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「いいね」を購入につなげる 短パン社長の稼ぎ方 奥ノ谷圭祐

『「いいね」を購入につなげる 短パン社長の稼ぎ方』奥ノ谷圭祐|SNSを「手紙」にしたら、カレーまで売れた

マーケティング・営業 奥ノ谷圭祐
約6分で読めます

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この本の全体像
『「いいね」を購入につなげる 短パン社長の稼ぎ方』の図解

本の結論

お客さんが買っているのは、商品そのものではなく、その人自身です。

明日やること

次のSNS投稿を出来事の報告で終わらせず、そこで感じたことと明日から変えることを一文添える

効く悩み

  • SNSに毎日投稿していいねはつくのに、商品を告知した途端に反応が消えてしまう
  • 価格や機能で大手チェーンと比較され、値下げ以外の打ち手が見つからない
  • SNSで実名や本音を出すのが怖く、当たり障りのない発信しかできていない

読むべき人

  • SNSでの発信を、価格ではない理由で選ばれる商売につなげたい店主・個人事業主
  • フォロワーは増えているのに売上に結びつかないと感じている経営者

読まなくていい人

  • 決裁の関係者が多いBtoB取引や、発信ルールの厳しい大企業に勤めている人
  • そのまま使える発信の型やテンプレートを求めている人
目次

おしゃれな案内状を800通、費用にして150万円。前職での成功体験にならい、モデルを起用してデザインにもこだわった案内状でした。それだけかけた展示会に足を運んだのは、3日間の会期でたった7人だったのです。

ここまで来場者が少ないと、たいていの人は案内状のデザインや送り先の選び方を疑うはずです。

1年中短パン姿で商売をしているアパレル社長、奥ノ谷圭祐さんの著書は、この惨敗の原因を案内状の出来ばえとはまったく違うところに見つけ、SNSでの商売を根本から組み立て直していく過程を追った一冊です。

毎日発信していいねの数はそれなりにあるのに、商品を告知したとたん反応が消える。そんな心当たりのある店主や個人事業主には、答えの見当がつくはずの本になっています。

1着1万円を超える価格帯の服を扱いながら、大手チェーンとまともに値段で競っていない点も、この商売のヒントを探る意味で読みどころになります。

図解

買われているのは商品ではなく「その人」だった

お客さんが買っているのは、商品そのものではなく、その人自身です。案内状の失敗を相談した先で紹介されたセミナーで、著者は講師からある一言を突きつけられます。来てくれた7人は商品に惹かれたのではなく、あなた自身に会いたくて来たのだと。

「商品とかじゃない、オレだったんだ!」

これを境に、著者は会社の看板を引っ込め、自分個人を前面に出す方向へ舵を切ります。取った手段は、仕事の宣伝を一切書かない手書きの便りでした。近況や服の手入れの仕方、贔屓にしている店の話を綴って取引先に送り続けるうち、お客さんの記憶に残るのは会社の名前ではなく、生身の人間のほうだという実感が確信に変わっていきます。

おしゃれの世界にいながら服装だけで出店を断られた昔のエピソードも、この「自分を偽らない」という一本の軸でつながっています。

SNSでの発信を見直すきっかけになったのも、同じ気づきでした。始めた当初は近況の羅列ばかりでほとんど誰にも読まれておらず、9年前のある投稿への反応はわずか数個だったといいます。

発信の宛先を「不特定多数」ではなく「顔の見えるひとり」に絞った瞬間から、反応が変わり始めます。不特定多数へ向けた広告ではなく、目の前のひとりに宛てた私信のつもりで書くというこの発想の転換が、著者いわく数字の伸びに直結しました。

何気ない投稿がきっかけで在庫が数時間で底をついたり、落書きのようなイラスト一枚で数百枚の注文が入ったりした例も本書には並びます。露出の量ではなく宛先の解像度が反応を分けるというのが、著者の一貫した立場です。

今では投稿への反応の数も、フォロワーの規模も、始めた当初とは比べものにならないほど育っています。

決済カートすら置かず、SNS上でのやり取りだけで注文を受けるという運営方法も、この考え方の延長線上にあります。それでいて、数年間で数千人にのぼる顧客に、億単位の売上を積み上げてきたという実績があるからこそ、この話は精神論だけでは終わっていません。

服屋の看板でカレーやビールまで完売させる理由

関係さえ築けていれば、売る商品のジャンルは問われません。もっとも意表を突かれるのが、著者が服以外にも手を広げ、そのたびに完売させている事実です。レトルトカレーやクラフトビール、コーヒー豆まで扱い、いずれも数量限定で早々に売り切っています。

ビールにいたっては、アパレル業者がそんな短期間で売り切れるはずがないと税務署から疑われるほどの動きだったといいます。ユニフォームを買うことそのものが参加条件になる田植えの催しや、閑散期の平日に地方まで人を集める野外イベントも同じ発想から生まれました。

そのイベントでは、安い入場券より、何倍も値の張るパーカーやTシャツのほうがよく売れたという逆転現象まで起きています。

本書はこれを著者だけの特殊な才能として片づけません。「どうせ買うならこの人から」と選ぶ買い手を軸に据え、関係さえ築けていれば商品のジャンルは問われないと説きます。

著者から学んだ各地の生産者や店主が、同じ発想で牛肉やコラボカレー、オリジナルTシャツを次々と完売させていく実例が続きます。牛を丸ごとSNSで売った畜産農家や、レシピ発信で全国にファンをつくった電器店の夫婦、手紙を送り続けて紹介を生んだ住宅会社など、業種の異なる実例が並ぶことが、これが個人の資質ではなく再現できるやり方だという裏づけになっています。

便利にした途端、売上が落ちた逆説

仕組みを便利にしても、お客さんが楽しんでいた手間を消してしまうと売上は落ちます。信頼の築き方を扱う章でひときわ目を引くのが、注文が増えて手作業では追いつかなくなり、便利な購入用のリンクを導入したところ、かえって売上が落ちたという逸話です。

お客さんが対価を払っていたのは服という品物だけでなく、著者とやり取りしながら買い物をする過程そのものだったとわかります。仕組みを効率化する前に、その手間の中にお客さんが楽しんでいる部分が隠れていないか、一度立ち止まって確かめてみましょう。大手チェーンと単価も販売数もまるで違う規模で商売が成立しているのも、この関係の濃さゆえです。

体型に合わない服を勧めるのではなく、はっきり「似合わないから買わない方がいい」と正直に伝える姿勢も、同じ考え方の延長にあります。お客さんを持ち上げるのではなく対等に本音で接することが、結果的に強い信頼を生んでいます。

新商品を出すたびに欠かさず買い支えてくれる、顔の見える固定客の存在が、この商売全体の基盤になっているのも、本音での関係づくりを積み重ねてきた成果だといえるでしょう。

出来事の報告より、そのとき感じたことを書く

SNSでは、出来事の報告ではなく、そこで感じたことを書きます。実践編にあたる章の柱は、起きた出来事をそのまま書く「報告」から、そこで何を感じ何を考えたかを書く姿勢への転換です。

「『報告』ではなく思ったこと、考えたことを伝えよう」

文章や写真の完成度にこだわって手が止まるより、まず数を出し、寄せられたコメントに返し、相手の発信も見に行きます。この往復を積み重ねて関係を太くしていくという考え方です。

多くの人は売ろうとして焦り、関係づくりにも焦ってまた止まってしまいますが、著者の順番はその逆で、まず一緒に楽しみ、関係を築き、たまに売ります。実際、商品を直接売り込む投稿は全体のごく一部にとどまるといいます。

実名での発信を怖がっている読者に向けては、無名の人が炎上することはめったになく、悪口を言う相手はむしろ強い関心を寄せている側に近いという著者なりの整理も示されます。

ただし本書はこの型をそのまま真似ることを勧めていません。立場に合わせて試し、自分なりのやり方を見つけるしかないというのが、著者の率直な結論です。

本書の限界

このやり方は、著者本人の行動量とキャラクターに支えられている面が大きいです。毎日の発信、ひとつひとつへの返信、手書きの対応をここまで長期間続けられる人は限られるはずです。講演やセミナーで話を聞いたあとで、実際に発信のやり方を変えて動き出す人は一部にとどまるとも、著者自身が明かしています。

決裁に関わる人数が多い商取引や、発信のルールが厳格な大きな組織では、個人の感情や私生活を前面に出すこのやり方をそのまま持ち込みにくい場面もあります。

本書が描く成功例の大半は、経営者が自分自身の名前で発信できる立場にあることを踏まえて読む必要があります。ここに書かれた具体的な手順を、そのまま型として真似ても、うまくいくとは限らないと著者自身も繰り返し釘を刺しています。

それでも、著者が最初に踏み出した一歩そのものは、決して特別なものではありません。会社の看板ではなく自分自身の言葉で、目の前のひとりに向けて何かを書きます。

そこから始められる点は、業種や立場、発信力の大小を問わず参考にできるはずです。すぐに試せる行動としては三つあります。

いいねの数やフォロワーの増減に一喜一憂する日は、発信を続けていれば誰にでもあります。著者は失敗そのものより、その後にどう動くかが結果を分けると繰り返します。

数字に惑わされず、画面の向こうにいる一人を笑顔にする発信を続けてほしいという著者の呼びかけは、SNS疲れを感じている読者ほど響くはずです。150万円の案内状に7人しか来なかった日が出発点だったのなら、次にとる行動しだいで、今日の反応の薄さもまだ出発点でいられます。


合わせて読みたい

『ファンベース』佐藤尚之 拡散したのに売上につながらなかった、という苦い経験を出発点にした一冊。反応と購入のあいだにある溝を、企業側の視点から捉え直したい読者に合います。

『共感SNS』ゆうこす フォロワーの多さがそのまま集客につながらなかった経験が語られています。800通の案内状で7人だった本書のエピソードと並べると、数と関係の質の違いが際立ちます。

『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』西口一希 特定のひとりを起点に戦略を組み立てる発想は、顔の見える相手に宛てて発信する本書の考え方を、分析の技術としてより体系立てて学び直す助けになります。

明日の1アクション

次のSNS投稿を出来事の報告で終わらせず、そこで感じたことと明日から変えることを一文添える


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