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ブクドリ | BOOK DRIP

わかりやすい人は、たとえが上手い

約4分で読めます コミュニケーション・文章術
目次

「いや、だからね、つまりこういうことで…」

5分説明した。相手の顔を見る。

「?」

わかってない。全然わかってない。

もう一度、言葉を変えて説明する。専門用語を減らして、順序立てて、丁寧に。

「うーん、なんとなくは…」

なんとなく。

この「なんとなく」が、一番困る。理解してないけど、これ以上聞くのも悪いから、とりあえず頷いておこう。そういう「なんとなく」だ。


説明上手な人を観察してみた

職場に、妙に説明がわかりやすい人がいた。

別に話がうまいわけじゃない。声が通るわけでもない。資料がきれいなわけでもない。

でも、彼が説明すると、みんな「あー、なるほど」と言う。

何が違うのか、しばらく観察してみた。

気づいた。

たとえが、やたらと上手い。

「これ、要するに、料理で言うと下ごしらえみたいなもんです」 「カーナビで目的地だけ設定して、ルートを決めてないような状態ですね」 「ジグソーパズルの箱の絵を見ずにピースを組み立てようとしてるようなもんです」

抽象的な話が、急に絵として見える。


たとえは「翻訳」だった

お笑い作家のせきしろさんが『たとえる技術』という本で、こう言っている。

「たとえは、見えないものを見えるようにする」

これ、まさにそうだ。

考えてみてほしい。「複雑な問題」という言葉を聞いて、何が浮かぶ?

たぶん、何も浮かばない。「複雑」も「問題」も抽象的すぎて、頭の中に絵が描けない。

でも「絡まったイヤホンのコード」と言われたら?

あの、何度ほどいてもまた絡まるやつ。急いでるときに限ってほどけないやつ。

急に、「複雑な問題」の感触が伝わってくる。

これが、たとえの力だ。

抽象を具体に変換する。頭で理解するものを、体で感じるものに変える。

翻訳と同じだ。英語を日本語に翻訳するように、「相手の知らない言語」を「相手の知っている言語」に翻訳する。


良いたとえの条件

じゃあ、どんなたとえがいいのか。

3つの条件がある。

1つ目。相手が知っていること。

当たり前だけど、これが意外と難しい。

「これはリアクティブプログラミングのObservableパターンと同じで…」

エンジニアには伝わる。でも、営業には伝わらない。

相手が絶対に知っているもの。できれば、体験したことがあるもの。

だから「学校」「料理」「スポーツ」「季節」みたいな、誰でも経験があることが強い。

2つ目。具体的であること。

「雲のように白い」より「縁日で親に買ってもらった綿菓子のような白さ」。

後者の方が、ずっと鮮明に浮かぶ。

具体的であればあるほど、相手の脳内に映像が再生される。

3つ目。意外性があること。

「燃えるような赤いもみじ」は、使い古されすぎて何も感じない。

でも「広島カープのファンで埋め尽くされた球場のような赤いもみじ」だと、「おっ」と思う。

意外性があると、相手は一瞬立ち止まる。立ち止まると、記憶に残る。


たとえを作る3つの方法

「でも、うまいたとえが浮かばない」

わかる。私もそうだった。

せきしろさんは、たとえを作るための方法をいくつか紹介している。中でも使いやすいのが3つある。

方法1:似た形・色・動きを探す

これが一番シンプル。

説明したいものと、形・色・動きが似ているものを探す。

「この書類の山」→ 形が似てる → 「ジェンガみたいになってる書類」 「急に売上が伸びた」→ 動きが似てる → 「ロケットみたいに売上が伸びた」

難しく考えなくていい。見た目が似てるものを探すだけ。

方法2:自分の得意分野から借りてくる

野球が好きなら野球から。料理が好きなら料理から。

得意分野なら引き出しが多いから、バリエーションが出やすい。

「このプロジェクト、今は3回の裏くらいですね」 「今は材料を切り終わったところ。まだ火は入れてません」

自分が詳しいことをたとえに使うと、熱量も伝わる。

方法3:共通体験から借りてくる

学校の授業。テストの前日。通勤電車。スマホの充電が切れそうなとき。

誰もが経験していることは、誰にでも伝わる。

「今の状況、テスト前日に『まだ大丈夫』と思ってる状態と同じです」

これだけで、切迫感が伝わる。


今日から試せること

次に誰かに何かを説明するとき、1つだけたとえを入れてみてほしい。

「これ、要するに〇〇みたいなものです」

これだけでいい。

最初はぎこちなくていい。外してもいい。

大事なのは、「抽象→具体」の変換を意識すること。

難しい概念をそのまま伝えるんじゃなくて、相手の頭の中に絵を描く。


「いや、だからね、つまりこういうことで…」

これを、こう変えてみる。

「要するに、〇〇みたいなもんです」

相手の顔が「?」から「あー」に変わる瞬間。

それが、伝わった瞬間だ。


この記事で参考にした本

『たとえる技術』せきしろ → 比喩を「修辞」ではなく「日常のコミュニケーションツール」として体系化した一冊。具体例が豊富で、すぐに使える。


合わせて読みたい

「言葉にできない」の正体 「わかってるのに言葉にならない」問題の解決策。たとえる技術と組み合わせると、伝える力がさらに上がる。

わからないことがあった。聞きたかった。──でも、聞けなかった。 質問できない問題の解決策。伝える側と聞く側、両方の技術が揃うとコミュニケーションが変わる。

一生懸命説明した。丁寧に、漏れなく。──なのに、相手は内容を覚えていなかった。 丁寧すぎる説明が逆効果になる問題。削ることと、たとえること、両方ができると最強。