わからないことがあった。聞きたかった。──でも、聞けなかった。
目次
「これ、来週までにお願いね」
上司に言われて、「はい」と答えた。
でも、正直よくわからなかった。
「来週」って、月曜の朝?金曜の終業?
「お願い」って、どこまでやればいい?
聞きたかった。でも、聞けなかった。
「そんなことも聞くの?」と思われるのが怖かったから。
結果、どうなったか。
締め切り直前に「これじゃない」と言われた。やり直し。徹夜。
最初に聞いていれば、5分で終わった話だった。
「わかったつもり」が、すべてを狂わせる
衝撃を受けた言葉がある。
「ほとんどの人が『わからないところ』をスルーして、『わかったつもり』になっている」
これは、質問力の専門家が指摘していることだ。
そして、「わかったつもり」は信頼を損なうと。
考えてみれば、当然のことだ。
「わかりました」と言って、違うものを出す人。
「わかりました」と言って、締め切りを守れない人。
どちらも、「わかっていなかった」のが原因だ。
でも、本人は「わかっていた」と思っている。
これが「わかったつもり」の怖さだ。
問題は、本人が気づいていないこと。だから何度も繰り返す。
なぜ聞けないのか
ここで、なぜ質問できないのかを考えてみる。
多くの場合、理由はシンプルだ。
「こんなことも聞くの?」と思われるのが怖い。
でも、これは想像だ。
実際に聞いてみて、「こんなことも知らないの?」と言われた経験、あるだろうか。
ほとんどの場合、ないはずだ。
むしろ、「いい質問だね」と言われることの方が多い。
なぜか。
質問する人は、「ちゃんと考えている人」に見えるからだ。
何も言わずに「はい」と答える人より、「これは〇〇という意味ですか?」と聞く人の方が、真剣に向き合っているように見える。
実は、聞かない方がリスクが高い。
「質問する人」が信頼される理由
面白い話がある。
ある自動車ディーラーが、他の営業マンを圧倒的に上回る成績を出していた。
何が違ったのか。
普通の営業マンは、「どんな車をお探しですか?」と聞く。
でも、そのディーラーは違った。
「よくお出かけになるんですか?」
この一言で、顧客は自分のプライベートを話し始めた。週末はどこに行くか、誰と乗るか。
そこから、本当に欲しい車が見えてきた。
これが「信頼を生む質問」だ。
「自分のことをわかっていない」という前提で、相手の背景を謙虚に知ろうとする。
そうすると、相手は「この人は自分のことを理解しようとしてくれている」と感じる。
だから信頼する。だから本音を話す。
逆に、質問しない人は、相手を理解しようとしていないように見える。
だから信頼されない。
「聞けない」を「聞ける」に変える方法
では、どうすれば質問できるようになるのか。
1つ、簡単な方法がある。
言葉の定義を確認する。
「来週までにお願い」と言われたら、「来週」の定義を確認する。
「この施策を進めて」と言われたら、「進める」の定義を確認する。
これは、「わからないことを聞く」のとは少し違う。
言葉の意味を確認しているだけ。
でも、この一言があるだけで、認識のズレが激減する。
「来週って、金曜の終業でいいですか?」
「進めるって、企画書まで作ればいいですか?」
これだけで、あとで「違う」と言われるリスクが消える。
今日やること:1つだけ
この記事を閉じる前に、1つだけ決めてください。
次に何かを頼まれたとき、「定義を1つ確認する」と決める。
「いつまでですか?」でもいい。
「どこまでやればいいですか?」でもいい。
「〇〇という理解で合ってますか?」でもいい。
1つだけ。
それだけで、「わかったつもり」が「本当にわかった」に変わる。
そして、その1つの質問が、あなたの評価を変える。
「聞けなかった」から「聞ける人」になれた。
それだけで、仕事の質も、周りからの信頼も、確実に変わる。
聞くことは、恥ずかしいことじゃない。
聞かないことの方が、よほどリスクが高い。
よくある失敗
「聞くと馬鹿だと思われる」と思って聞かないこと。
実際は逆だ。聞かずに進めて「違う」と言われる方がよほど評価を下げる。聞く人は「ちゃんと考えている人」として信頼される。
参考書籍
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坂本聰さん『たったひと言の質問力』 「わかったつもり」を卒業する質問の技術を解説。言葉の定義を確認することの重要性がわかる。
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ケイト・マーフィー氏『LISTEN』 質問と傾聴の関係、相手を理解しようとする姿勢の本質を解説している。
合わせて読みたい
『坂本聰「たったひと言の質問力」』 「わかったつもり」を卒業して本物の信頼を手に入れる、質問力の技術を解説している。
『なぜ私たちは「聞いているつもり」で聞けていないのか?「LISTEN」が教えてくれる、人生を変える傾聴の技術』 質問と傾聴の関係、相手を理解しようとする姿勢の大切さを解説している。
『何回説明しても、伝わらない。もっと丁寧に話した。なのに、また誤解された。』 認識のズレが生む誤解と、それを防ぐコミュニケーション術を解説している。