
結果として、自分の頭で考えていた時よりも、はるかに多くのアイデアが出てくる。
皮肉な話だ。「自分の頭で考えろ」と言われて、自分の頭で考えるほど、発想は狭くなる。他人の頭を借りたフリをした方が、よっぽど自由に考えられる。
「2つ上の役職」で考えてみる
具体的な方法を一つ紹介する。
今の自分より「2つ上の役職」の立場で、目の前の課題を考えてみる。
係長なら、部長を飛ばして事業部長の視点で。課長なら、本部長や役員の視点で。
なぜ「2つ上」か。
1つ上だと、視点があまり変わらない。日常的に接してるから、だいたい何を考えてるかわかる。でも2つ上になると、見えてる景色がガラッと変わる。
事業部長は、今期の数字だけじゃなくて、3年後、5年後を見てる。自分の部署だけじゃなくて、他部署との連携、会社全体の戦略を見てる。
その視点から今の課題を見ると、「そもそもこの仕事、やる意味あったっけ?」みたいな根本的な問いが生まれる。
これが、「視点を上げる」ということだ。
なぜ「考える」と言われると固まるのか
話を戻す。
「考えろ」と言われて固まってしまう人には、共通点がある。
「正解を当てようとしている」のだ。
上司が期待してる答え。会社が求めてる答え。それを当てようとするから、「間違ったらどうしよう」と怖くなって、思考が止まる。
でも、「もし自分が〇〇だったら」と考えると、正解を当てるゲームじゃなくなる。仮定の話だから、間違いも正解もない。ただ、自分なりの答えを出すだけ。
このマインドセットの切り替えだけで、「考える」ことへのハードルが一気に下がる。
今日から試せる、たった一つのこと
この記事を閉じる前に、一つだけやってほしいことがある。
今抱えてる課題を、「もし自分が尊敬する〇〇だったら」という視点で考えてみてほしい。
〇〇は誰でもいい。孫正義でも、スティーブ・ジョブズでも、身近な先輩でもいい。
5分でいい。紙に書き出してみる。
「自分だったら」で考えていた時とは、全く違う答えが出てくるはずだ。
よくある失敗
「自分の頭で考えろ」を文字通り受け取ること。
自分の経験、自分の立場、自分の知識の範囲で考えても、同じ答えしか出てこない。
視点を固定したまま「考える」ほど、発想は狭くなる。
考える力とは、頭の良さじゃない。
視点を動かす技術だ。
結局、「考える力がない」と悩んでる人の多くは、能力の問題じゃない。視点が固定されてるだけ。
自分の立場、自分の経験、自分の知識。その枠の中でグルグル回ってるから、同じ答えしか出てこない。
視点を動かすだけで、発想は一気に広がる。
参考書籍
-
大前研一さん『企業参謀』 戦略的思考の古典。「RTOCS」の原点。視点移動の技術がわかる。
-
細谷功さん『具体と抽象』 視点を上げるとは、抽象度を上げること。思考の往復運動の技術がわかる。
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