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人脈が機能しないのは、紹介する側にリスクがあるから

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約6分で読めます コミュニケーション・文章術
目次

SNSのつながりは500人を超えた。交流会で名刺も集めた。それでも、転職や新しい仕事の話は回ってこない。一度もです。

こうなると、たいていは「まだ数が足りない」と考えます。もっと会いに行こう、もっとつながろう、と。

ただ、仕事の話が人づてに届くまでの道筋を分けてみると、数を増やしても越えられない関門が一つあります。情報を持っている人が、あなたのために実際に動くかどうか。その判断を下すのは、あなたではなく相手です。

「知っている人」と「動いてくれる人」は別の数字

社会学者のサンドラ・スーザン・スミス氏は、人のつながりが仕事に結びつくまでを二つの段階に分けて考えました。仕事の情報や影響力を持つ人とつながっているか。そして、その人が実際に手を貸すか。前者があっても、後者が起きるとは限りません。

名刺やフォロワーを増やす努力で増えるのは、前者です。後者は、相手が「この人のために動いてもいいか」を判断した結果として起きます。

たとえば、知人の勤め先で求人が出たとします。知人があなたに声をかけるには、あなたがその種の仕事を探していると知っていて、紹介しても自分の立場が悪くならないと思えなければなりません。どちらかが欠けると、話はあなたの手前で止まります。

人脈が「機能しない」と感じるとき、止まっているのはたいていこの二つめの段階です。研究が示すその中身を、順に見ていきます。

1本のつながりの力は、親しい相手ほど強い

「仕事の話は、親しい友人より、ちょっとした知り合いから来る」。人脈の話でよく引かれる説です。これを大規模なデータで確かめ直した研究があります。

タフツ大学の経済学者ローラ・ジー氏らは2017年、米国のFacebook利用者600万人のデータを分析しました。もともと友人だった人と同じ勤め先で後から働き始めたら、その友人から仕事の手助けを受けた目印とみなします。600万人のうち約40万人がこれに当てはまりました。

親しさは、Facebook上でのやり取りの回数と、共通の友人の数で測っています。

結果は二段構え。同じ職場にたどり着いた相手の多くは、やり取りの少ない弱いつながりでした。ところが1本ずつ比べると、親しい相手ほど、同じ職場で働くことになる確率は高かったのです。

弱いつながりが目立つのは、ほとんどの人にとってつながりの大半が弱いつながりだからです。数で勝っているだけで、1本あたりでは親しい相手のほうが役に立っていました。

たとえば、年に一度あいさつを交わすだけの知り合いが200人、毎月話す相手が5人いる人を考えてみてください。仕事の話が知り合い経由で届く回数のほうが多くても不思議はありません。200本のうち1本が当たれば足りるからです。それでも1人あたりで見れば、毎月話す5人のほうがずっと当たりやすい。研究の結果は、この形をしていました。

同じ職場で働き始めたことを手助けの目印にしているので、実際に紹介があったかまでは分かりません。それでも、「知り合いを増やせば機会が増える」という発想には注意が要ります。増やしたつながりの一本一本は、動いてくれる見込みの低い関係のままだからです。

紹介とは、自分の名前を貸すこと

では、なぜ親しい相手ほど動いてくれるのか。スミス氏が2005年に発表した研究は、紹介する側の迷いを直接聞き取っています。

対象は、米国ミシガン州南東部の都市に住む、低所得のアフリカ系米国人105人です。求人を知ったら知人に伝えるか、頼まれたら手を貸すか、手を貸すことの良い面と悪い面は何かを尋ねました。

80%を超える人が、知人の紹介に不安を口にしました。心配の中身は三つです。相手がやる気を出さないのではないか。手間と気力を取られるのではないか。採用されたあと無責任に働いて、紹介した自分の評判まで傷つくのではないか。

誰を助けるかを分けたのは、相手の過去のふるまいでした。職場や家庭で信頼できない行動をしてきた人は、リスクが高いとみなされ、ほとんど考慮されません。

もう一つ効いていたのが、手を貸す本人の評判です。雇い主から高く評価されている人は、評判の芳しくない相手にも手を貸しました。評価が下がるほど、相手を厳しく選ぶようになります。

たとえば、職場で信頼の厚いベテランなら、多少心配な知人でも「一度会ってみてください」と口にできます。入ったばかりの人にとっては、同じ一言がずっと重くなります。紹介のしやすさは、紹介する人の足場にも左右されるわけです。

評判に傷のある人は、求人の情報だけは伝えても「でも、私の名前は出さないで」と念を押していました。論文の題名は、この言葉から取られています。

特定の地域と階層を対象にした研究なので、そのまま一般化はできません。ただ、スミス氏らは2017年に、ある大規模な公的機関で働く、人種も階層もさまざまな146人にも聞き取りをしています。そこでも、何を条件に手を貸すか、どんなリスクを感じるか、相手をどうふるい分けるかは人によって違い、三つの考え方に分かれました。

紹介は、情報を渡すだけでは終わりません。自分の名前を担保にする行為です。親しい相手ほど動いてもらえるのは、紹介する側が相手の働きぶりを知っていて、リスクを見積もれるからだと私は考えています。

相手が「推しても大丈夫」と判断できる材料を渡す

ここまでを実務に置き換えると、打ち手は「数を増やす」から「判断材料を渡す」に移ります。

誤解:会う人を増やせば、そのうち声がかかる → 増えるのは、あなたの働きぶりを知らない知り合いです。リスクを見積もれない相手は、名前を貸しにくいままです。

変える行動:すでにつながっている数人と、一緒に手を動かす機会をつくる → 小さな共同作業や手伝いで十分です。スミス氏の研究でも、決め手は相手の過去のふるまいでした。

一緒に働いたことのない相手に働きぶりを知ってもらう方法もあります。堀江貴文さんは『ハッタリの流儀』で、完成品だけでなく挑戦の過程をSNSで隠さず発信することを勧めています。「できます」と言い切り、あとから必死に勉強して辻褄を合わせる。その積み重ねが信用に変わる、というのが堀江さんの主張です。

宋世羅さんは『ヨイショする営業マンは全員アホ』で、返信が遅い営業マンは信頼が積み上がらないと書いています。推薦する立場から見れば、返信の遅い人は、紹介先を待たせて自分の顔をつぶすかもしれない相手です。返信の速さは、仕事ぶりを知らない相手にも見える判断材料になります。

誤解:「何かあったらお願いします」と伝えておけば十分 → 何を探しているかが分からなければ、相手は目の前の求人とあなたを結びつけられません。

変える行動:探しているものを具体的に伝え、そのまま転送できる3行の紹介文を添える → たとえば「経理の実務5年。30人規模の会社で月次と年次の決算を回してきました。事業会社の管理部門を探しています」。これなら相手は、言葉を選ぶ手間もリスクも負わずに先方へ送れます。

5分で始められることもあります。この1年で一緒に仕事をした人を3人思い浮かべ、そのうち1人に近況を一言送ってみてください。

用件はなくてかまいません。いま取り組んでいる仕事を一行添えておけば、相手の頭にあるあなたの情報が新しくなります。次に求人を見かけたとき、あなたを思い浮かべる手がかりになります。

おわりに

人脈の数は、あなたが増やせます。けれど、その人脈が動くかどうかは、相手が自分の名前を貸せると思えるかで決まります。

名刺をもう1枚増やす前に、すでに知っている誰かが、安心してあなたを推せる材料を持っているかを確かめてみてください。


この記事で参考にした本

『ハッタリの流儀』堀江貴文さん → 挑戦の過程を隠さず発信し、「できます」と言い切って辻褄を合わせることで信用を積むという考え方

『ヨイショする営業マンは全員アホ』宋世羅さん → 返信の速さのような当たり前の行動が、信頼の値を積み上げるという営業現場の知見


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