「せっかくここまで来たんだから」が、最悪の判断を生む
目次
映画を観に行った。
30分観て、つまらないと思った。でも、もう1800円払ってる。席を立てなかった。
結局、2時間つまらない映画を観続けた。
これ、「サンクコストの誤謬」という。
払った金は、もう戻ってこない
サンクコスト。日本語だと「埋没費用」。
すでに支払ってしまった、回収不可能な費用のこと。
映画館で払った1800円は、観ても観なくても戻ってこない。
でも、人間は「もったいない」と思う。
「せっかく1800円払ったんだから、最後まで観なきゃ」
これがサンクコストの誤謬だ。
合理的に考えれば、つまらないと思った瞬間に席を立つべきだった。残りの1時間半を、別のことに使えた。
でも、「払った金」に引きずられて、「これからの時間」を無駄にした。
「せっかく」が判断を狂わせる
「せっかくここまで来たんだから」
この言葉、危険だ。
- せっかく3年付き合ったんだから、結婚しよう
- せっかく10年勤めたんだから、転職は諦めよう
- せっかく500万円投資したんだから、もう少し待とう
全部、サンクコストの誤謬だ。
過去に費やした時間や金は、未来の判断に影響を与えるべきじゃない。
「これから」どうするかだけを考えるべきだ。
コンコルドの悲劇
有名な例がある。
超音速旅客機コンコルド。イギリスとフランスが共同開発した。
開発途中で、採算が取れないことがわかった。需要がない。燃費も悪い。商業的に成功する見込みがない。
普通なら、中止する。
でも、両国は続けた。
「もう何百億円も投資したんだから、今さらやめられない」
結局、開発は続行。予想通り、商業的には大失敗した。
この事例があまりにも有名なので、サンクコストの誤謬は「コンコルドの誤謬」とも呼ばれる。
「もったいない」は美徳じゃない
日本人は「もったいない」が好きだ。
食べ物を残さない。物を大切にする。
これ自体は悪くない。
でも、「もったいない」が判断を狂わせることがある。
- もったいないから、読みかけの本を最後まで読む
- もったいないから、合わない仕事を続ける
- もったいないから、失敗したプロジェクトに追加投資する
「もったいない」は、過去に焦点を当てている。
でも、判断は「これから」に焦点を当てるべきだ。
「損切り」という発想
投資の世界に「損切り」という言葉がある。
買った株が下がった。損が出ている。
「待てば戻るかもしれない」「せっかく買ったんだから」
こう思って持ち続けると、さらに損が膨らむことがある。
だから、ある時点で売る。損を確定させる。これが損切り。
痛い。でも、それ以上の損失を防げる。
サンクコストを切り捨てる勇気。これが「損切り」だ。
なぜ人は「やめられない」のか
サンクコストの誤謬、なぜ起きるのか。
理由は「損失回避」という心理にある。
人間は、利益を得るよりも、損失を避けることを重視する。
1万円もらうより、1万円失わない方が、心理的なインパクトが大きい。
だから、「すでに投じたものを無駄にしたくない」という気持ちが強くなる。
これが、合理的な判断を妨げる。
「ゼロベース」で考える
じゃあ、どうすればいいか。
一つだけ、試してほしいことがある。
「もし今から始めるとしたら、同じ選択をするか」と自問する。
転職を迷っている。10年勤めた会社。
「もし今、転職活動をしていて、今の会社からオファーが来たら、入社するか?」
答えがNoなら、10年という時間は関係ない。
投資を続けるか迷っている。500万円投資した。
「もし今、手元に500万円あったら、同じ銘柄を買うか?」
答えがNoなら、売るべきだ。
過去を消して、「今から」で考える。これがゼロベース思考だ。
「やめる」は負けじゃない
最後に、一つだけ。
「やめる」ことは、負けじゃない。
「せっかくここまで来たんだから」で続けることの方が、よほど負けだ。
過去の投資を守ろうとして、未来の時間を失う。
映画館で席を立つ勇気。
それが、人生のあらゆる場面で必要になる。
1800円より、残りの1時間半の方が価値がある。
「せっかく」を捨てろ。「これから」で判断しろ。
この記事で参考にした本
『SUPER THINKING 超一流が実践する思考法を世界中から集めて一冊にまとめてみた。』ガブリエル・ワインバーグ → サンクコストの誤謬(コンコルドの誤謬)について詳しく解説されていた
『変える技術、考える技術』高松智史 → 「スイッチ」という概念。判断を変えるための具体的なトリガーの重要性
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