本文へスキップ
ブクドリ | BOOK DRIP

なぜ王者は転落するのか

約5分で読めます 戦略・経営・事業
目次

「うちは業界No.1だ」

会議室。

誰もがそう信じていた。


3年後。

市場シェアは半分に落ちていた。

「なぜ、こんなことに…」


かつて業界をリードしていた企業が、時代遅れになっていた。


そう思ったこと、ありませんか。


成功した企業ほど、停滞します。

そして衰退します。

Day1の精神を失うから。


プロセスが目的化するから、顧客が見えなくなる

成功した企業が停滞する第一の理由。 それは、顧客ではなく「プロセス」が目的化することです。

ジェフ・ベゾスは、「Day2は停滞です。そのあとに続くのは迷走、さらに辛く痛ましい衰退、そして最後には死です」と断言しています。


組織が停滞に向かうとき、その兆候は劇的な形では現れません。

成功の中で、少しずつ忍び寄ってきます。


手続きが増える。 承認プロセスが複雑になる。 会議が長くなる。


そして、誰もが気づく。

本来の目的を見失っている。

顧客のためではなく、プロセスを守るために働いている。


サティア・ナデラがMicrosoft CEOに就任した2014年、同社はまさにこの状態でした。

Windows中心の思考に固執し、クラウドやモバイルの波に乗り遅れていました。

社内政治が蔓延し、部門間の壁が高くなっていました。


ナデラは『Hit Refresh』で当時の状況をこう振り返っています。

「社員たちは、自分が最も賢いことを証明しようとしていた。他者から学ぼうとする姿勢がなかった」。


私も経験しました。

成功したプロジェクト。

「この方法で成功したから、次もこの方法で」

そう考えた。


しかし、市場は変わっていた。

同じ方法では通用しなかった。

プロセスを守ることが目的になり、顧客を見失っていた。


成功しているときこそ、自己点検を怠らない。

「今、顧客のために働いているか?」

この問いを毎日投げかけることが、Day2への警戒になります。


失敗を恐れるから、革新が止まる

成功した企業が停滞する二つ目の理由。 それは、失敗を恐れることです。

成功した組織は、失敗を罰します。


しかし、ベゾスは明確に述べています。

「失敗と革新は対の関係にあり、切り離すことはできません」。

新しいことに挑戦すれば、失敗は避けられません。


Amazonの「Fire Phone」は1億7,800万ドルの損失を出した大失敗でした。

しかし、この失敗から得た技術と教訓が、その後のAmazon EchoとAlexaの開発につながり、数十億ドル規模のビジネスを生み出しました。


「何十回も失敗するかも知れませんが、一つ大きな成功をすれば十分取り返せるのですから」。

これがベゾスの考え方です。


ナデラもMicrosoftで同じ転換を図りました。

かつてのMicrosoftは失敗を罰する文化でした。

評価制度が社員同士を競争させ、リスクを取る者は少なくなっていました。


ナデラは「成長マインドセット」を導入しました。

失敗は学習の機会である。 完璧を目指すのではなく、成長を目指す。

この転換が、Microsoftのイノベーション文化を復活させました。


正直に言います。

私も最初は「失敗は恥だ」と思っていました。

新しい施策を提案したとき、「もし失敗したら…」と怖かった。


しかし、失敗を恐れると、挑戦できなくなる。

挑戦しないと、成長が止まる。


いい失敗は称賛されるべきもの。

悪い失敗は、同じミスの繰り返しや準備不足によるもの。

この区別ができる組織だけが、Day1を維持できます。


「自分たちは正解を知っている」と思い込むから、学ばなくなる

成功した企業が停滞する三つ目の理由。 それは、学ばなくなることです。

成功した組織は、往々にして「自分たちは正解を知っている」と思い込みます。


しかし、変化の激しい時代において、昨日の正解は今日の不正解かもしれません。

重要なのは、常に学び続ける姿勢です。


ナデラが最も重視したのは、「知ったかぶり(know-it-all)」から「学びたがり(learn-it-all)」への転換でした。

顧客の声に耳を傾け、パートナーから学び、競合他社からさえも学ぶ。


この「学びたがり」の姿勢が、Microsoftをクラウド時代のリーダーへと変貌させました。

ベゾスの「7割で決断し、軌道修正する」という原則も、学習する組織の特徴です。


完璧な情報を待つのではなく、行動しながら学ぶ。

意思決定を1型(後戻りできない)と2型(修正可能)に分け、2型決定は素早く下す。


田所雅之氏が『起業の科学』で提唱する「仮説検証サイクル」も同じ発想です。

仮説を立て、小さく実行し、結果から学び、仮説を更新する。

このサイクルを高速で回すことが、スタートアップの強さです。


成功した企業がこのサイクルを失うと、停滞が始まります。

私も経験しました。


成功したプロジェクトのリーダーになった。

「この方法が正しい」

そう確信していた。


しかし、新しいメンバーが「別の方法もあるのでは?」と提案した。

最初は「いや、この方法で成功したから」と却下しようとした。


後で気づいた。

自分は学ぶことを止めていた。

「正解を知っている」と思い込んでいた。


「私は〇〇について詳しくないので教えてください」と言える雰囲気を作る。

知らないことを認め、他者から学ぶ姿勢を称賛する。

この小さな変化が、組織の学習能力を大きく高めます。


今日、これだけはやってほしいこと

長々と書きました。 でも、やることは1つだけ。

「Day2チェックリスト」を月に一度、実施する。

それだけ。


以下の四つの問いを自問してください。

プロセスが目的化していないか。 外部の変化を無視していないか。 意思決定が遅くなっていないか。 顧客への執着が薄れていないか。


一つでも当てはまれば、Day2に近づいているサインです。

兆候を発見したら、すぐに対処を始めてください。

よくある失敗: 「うちは大丈夫」と思い込むこと。Day2への移行は成功した組織ほど起こりやすいものです。成功しているときこそ、自己点検が必要です。ベゾスはAmazonの本社ビルを「Day1」と名付け、毎日その名前を目にすることで警戒を忘れないようにしています。


関連する書籍

『ベゾスレター』(スティーブ・アンダーソン) Day1を維持する思考法。失敗と革新は対の関係。7割で決断し、軌道修正する。顧客への執着が成長の鍵。

『Hit Refresh』(サティア・ナデラ) 知ったかぶりから学びたがりへ。成長マインドセットが組織を変革する。失敗を学習の機会として扱う文化を作る。

『起業の科学』(田所雅之) 仮説検証サイクルを高速で回す。PMFを達成した後も、市場の変化を追い続ける。小さく実行し、学び、更新する。


まとめ

成功した企業が停滞するのは、Day1の精神を失うからです。

しかし、Day1を維持することは可能です。


プロセスではなく、顧客を見る。

失敗を恐れず、革新を続ける。

「正解を知っている」という幻想を捨て、学び続ける。


ベゾスが示したように、Day1を維持することが持続的成長の鍵です。

ナデラが実践したように、組織文化の転換は可能です。

田所氏が説いたように、仮説検証のサイクルを回し続けることが重要です。


今日が「Day1」であることを思い出してください。

明日もまた「Day1」として始める。

その積み重ねが、停滞を避け、成長を続ける唯一の方法です。


合わせて読みたい

『イノベーションのジレンマ』クレイトン・クリステンセン なぜ優良企業が「正しい経営判断」で破綻するのか。破壊的イノベーションを見極める3つの視点を解説。

『最高のコーチは、教えない。』吉井理人 部下の主体性を引き出す「考えさせる」リーダーシップ。学び続ける組織文化を作るヒントが得られます。

『U理論』C・オットー・シャーマー 真の変革が生まれる3つの意識転換。組織の停滞を打破するための思考フレームワークを学べます。