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『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』デイヴ・アスプリー氏|集中できないのは意志じゃなく「脳のエネルギー漏れ」だった

健康・メンタル
約5分で読めます
『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』

午後3時、頭に霧がかかったみたいになる。さっきまで考えていたことが、言葉にならない。

それを「自分の集中力が足りないから」「気合いが足りないから」と片づけてきた人へ、本書はいきなり冷や水をかけてきます。

意志力がないと自分を責めるのをやめよう――これは道徳的な問題じゃない!

著者のデイヴ・アスプリー氏は、かつて巨大企業の技術戦略部門を率い、MBAも取って成功して見えた人物です。なのに本人は、ひどい肥満と慢性疲労、集中力の欠如に悩んでいた。そして莫大な額を自分の体に投じて、原因を突き止めていきます。

問題は能力でも性格でもなく、脳から「エネルギーが漏れていた」こと。エンジンが壊れた車は、どんなにアクセルを踏んでも速く走らない。本書はその漏れを止め、脳というハードウェアそのものをアップグレードしようとする一冊です。

図解

こんな人におすすめ

理論より「明日の朝、何を変えればいいか」を知りたい人にこそ向いています。

脳の不調は「故障」であって「弱さ」ではない

本書の主張は一本の線でつながっています。

脳は重さこそ体重のわずか数パーセントなのに、全身のエネルギーの大きな割合を一手に食う、燃費の悪い器官です。そのエネルギーを作っているのが、細胞の中にいる小さな発電所「ミトコンドリア」。集中力も記憶力も気分の安定も、結局はこの発電所がどれだけ効率よくエネルギーを生み出せるかにかかっている、というのが著者の見立てです。

逆に言えば、疲労や物忘れ、イライラは「節電モードに入った脳」が出しているサイン。心当たりのある症状をいくつ挙げられるかは、本書のチェックリストで確かめてみてください。

ここが本書最大の強みだと感じました。脳の不調を性格や努力の問題から切り離し、物理的な「ハードウェアの故障」として扱う。だから対策も、気合いではなく具体的な行動に落ちる。脳を弱めるものを取り除き、良質な燃料を入れ、ミトコンドリアを鍛える。発想がシンプルで、再現性の手触りがあります。

なぜエネルギー切れがこれほどの不調を生むのか。著者は脳の三層構造を引きながら、本能的な「ラブラドール脳」が現代の小さな刺激にいちいち過剰反応してエネルギーを浪費し、最も賢い判断を担う前頭前皮質に燃料が回らなくなる、という仕組みで説明します。冷静に考えられず、衝動的になり、目先の糖を欲しがる。この見取り図だけでも、自分の午後の崩れ方が腑に落ちる人は多いはずです。

「糖」ではなく「良質な脂肪」という逆張り

具体策の中心は、まず食事です。

本書がひっくり返す常識の一つが「脳の燃料=糖」という思い込み。実は脳は、脂肪が分解されてできる「ケトン体」を燃料にしたほうが効率よく働く、というのが著者の主張です。神経細胞の通信を高速化する絶縁体も、脳に大量に含まれるコレステロールも、もとはといえば脂肪。コレステロールや飽和脂肪を敵視する常識とは、まるで逆の景色が見えてきます。

ケトン体を代謝しているとき、グルコースを代謝しているときよりも心臓は28%多くエネルギーを得ている。(リチャード・ヴィーチ博士の研究より)

脳と心臓はほぼ同じ密度でミトコンドリアを持つので、脳でも同じことが起きる――という橋の渡し方が、この本の説得力の作り方をよく表しています。では具体的にどんな脂肪を、どんな食材から、どう組み合わせて摂ると吸収率が上がるのか。代表例としてグラスフェッドのバターや天然のサケが挙がりますが、リストの全体像と相性のコツは本書で確かめてほしいところです。

引き算の話も鋭い。慢性炎症がミトコンドリアの効率を落とすという指摘に加え、本書独自の警戒が「カビ毒(マイコトキシン)」です。穀物やコーヒー、ナッツなどに自然発生し、ミトコンドリアを直接阻害する。その汚染率を示すデータは地味に怖く、「赤ワインは脳に良い」という通念さえばっさり否定されます。ただ、この警戒は本書の独自性であると同時に限界でもあって、徹底すれば高品質な食材やサプリへの投資が前提になる。すべてを実践するハードルは決して低くない。そこは割り引いて読む必要があります。

「光」を栄養として扱うという視点

食事と並ぶ目玉が「光」の話です。

著者は、白色LEDや画面から出る人工光を「ジャンクライト」と呼びます。ジャンクフードと同じ発想で、自然光に必要な周波数が欠け、ブルーライトが過剰だというのです。日中の光が体内時計を整え、それが夜の睡眠ホルモンに変わる。だから昼はしっかり光を浴び、夜は照明を落とす――言われてみれば当たり前なのに、ほとんどの人が逆をやっている。

睡眠も運動も寒さも瞑想も、本書を貫くのは「量より質」という一貫した発想です。たとえば運動なら、長々と走るより短く追い込むほうが効率的だと説き、脳を成長させる「奇跡の肥料」と呼ばれる物質に触れます。寒さや呼吸を使った手法も並びますが、ここでは手順を逐一なぞるより、「身近な習慣を少し変えるだけで脳の土台が変わりうる」という設計思想を受け取るのが正解だと思います。具体的な分数や回数は、本書の指示に従ってほしい。

「もう歳だから」という言い訳も、本書は静かに否定します。脳はいくつになっても作り変えられる――その根拠となる数字は、読んで受け取ってください。

どんな人に効くか

この本の値打ちは、不調を「自分のせい」から「仕組みの問題」へと置き換えてくれる点にあります。意志が弱いのではなく、燃料と環境が合っていないだけ。その視点に立てた瞬間、打つ手が精神論から具体策に変わる。ここが効きどころです。

だから、健康法の根性論にうんざりしている人、身近な習慣からパフォーマンスを底上げしたい人には強くおすすめできます。一方で、細かい栄養理論より大枠だけ知りたい人や、食材・サプリへの投資に抵抗がある人には、情報量が過剰に感じられるかもしれません。

口に入れるものすべてをコントロールするのはあなたなのだから、この知識は大きな力となる!

明日の朝、コーヒーに何を入れるか。夜、画面の明るさをどうするか。その小さな選択が、脳というOSを少しずつ書き換えていく。どの一手から始めるかは、本書を開いて選んでみてください。


合わせて読みたい

『Go Wild 野生の体を取り戻せ!』ジョン・J・レイティ 本書がBDNFを「脳の奇跡の肥料」と紹介したレイティ博士の本です。運動が脳の構造を変える仕組みを、もっと深く知りたくなったら次はこれを。

カロリーを減らしても、痩せない。 「糖質より良質な脂肪」というHEAD STRONGの食事観と地続きの一本。カロリー計算という常識を疑う視点が、本書の脂肪論をすっと腑に落としてくれます。

「睡眠の質」を決めるのは、量ではなく「最初の90分」だった 本書の「睡眠は量より質」という主張を、別の角度から補強する記事。光のコントロールと合わせて読むと、夜の過ごし方が具体的に変わります。


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