論理的思考が苦手な人へ|つまずく5つの場所と、目的から選ぶ6冊
「論理的に考えられない」と感じるとき、詰まっている箇所は人によって違います。論点がずれている、話の構造が見えない、前提を聞かれると答えられない、正解を探してしまう、事実は言えるが示唆がない。それぞれの直し方と、目的から選べる6冊をまとめました。
「論理的に考えられない」は、頭の良し悪しの話ではありません。答えるべき問いを取り違えている人と、問いは合っているのに根拠の並べ方が崩れている人とでは、直すところがまるで違います。自分の詰まりがどちらなのかを先に切り分けてください。本も6冊を通読する必要はなく、切り分けの結果に対応する1冊で足ります。
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答えるべき問いがずれているとき『仕事に生かす地頭力』細谷功|「言われたことをやった」のに、評価されない理由
指示どおりに仕上げたのに評価が伸びない理由を、着手前の論点の取り違えに求める一冊。若手社員とコンサルタントの対話で進むので、理屈を追うより場面で掴みたい人向け。
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話や文章の構造が見えないとき『思考の質を高める 構造を読み解く力』河村有希絵さん|小学校の国語が、一生モノの思考力になる
どれが主張でどれが根拠かを見分ける訓練を、国語の「構造学習」から組み立て直した一冊。新聞の社説を図式化するなど手を動かす課題があるので、読むだけで終わらせたくない人向け。
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「なぜそう言える?」に詰まるとき『問題解決力を高める「推論」の技術』羽田康祐k_birdさん|情報は古くなる、推論力は古くならない
帰納法、演繹法、アブダクションという3つの推論法を、定義から日常のトレーニング法まで同じ形で解説する一冊。前提の置き方を型として覚えたい人向け。ビジネス書というより論理学寄りの構成。
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正解を探してしまい、自分の考えを出せないとき『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』高松智史|正解のない問いは「プロセス」で勝つ
上司に「合ってますか」と聞いてしまう状態を扱い、二つ以上の選択肢を作って推す理由まで添える型を示す一冊。題材が豊富で、考える過程そのものを追体験したい人向け。
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事実は言えるのに「だから何」が続かないとき『変える技術、考える技術』高松智史さん|MECEは「宝探しをやめる免罪符」だった
事実に示唆をセットで出す癖づけを、日々の言葉選びまで下ろして扱う一冊。理屈より、明日の会話で切り替えられる具体策がほしい人向け。
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道具を増やしたいとき『問題解決大全』読書猿さん|37の道具で「方法を生み出す方法」を手に入れる
問題解決の道具37個を集めた一冊。特定の場面向けではなく、手持ちの手が尽きたときに引く辞書として使う。ただし分厚く、フレームワーク集を期待すると思想の濃度に面食らうと書評でも断っている。最初の1冊には向かない。
先に答え
「論理的思考が苦手」と感じるとき、鍛えるべきは思考力そのものではなく、自分がどこで詰まっているかの特定です。
詰まりは大きく5種類あり、それぞれ処方が異なります。 全部を順に試すのは遠回りです。 次の表で近いものを1つ見つけて、該当する節だけ開いてください。
ただし、詰まりの原因が常に自分の側にあるわけでもありません。 そもそも問いが決まっていない、必要な情報が共有されていない、決める人が決めていない。 この手の状況では、考える技術を足しても議論は噛み合いません。 各節の末尾に、そう疑うべき兆候を書いています。
どこで詰まっているかを見分ける
| 場所 | 思い当たること | 詰まっているもの | 今日の一手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 言われた通りにやったのに「そういうことじゃない」と返される | 答えるべき問い | 着手前に「成功とはどういう状態か」を聞く |
| 2 | 人の話や資料を読んでも、どれが主張でどれが根拠か掴めない | 構造の見分け | 一番重い一文を探して、他をその根拠か例に仕分ける |
| 3 | 提案に「なぜそう言える?」と返されると言葉が出ない | 前提の言語化 | 送る前に「置いている前提」を一行書く |
| 4 | 上司に「これで合ってますか」と聞いてしまう | 自分の考えの出し方 | 二案作って、推すほうの理由まで添える |
| 5 | 事実は正確に言えるのに「で?」と返される | 示唆 | 事実のあとに「ここから言えるのは」を必ず1つ付ける |
どれも思い当たるなら、若い番号を先に片づけます。 答えるべき問いがずれたまま(場所1)構造を整えても(場所2)、精度の高い的外れができあがるだけだからです。
場所1 答えるべき問いがずれている
作業は丁寧なのに「そういうことじゃない」と返される状態です。 指示された作業と、相手が本当に解きたい問いが別物になっています。
手順
- 着手する前に「この仕事の成功とは、どういう状態を指しますか」と一言聞く
- 返ってきた答えを、自分の言葉で一行に書き直す
- その一行を相手に見せて、ずれていないか確認する
具体例
「競合の価格を調べておいて」と頼まれたとき、そのまま一覧表を作ると外れます。 聞くと「値下げすべきか判断したい」なのか「営業トークで反論材料がほしい」なのかで、必要なものが変わります。 前者なら価格帯の分布と自社の原価、後者なら競合が高い理由の要素分解です。
うまくいかないとき
聞いても「とりあえず全部」としか返ってこないことがあります。 そのときは相手の中でも問いが固まっていません。 二案を作って「どちらに近いですか」と見せるほうが早く決まります。
場所2 話や文章の構造が見えない
資料や議論を追えるのに、どれが主張でどれが根拠か掴めない状態です。 情報は入っているのに、重みの差がついていません。
手順
- その文章の中で「一番重い一文」を1つだけ選ぶ
- 残りの段落を「その根拠」か「その具体例」かに仕分ける
- どちらでもないものは、いったん脇に置く
具体例
新聞の社説を使うと練習になります。 まず主旨にあたる一文を探し、他の段落がそれを支える根拠なのか、単なる例示なのかを分けていきます。 仕分けが決まらない段落が出てきたら、その文章自体の構造が緩い可能性があります。
この見分け方を国語の「構造学習」から組み立て直したのが『思考の質を高める 構造を読み解く力』で、社説を図式化する課題も本の側で示されています。
うまくいかないとき
自分が書いた資料で仕分けができないなら、読解ではなく構成の問題です。 書く順番を、結論、理由、具体例、結論の並びに置き直してください。
場所3 「なぜそう言える?」に詰まる
結論は出せるのに、根拠を問われると言葉が出ない状態です。 無意識に置いている前提が、自分でも見えていません。
手順
- 送信ボタンを押す前に、その結論が成り立つために必要な条件を一行だけ書く
- その条件が崩れたときに結論も変わるかを確かめる
- 変わるなら、条件のほうを本文に書き添える
具体例
「この施策は効果があります」の裏には「過去に似た施策が効いた」という前提があります。 書き出すと「似ている」と言えるのか、が争点だと分かります。 そこまで見えれば、聞かれる前に「前回と条件が違うのはここです」と添えられます。
『問題解決力を高める「推論」の技術』は、帰納法、演繹法、アブダクションという3つの推論法を、それぞれ定義から日常のトレーニング法まで同じ形で解説しています。
うまくいかないとき
前提を書き出しても結論が変わらないなら、そもそも根拠が足りていません。 足りない事実を1つだけ決めて、それを取りに行くのが次のタスクになります。
場所4 正解を探してしまい、自分の考えを出せない
上司に「これで合ってますか」と聞いてしまう状態です。 確認しているつもりが、判断を渡してしまっています。
手順
- 「合ってますか」を封印する
- 案を2つ作る
- どちらを推すかと、その理由を添えて出す
具体例
「採用ページを改善したい」に対して、1案だけ持っていくと是非の話になります。 「応募数を増やす案」と「ミスマッチを減らす案」を並べ、前者を推す理由として今期の欠員数を添えると、議論が選択の話に変わります。
うまくいかないとき
2案が思いつかないのは、まだ問いが広すぎるからです。 場所1に戻って、何を成功とみなすかを先に決めてください。
場所5 事実は言えるのに「だから何」が続かない
数字も経緯も正確なのに「で?」と返される状態です。 情報の共有で止まっていて、そこから言えることが出ていません。
手順
- 事実を1つ述べる
- 続けて「ここから言えるのは」を必ず1つ付ける
- 言えることが浮かばないなら、その事実は今の話に要らない
具体例
「先月の解約率は3.2%でした」で止めると報告になります。 「3.2%で、前月から横ばいです。ここから言えるのは、先月打った施策は解約側には効いていないということです」まで言うと、次の判断に渡せます。
うまくいかないとき
示唆が思いつかない事実ばかりなら、集めている情報が問いに紐づいていません。 これも場所1に戻る合図です。
明日の会話で試す一手
5つをまとめて直そうとすると、それ自体が重い作業になります。 選ぶ基準は次の会話でそのまま口に出せるかの一点です。
決めかねるなら、場所1の一手を選んでください。 頼まれた仕事に手をつける前の、たった一つの質問です。
目的別に選ぶ本
6冊を、詰まりの種類と読み口の違いで整理し直します。 通読を前提にした並びではありません。
| 詰まっている場所 | 本 | 読み方の特徴 |
|---|---|---|
| 答えるべき問いがずれている | 『仕事に生かす地頭力』 | 若手社員とコンサルタントの対話で進む。理屈を追うより場面で掴みたい人向け |
| 話や文章の構造が見えない | 『思考の質を高める 構造を読み解く力』 | 社説の図式化など、手を動かす課題がある |
| 「なぜそう言える?」に詰まる | 『問題解決力を高める「推論」の技術』 | 3つの推論法を型として解説する。論理学寄りの構成 |
| 正解を探してしまう | 『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』 | 題材が豊富で、考える過程を追体験できる |
| 事実に示唆が続かない | 『変える技術、考える技術』 | 日々の言葉選びまで下ろした具体策が中心 |
| 道具を増やしたい | 『問題解決大全』 | 37の道具の辞書。分厚く、最初の1冊には向かない |
「入門書」として書かれた本は、この6冊にはありません。 どれも実務で使うことを前提にしています。読みやすさで選ぶのではなく、いま詰まっている場所で選んでください。
手を動かす課題がついているものを選びたい場合は、『構造を読み解く力』『推論の技術』『答えのないゲーム』『変える技術、考える技術』『問題解決大全』のいずれかになります。
このページで扱っていないこと
考えがまとまった先の話は、それぞれ別ページが担当します。
| 悩み | 担当ページ |
|---|---|
| 考えは整理できたが、説明すると伝わらない | 説明が下手・話が伝わらない人が読むべき本 |
| 分析が浅い、仮説が立てられない | 仮説が立てられない・分析が浅い人が読むべき本 |
| 判断がいつも裏目に出る | 判断をよく間違える・決断がいつも裏目に出る人が読むべき本 |
| 数字やデータが読めない | 数字やデータが読めない・仮説が立てられない人が読むべき本 |