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『ハーバード現役研究員の皮膚科医が書いた 見た目が10歳若くなる本』小川徹さん|肌は「目に見える内臓」だった

健康・メンタル
約4分で読めます

「最近、老けたね」と言われて、内心ぎくりとしたことはありませんか。

私はあります。鏡の中の自分が、写真の中の自分より老けて見える。その正体は、加齢そのものではないかもしれません。本書はそう言い切ります。見た目の老化の多くは、毎日の習慣が積み上げた結果だ、と。

著者の小川徹さんは、ハーバード大学マサチューセッツ総合病院の客員研究員も務めた皮膚科専門医です。本書を貫く主張はシンプルで、見た目の若さは単なる美容の問題ではなく、内臓の若さ、つまり健康そのものと直結している、というもの。この一点を肌・髪・腸・睡眠・運動という複数の入口から照らしていく構成になっています。

こんな人におすすめ

特に効くのは、こんな心当たりがある人だと感じました。

逆に、ひとつの美容法をとことん深掘りしたい人には物足りないかもしれません。本書は広く浅く全体を底上げするタイプで、一芸を究める本ではないからです。そこを承知のうえで読むと、コストパフォーマンスがいい一冊だと思います。

「素材を磨け」という問題提起

著者がいちばん強く言うのは、「服で飾る前に、素材を磨け」という一言です。

どれだけ高い服を着ても、肌が荒れていたら台無しになる。服は取り換えられるが、皮膚と髪は取り換えられない。だからこそ、この取り換えのきかない「素材」こそが最大の武器になる、という理屈です。

ここで本書のキーワードになるのが「外見力」。オシャレのことではなく、清潔感・肌・髪・爪といった素材そのものを手入れし、自分の魅力を引き出す力を指します。著者は、日本のビジネスパーソン、特に男性は、服には気を遣うのに素材を放置して損をしている、と問題提起します。欧米のエリートが外見ケアをビジネスの必須スキルと捉えているという指摘は、耳が痛い人も多いはずです。

この「外見=健康投資」という視点の転換が、本書の出発点であり、いちばんの読みどころだと思います。スキンケアを美容のコーナーから引っぱり出して、健康管理の文脈に置き直してくれる。ここに納得できるかどうかで、本書の効き目は大きく変わります。

肌は「目に見える内臓」だという見方

本書を最も象徴するのが、皮膚を「目に見える臓器」と捉える発想です。

肌は心臓や肺と同じ臓器であり、内臓の不調や心のストレスを映す鏡だ、と著者は言います。肌荒れやニキビは表面のトラブルではなく、体の内部からのサインだというわけです。そして著者は、見た目が若いことを別の言葉に言い換えます。

「見た目が若い」ということは、言い換えれば「抗酸化力が高い人」ということもできるわけです。

細胞を老化させる「酸化ダメージ」に対抗する力が高い人は、肌だけでなく内臓も若い。だから外見を磨くことは、そのまま体の内側のケアになる——この橋渡しの論理が、本書を読み物として面白くしています。第一印象が見た目で大きく決まる、という有名な研究も引かれますが、その数字や根拠の細部は本書で確かめてほしいところです。

具体策は「絞って」紹介されている

うれしいのは、本書が具体策を山ほど並べたうえで、「全部やる必要はない」と明言してくれることです。

たとえば肌のケアで著者が「やってはいけないことの第一位」に挙げるのが、洗顔後にタオルでゴシゴシ拭くこと。摩擦は肌の最大の敵で、やさしく押さえて水分を取り、すぐ保湿するのが鉄則だと説きます。私自身、ここだけでも読んだ甲斐があったと感じました。誰でも今夜から変えられて、お金もかからないからです。

食事の章で印象に残ったのは「ローテーション」という考え方。水でもヨーグルトでも、ひとつの銘柄に固定せず日替わりで変えると、不足しがちな成分や菌をバランスよく補える、というもの。発想がユニークで、しかもズボラでも続けられる。こういう「正しさ」より「続けやすさ」に寄せた設計が、本書の優しさだと思います。

このほか紫外線対策、睡眠、運動、髪、爪やニオイのエチケットまで、章ごとに具体的なコツが並びます。ただ、ここで全部を書き写してしまうと本書を読む意味が薄れるので、あえて紹介はこの二つにとどめます。残りの引き出しは、ぜひ本書で開けてみてください。気に入ったものだけ拾えばいい、という著者の姿勢があるので、つまみ食いでもちゃんと効きます。

読み終えて残るもの

本書を閉じて手元に残るのは、特定の化粧品の名前ではありません。

肌は「目に見える内臓」だ、という一つの視点です。鏡に映る老けは加齢のせいだけではなく、摩擦・紫外線・腸内環境・睡眠・ストレスの積み重ねが顔に出たもの。だとすれば、その逆も成り立つ。毎日の小さな選択が、10年後の見た目を作る——この単純な事実を、医学の裏づけとともに腹落ちさせてくれます。

著者が掲げる「ポジティブ皮膚科学」、つまり皮膚のケアを通じて心を前向きにし、人生を好転させるという思想も、読後に静かに効いてきます。見た目を整えることは、自分を雑に扱わないことでもある。そう思えた時点で、この本はもう仕事をしています。

明日の朝、洗顔のあと。タオルでゴシゴシ拭く手を止めて、やさしく押さえてみてほしい。その小さな一手から始めて、続きの引き出しは本書で確かめてもらえたらと思います。


合わせて読みたい

『睡眠の質を高める科学的メソッド──「最初の90分」があなたの人生を変える』 本書が「入眠後3時間の熟睡」と「寝る前のスマホ回避」を肌の修復の鍵に置いていたのに対し、こちらは睡眠の質そのものを深く掘り下げた一本です。見た目の若返りを睡眠から攻めたい人に、具体的な眠り方の知識を足してくれます。

『医者が教える長生きのコツ』佐古田三郎さん 本書の「腸年齢が見た目を決める」「薬より生活習慣」という発想と響き合う一冊です。食事や生活で病院に頼らず健康を保つ視点が、外見力の土台である内臓の若さをさらに補強してくれます。

『歩く マジで人生が変わる習慣』池田光史さん 本書がストレスケアとして「スロージョギング」を勧めていたのに対し、こちらは「歩く」という最も手軽な運動が脳と身体に効く理由を語ります。激しい運動が続かなかった人が、外見力につながる運動習慣を始める入口になります。


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