その不調の原因は、「血流」かもしれない
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「血液をサラサラにすれば健康になる」。そう思って水をこまめに飲んでいる人は多いはずです。
でも、疲れやすさや冷え、むくみ、気分の落ち込み。原因のはっきりしない不調の背景にあるのは、血が「ドロドロ」だからではなく、そもそも「足りない」ことかもしれません。
漢方薬剤師の堀江昭佳さんは『血流がすべて解決する』で、こう言っています。多くの人がめざすべきは血液サラサラではなく「血流たっぷり」だ、と。
正直に言うと、私もこれを読むまで逆に考えていました。血の巡りが悪い=血がドロドロして詰まっている、と。
今日は、その思い込みを一度ほどいてみます。
血は「運び屋」で、届かないと不調が出る
まず、血が体の中で何をしているか。
血液は、酸素と栄養を全身の細胞に届けます。そして、老廃物や二酸化炭素を回収します。体温を運び、免疫で体を守る働きもあります。
つまり血は、体じゅうを走る運び屋です。
この運び屋が足りなかったり、流れが滞ったりすると、届くべきものが届かない。すると、はっきり「病気」とは言えないのに、なんとなく調子が悪い、という状態になります。
たとえば脳です。堀江さんによれば、脳には全身の血流の15%が集まり、酸素の消費も多い。血が届きにくくなれば、頭がぼんやりしたり、気分が落ちたりしても不思議ではありません。
ここで大事なのは、「サラサラかどうか」の前に「足りているか」を見ることです。
血が足りない状態を、漢方では「血虚(けっきょ)」と呼びます。堀江さんは、相談に来る女性の9割以上がこれに当てはまると書いています。妊婦健診で貧血がみられる日本女性は4割、という数字も紹介しています。
血が足りない人が、サラサラをめざして水を大量に飲む。すると、少ない血をさらに薄めて無理に巡らせることになり、かえってめまいや立ちくらみを招くこともある。堀江さんはそう指摘します。
堀江さんは、血流を「つくる」「増やす」「流す」の3つで考えます。ここから、その順番で見ていきます。
つくる:血の材料は、胃腸を通ってやってくる
最初は「つくる」。血の材料をちゃんと取り込めているか、という話です。
血の主成分は、水分を除けばタンパク質です。そして鉄。この2つが足りないと、量も質も落ちます。
意外なのは、材料をとる「量」より、胃腸が受け取れる「状態」のほうが先だという点です。
堀江さんは「満腹より空腹」と言います。胃は食後90分ほどで空になり、そこから掃除を始める。いつも何か入っていると、胃腸は休めず、吸収する力が落ちていきます。
だから、夕食を軽くして空腹の時間をつくる。血の材料をとる前に、まず受け皿を整える。順番が逆だと効きません。
材料の選び方にもコツがあります。たとえば鉄。ほうれん草が定番ですが、堀江さんによると、ほうれん草の鉄分は1951年の13.0mgから2015年には2.0mgへ、6分の1以下に減っています。しかも野菜の鉄(非ヘム鉄)は吸収率が5%ほど。肉の鉄(ヘム鉄)は25%です。同じ鉄でも、体に入る量が5倍違います。
この「胃腸から整える」という発想は、神経内科医の佐古田三郎さんの本とも重なります。佐古田さんは『医者が教える長生きのコツ』で、腸を整えることがあらゆる不調の土台だと言っています。精製された糖質のとりすぎが腸を荒らし、栄養の吸収を妨げる。だから、菓子パンより、ごはんと味噌汁のような昔ながらの食事に戻すことをすすめています。
材料を増やす前に、受け取る側の胃腸を整える。ここが最初の一歩です。
増やす:血は、眠っている間に補充される
次は「増やす」。ここで効いてくるのが睡眠です。
血は、寝ている間につくられ、補充されます。堀江さんは「23時までに眠る」ことを重視します。夜中の造血の時間に起きていると、血を増やすチャンスを逃してしまう。
そして朝日。朝に光を浴びると体内時計がリセットされ、夜の眠りが深くなります。夜のためのケアは、実は朝から始まっています。
睡眠が足りないと、体は別のダメージも受けます。『最高の体調』で鈴木祐さんは、睡眠不足が体内の炎症レベルを上げるという研究を紹介しています。慢性的な炎症は、原因不明の疲れやだるさ、気分の落ち込みと関係が深い。血を増やす時間を削ることは、炎症を増やす時間をつくることでもあります。
たとえば、夜中の3時まで起きてスマホを見ている生活。これは血をつくる時間を削り、同時に炎症を招く。二重に不調へ近づいていきます。
佐古田さんも、睡眠のリズムが全身の調子を左右すると言っています。3人の著者が、切り口は違っても同じ場所を指しています。よく眠ることは、血を増やす土台です。
流す:足に落ちた血を、戻す力が要る
最後が「流す」。つくって増やした血を、体のすみずみまで巡らせる段階です。
ここで見落とされがちなのが静脈です。心臓から送り出す動脈より、戻ってくる静脈のほうが、実は血を多くためています。堀江さんによれば、静脈の血液量は動脈の4倍。立っていると重力で足に血が落ち、体重50kgの女性で最大2割ほどが足にたまるといいます。
この足の血を心臓へ押し戻すのが、ふくらはぎです。「第2の心臓」と呼ばれます。座りっぱなしでふくらはぎが動かないと、血は足で停滞し、むくみや冷えになります。
冷えには、やっかいな仕組みがあります。足で冷えた血が全身を巡り、体ぜんぶを冷やしていく。足が「冷却装置」になってしまう。だから、足首を温めてふくらはぎを動かすことが、全身の冷えをほどく近道になります。
流れには、自律神経も関わります。緊張してストレスがかかると血管が縮み、血は流れにくくなります。ここで役に立つのが、ゆっくりした呼吸です。
鈴木祐さんは『最高の体調』で、自然に触れることが副交感神経を強く働かせると紹介しています。週に1回30分、自然の中で過ごすだけで、うつの発症リスクが37%下がったという研究もあるそうです。深い呼吸、軽い散歩、緑のある場所。どれも、縮んだ血管をゆるめて流れを取り戻す方向に働きます。
明日からできること
3つを、行動に落とします。特別な健康法ではありません。土台を整えるだけです。
誤解:血流をよくするには、まず激しい運動で汗をかけばいい → 血が足りていない状態で無理に流そうとすると、めまいなど逆効果になることがあります。順番は「つくる」「増やす」が先です。
正しいアプローチ:まず胃腸を休め、材料と睡眠を整える → 夕食を軽くして空腹の時間をつくる。朝はごはんと味噌汁のような消化のいい食事にする。鉄は肉から。夜は23時を目安に眠り、朝は光を浴びる。
そのうえで、日中に「流す」を足します。
たとえば、歯みがきの間にかかとを上げ下げする。1時間に一度は立ってふくらはぎを動かす。足首を冷やさない。寝る前に、息を長く吐く呼吸を数回する。
どれも数分で始められます。血がすべて入れ替わるには約4か月かかると堀江さんは言います。すぐ変わらなくても、焦らなくて大丈夫です。
ひとつ、大事な注意があります。
動悸、息切れ、極端な疲労、立っていられないほどのだるさ。こうした強い症状があるときは、生活習慣の問題ではなく、貧血や別の病気が隠れていることがあります。自己判断で「血流のせい」と片づけず、内科や婦人科を受診してください。ここで書いたのは日々の土台づくりで、医師の診断や治療の代わりにはなりません。
おわりに
不調を「気のせい」や「性格」で片づける前に、血がちゃんとつくられ、増え、流れているかを見てみる。それだけで、打つ手は具体的になります。
体の調子は、根性ではなく、運び屋の状態で決まることがあります。
この記事で参考にした本
『血流がすべて解決する』堀江昭佳 → 血流を「つくる」「増やす」「流す」の3段で捉える枠組み。血が「足りない」という視点をくれた一冊。
『最高の体調』鈴木祐 → 原因のはっきりしない不調と慢性炎症、睡眠、自律神経のつながりを研究ベースで整理してくれる。
『医者が教える長生きのコツ』佐古田三郎 → 腸と食事、睡眠のリズムという「土台」から健康を立て直す視点。血の材料を受け取る側の話につながる。
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『血流がすべて解決する』堀江昭佳|「血液サラサラ」を頑張った人ほど、不調になっていた このコラムの土台にした本の紹介記事です。「つくる」「増やす」「流す」をもっと詳しく知りたい人はこちらから。
「現代病」は進化のミスマッチ?進化医学が教える最高の体調を手に入れる方法 原因のはっきりしない不調と「炎症」の関係を扱った記事。血流と合わせて読むと、体調の土台の整え方が立体的になります。
【薬を減らして健康になる】佐古田三郎『医者が教える長生きのコツ』から学ぶ、病院に頼らない現代養生訓 血の材料を受け取る「腸」と、睡眠のリズムの話。食事から体調を立て直したい人におすすめです。