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『超筋トレが最強のソリューションである』Testosterone・久保孝史|人生の悩みの大半は、筋肉で解決する

健康・メンタル ✍ Testosterone・久保孝史
約5分で読めます

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『超筋トレが最強のソリューションである』
目次

メンタルが弱いのは、心が弱いからではない。フィジカルが弱いからだ。

いきなり乱暴に聞こえるかもしれません。でも本書を読み終えると、この言い切りが妙に腑に落ちてきます。

著者はTestosteroneさん。110kgの肥満児から、米国留学中の筋トレで40kg近いダイエットに成功し、心身を立て直した人物です。そこに、早稲田大学大学院でスポーツ科学を研究する久保孝史さんが、100本を超える論文で科学的な裏づけを与えていく。

熱い持論と冷静なエビデンスの二人三脚です。だから「気合だけでは動けない」論理派の人ほど、読むと納得して動き出せる一冊になっています。

図解

この本がしている、たった一つの「再定義」

本書のメッセージはタイトルがすべてです。筋トレは世の中の問題のほとんどを解決する「最強のソリューション」だ、と。

「信じろ。筋トレは最強のソリューションだ。」

私がこの本を画期的だと感じるのは、語っている内容そのものより、筋トレの位置づけを丸ごと変えてしまった点です。これまで筋トレは「ボディビルダーやアスリートのもの」でした。

それを本書は「現代人のメンタル不調や生産性低下に効く処方箋」へとずらしてみせる。肉体を変える手段ではなく、人生を変える手段。

その効能を、本書はメンタル・アンチエイジング・ボディメイク・ビジネス・ダイエット・長寿・誤解の解消・自信という8つの切り口で展開します。8章すべてに論文の裏づけがあるのですが、ここでは全部を律儀には追いません。

私が「これは効く」と唸った代表的なエッセンスを軸に、本書が何を言いたい本なのかを伝えていきます。

「自分を好きになれる」が、一番の効能だった

数ある効能の中で、本書が最も強く押し出すのはメンタルへの作用です。やる気や闘争心を生むテストステロン、心を落ち着かせる「幸せホルモン」セロトニン、多幸感をもたらすドーパミンやβエンドルフィン。運動でこれらが分泌され、焦燥感や不安感が和らぐ。理屈としては納得感があります。

面白いのは強度の話で、焦燥感の軽減には限界まで追い込む高重量より、50〜60%程度の中重量のほうが効果的だという研究が引かれている点です。つまり、きつすぎる必要はない。ここはハードルの高さに尻込みしている人にこそ届けたい一節でした。

そして本書が最大の効果だと言い切るのが、自尊心です。

「『自分を好きになれる』というのは筋トレの一番大きな効果と言っていい。」

昨日挙がらなかった重量が、今日は挙がる。その小さな成功体験の積み重ねが、自己肯定感を静かに育てていく。これがいいのは、筋トレが運や才能にほとんど左右されない点です。

仕事の成果は相手や環境に揺さぶられますが、筋肉は裏切らない。やった分だけ確実に返ってくる、数少ない努力比例型のシステムなのです。

自信がない、ネガティブ思考に引っ張られる――そういう悩みを抱えた人にこそ、この本質は刺さると思います。

論理派を黙らせる「数字」が、ちゃんと並んでいる

この本の強みは、感情論で終わらないところです。「なんとなく体にいい」では動けない人のために、久保さんが具体的な研究結果を次々と差し出してきます。代表的な数字をいくつか紹介しておきましょう。

ダイエットの章では、高タンパク食の優位を「食事誘発性熱産生(DIT)」で説明します。食べ物を消化する過程でも私たちはカロリーを消費していて、その割合は糖質が約6%、脂質が約4%なのに対し、タンパク質はおよそ30%。

つまりタンパク質は「食べるだけで多めにカロリーを使う」、いわばズルのような栄養素なのです。だから「プロテインで太る」は誤解だ、と本書は切り捨てます。

長寿の章はさらに直接的です。約8万人を調べた研究では、週2回以上筋トレをする人の全死亡リスクが23%、がん関連死亡リスクが31%低かった。約8000人の男性調査でも、筋力が高い人の死亡率は20〜30%低い。「健康にいい」を超えて「死ににくい」という水準の話なのです。

ほかにも、アンチエイジングの章では何歳からでも筋肉も骨も育つこと(スクワットで骨にオステオカルシンが分泌され骨密度が上がる、というメカニズム付き)、ビジネスの章ではオバマ氏やティム・クックといった世界のエリートが多忙でもジムを欠かさない理由が並びます。どの章にも、論理派の眉をぴくりと動かす一行が仕込まれている。

「攻撃性が下がる」という、直感に反する話

個人的に一番意外だったのが、自信を扱う最終章です。筋トレで筋力が上がると、自己評価や「希望」が高まる一方で、ネガティブ思考や攻撃性はむしろ下がる、というのです。

象徴的なのが、刑務所の受刑者に8週間筋トレをさせた研究。怒りや敵意の指標が大きく低下しました。私はてっきり逆だと思っていました。

「弱くて自信がないから攻撃的になったり、相手を威嚇して自分の力を必要以上に大きく見せないと不安でたまらなくなったりする。」

物理的な強さが精神的な余裕を生み、他人の目が気にならなくなる。攻撃性は強さの表れではなく、弱さの裏返しだった――そう読み替えると、ふだん見ている人間関係の景色まで少し変わって見えてきます。

著者は、限界もちゃんと書いている

私がこの本を信頼できると感じるのは、都合のいい話だけを並べていないからです。

たとえば「誤解の解消」の章では、「筋トレで体が硬くなる」「若い頃の筋トレで身長が止まる」といった俗説を研究で否定する一方、激しい運動の直後は数日間、一時的に免疫が落ちる「オープンウインドウ説」をきちんと挙げ、大事なイベント前は強度を調整せよと注意を促します。「筋力と自尊心に相関はあるが、どちらが原因かは断定できない」といった、断言しきれない領域も誠実に認めている。

そしてもう一つ、本書が繰り返し釘を刺すのが、トレーニングだけでは足りないという事実です。筋肉の成長には栄養と睡眠が不可欠で、「睡眠を削る=命を削る」とまで言う。

筋トレ・食事・睡眠の三要素が揃って初めて効果が最大化する。ここを誤解して運動だけ頑張ると、筋肉はむしろ減る。耳の痛い話ですが、この厳しさこそが本書を一段信頼できるものにしています。

こんな人に効く本

この本が向いているのは、まず「精神論では動けない」論理派です。エビデンスがないと一歩が出ない人ほど、本書の論文ラッシュに背中を押されます。

そして、自己肯定感が低く、自分を好きになれないと感じている人。メンタル・健康・仕事・自信というバラバラに見える悩みの根っこに、一本の解決策を差し出してくれる構成は、読むだけで少し心が軽くなります。

逆に、すでに筋トレ・食事・睡眠の習慣が整っている人や、高負荷トレーニングの専門的な技術指導を求める上級者には物足りないかもしれません。これは技術書ではなく、「やる気のスイッチ」を入れるための本だからです。

最後に、本書を貫く一文を。

「つべこべ言わず筋トレしてみてほしい。世界最高峰の知識があっても、それを使わなければ1円の価値もない。」

理不尽な世の中で落ち込んだとき、確実に成果が出る場所が一つあるというのは、それ自体が救いになる。読み終えると、つい腕立て伏せの一回でも始めたくなる。そんな本です。


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