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『筋トレが最強のソリューションである』Testosterone|悩みの99%は筋トレとプロテインで片づく

健康・メンタル ✍ Testosterone
約7分で読めます

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『筋トレが最強のソリューションである』
目次

落ち込んだ夜、布団に入ってからも同じ場面をぐるぐる再生してしまう。あの一言、ああ返せばよかった。明日もきっと気が重い。

そういう夜への、この本の処方箋は驚くほど短い。「考えてないで、とりあえず筋トレしろ」。それだけです。

著者のTestosterone(テストステロン)さんは、人生の悩みのほとんどは筋トレで片づくと言い切ります。メンタル、ダイエット、仕事、恋愛、人間関係。例外なく、全部。

乱暴に聞こえますよね。でも読み進めると、この身もフタもない主張の裏に、ホルモンと栄養学のそれなりに筋の通った理屈が敷かれていることがわかってきます。この記事では、なぜ「悩んだら筋トレ」が成立するのか、本書の論理を順に追っていきます。

図解

著者は110kgの肥満児だった

この本の説得力は、まず著者自身の経歴から来ます。

Testosteroneさんは1988年生まれ。学生時代は体重110kgの肥満児でした。それがアメリカの高校への転校をきっかけに、選択科目で筋トレと出会って人生が一変します。

1年でベンチプレス130kg、スクワット170kgを挙げるまでになり、体重は80kgまで絞れた。30kgの減量です。しかも体だけでなく成績まで上がった。

その後はUFCの一流ファイターが集うチームで一緒に汗を流し、世界一を狙う男たちの壮絶な減量や1日3部練を間近で見てきた。今はアジアの大都市で社長を務めています。

つまり「筋肉が人生を変えた」という言葉が、ここでは単なるキャッチコピーではない。自分の身体で証明した人間が書いている。だからこの本の押しの強さには、ある種の凄みがあります。

悩みの大半は「ただの気分」だという挑発

本書の出発点は、私たちが悩みをどう捉えているか、その前提をひっくり返すところにあります。

著者はこう書きます。

ほとんどの悩みは根源なんてない気分的な問題なんですよ。

正直、最初は反発を覚える一文です。こっちは本気で悩んでいるのに、と。でも「ムカっとする」ということは、どこかに心当たりがあるということでもある。

冷静に振り返れば、夜中に深刻に思い詰めていたことの多くは、朝になって体が動き出すと「まあいいか」に落ち着いている。本当に解決したわけではなく、気分が切り替わっただけ。著者はその経験的事実を突いてきます。

ここでのキモは、気分の問題なら気分を変えればいい。そして気分は、考え方をいじるより身体を動かすほうが速く変えられる、というロジックです。

「とりあえず筋トレ」は思考停止ではなく、ぐるぐる思考から物理的に抜け出すためのショートカットだ、と読み替えると腑に落ちます。

「気分ブチ上げオールスターズ」というホルモンの理屈

では、なぜ体を動かすと気分が変わるのか。著者が持ち出すのはホルモンと脳内物質です。

筋トレをすると、テストステロン、セロトニン、ドーパミン、エンドルフィン、アドレナリンが分泌される。著者はこの面々を「気分ブチ上げオールスターズ」と呼びます。命名のセンスにこの本の体温が出ています。

中心にいるのがテストステロン。「勝者のホルモン」とも呼ばれる男性ホルモンで、出てくると根拠もなく全能感がわく。「周りに敵が見当たらない」「世界征服してみるか」とすら思えてくる、と著者は半ば冗談めかして書きます。

ポイントは、その全能感に根拠がないことです。悩みそのものは一ミリも消えていない。にもかかわらず「まあいいか、俺には筋肉があるし」と思えてしまう。

だから著者は筋トレを「無料の処方箋」と呼ぶわけです。気分が沈んだら薬を買う代わりにジムへ行く、という発想ですね。

具体的な処方も用意されています。メンタルが弱ったとき試すべき行動として本書が挙げるのは5つ。8時間の睡眠、週3日の運動、朝に10分太陽光を浴びる、3食しっかり食べる、そして誰でもいいから悩みを話す。最後の「話す相手」はダンベルでも構わない、と添えるあたりが実にこの本らしい。

「筋肉の鎧」が心の防壁になる

筋トレの効能は、体内のホルモンだけにとどまりません。外から見える肉体そのものが、心を守る装備になると著者は説きます。

これが「筋肉の鎧」という考え方です。具体的なメリットは3つ。ひとつは抑止力で、犯罪や詐欺のターゲットになりにくくなる。著者いわく「もっと弱そうな奴を狙おう」効果。

ふたつめは説得力で、「怒らせたら怖そう」という謎の威圧感が生まれる。みっつめは自尊心で、いざとなれば力ずくで対抗できるという余裕が、上司や取引先の前で卑屈にならずに済む土台になる。

ここは少し留保が要る部分でもあります。物理的な強さで人間関係の優位を語る発想は、人によっては危うく響くでしょう。ただ著者の主張の核は腕力そのものではなく、「自分はやれることをやっている」という自己効力感にあると読むべきです。

学歴や肩書きは目に見えないが、鍛えた体は目に見える。その可視性が、他人の陰口や理不尽な要求を気にならなくさせる、という心理の話だと受け取ると素直に頷けます。

ダイエットの正解は「食べて筋トレ」

第2章のダイエット論は、本書でいちばん実用的で、いちばん常識を裏切ってくる箇所です。

多くの人がダイエット=食べる量を減らすことだと思っています。著者はそれを真っ向から否定します。

食べずに運動して減るのは脂肪ではなく筋肉だ、と。筋肉が減れば基礎代謝が落ち、結果としてリバウンドしやすい体になる。だから「食べないダイエット」はむしろ逆効果だというわけです。これまでの我慢は何だったのか、と頭を抱えた人も多いはずです。

正解は、しっかり食べて筋トレをすること。筋肉が増えれば基礎代謝が上がり、運動していない24時間も脂肪を燃やしやすい体になる。運動中しかカロリーを使わない有酸素運動とは、ここが決定的に違う。

そして著者はダイエットを、気合いではなく数値の管理として捉え直します。タンパク質・炭水化物・脂質というマクロ栄養素のバランスを最適化する。摂取カロリーは基礎代謝からマイナス500キロカロリー前後、タンパク質は女性でも1日80〜100gは確保する。

30分走ってもオニギリ1.5個分しか消費しない一方、週2回・2ヶ月のプランなら運動は16回に対し食事は180回。運動より食事のほうが圧倒的に回数が多く、痩せるかどうかの大半は食卓で決まるという事実は、突きつけられると効きます。

結論として著者は「ダイエットは一時的な行為ではなくライフスタイルだ」と言い切ります。期間限定の我慢ではなく、一生続く生活設計へ。この視点の転換こそ、この章の本当の収穫だと思います。

筋トレはそのままビジネススキルになる、という拡大解釈

第3章以降は、筋トレが仕事や人間関係の武器になるという話へ広がっていきます。

理屈はこうです。筋トレを継続するには、栄養補給・トレーニング時間の確保・回復のための睡眠を管理しなければならない。だからタイムマネジメント能力が必然的に鍛えられる。

著者は「筋トレは生活の中に規律を創造する」と表現します。鍛えた体は、自己管理ができて継続できる人間だという証明にもなる。だから「ベンチ180kgはTOEIC満点より価値がある」とまで言い切る。

極端な比喩ですが、努力の可視化という一点では筋肉のほうが雄弁だ、という主張です。

努力観のメタファーも印象的で、「もう無理だと思ってからの2〜3回を死に物狂いで挙げるから筋肉は成長する。人生も同じだ」と書きます。これは超回復、つまり壊れた筋繊維が休息と栄養で前より強く修復される現象を、人生の停滞期に重ねたものです。

苦しい時期を成長の準備期間と捉え直す視点として、なかなか使えます。

恋愛・人間関係についての主張はシンプルで、すべては自分を好きになることから始まる、というもの。体が変わると自信がつき、それが態度に出て人を惹きつける。

一方で人間関係にはドライで、お金で切れる程度の付き合いは早く切ったほうが時間の節約になる、愚痴はストレス発散どころかネガティブへの執着を育てるだけだ、と一線を引きます。

根底にあるのは「健全な自己中心」——他人の目より自分の幸せを優先することが、結局は周囲の幸せにもつながる、という考え方です。

この本の限界を知ったうえで使う

ここまで読むと万能薬のようですが、本書には明確な限界があります。

あらゆる問題を筋トレに帰結させる構造ゆえに、医学的治療が必要な重い精神疾患や、個人では動かせない構造的な社会問題に対しては、どうしても過度な自己責任論に傾きます。

著者自身「人生がうまくいかない原因はほぼ100%自分の中にある」と書いており、背中を押す言葉としては強烈ですが、どんな状況にも当てはめると逆に自分を追い詰めかねない。

これは科学的エビデンスを積み上げる本ではなく、感情に直接訴えてくる本だと割り切って読むのが健全です。

それでもこの本の値打ちは、行動のハードルを極端に下げてくれるところにあります。考えても答えの出ない夜に、「とりあえずバーベルを上げる」という具体的な動作がひとつあるだけで、人はわずかに救われる。

難しい理屈はいらない、動けばいい——その単純さは、思考の沼にはまりがちな人ほど効きます。

落ち込んだら、考えるより先に体を動かす。今日の帰り道、エレベーターを階段に変えるところからでも、この本の入口には立てます。99%は無理でも、まず1%だけ試してみる価値はあると思います。


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