人脈を作ろうとしない人に、なぜ人が集まるのか
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「新しい人と知り合いたい」。そう言って交流会に来た人は、実際には誰と話していたのでしょうか。
コロンビア大学のポール・イングラム氏とマイケル・モリス氏は、それを電子名札で記録しました。2007年に発表された研究です。
対象は、社会人向けMBAに通う経営者やコンサルタント、銀行員など約90人。金曜の夜の交流会で、参加者は名札を付けて自由に歓談しました。名札は、誰と誰が会話したかを記録します。
開始前のアンケートで、最も重要な目的に「すでにある関係を固める」を選んだのは5%だけでした。ほかの7つの選択肢は、どれも新しい関係をつくる目的です。
ところが記録を見ると、参加者はもともと親しかった相手と出会い、話し込む確率がずっと高かったんです。
一晩の交流会では、関係に必要な時間が足りない
参加者の多くは、事前に全体の3分の1ほどと親しい関係にあり、残りは初対面でした。自由に動ける場では、知っている顔のほうへ自然に足が向きます。
著者らは、交流会は既存の人間関係から参加者を解き放つはずの場なのに、実際には既存の関係がそのまま再現されていた、とまとめています。
ただし、混ざらなかったわけではありません。性別や人種、職種の違う相手とは普通に話していました。観察したのは1回の交流会で、どの会にも当てはまるとまでは言えません。
もう一つの壁は時間です。カンザス大学のジェフリー・ホール氏は2019年、引っ越して半年以内の大人355人と、大学新入生112人を調べました。
知り合いが気軽な友人になるまでに一緒に過ごした時間は、およそ40〜60時間。友人になるまでに80〜100時間、親しい友人になるには200時間以上かかっていました。
この調査が見たのは友人関係で、仕事上のつながりにそのまま当てはまるとは限りません。それでも、2時間の交流会で1人とずっと話したところで、この入口には届きません。名刺交換のあと連絡が途絶えるのは、相手に嫌われたからとは限らない。関係ができるほどの時間を、まだ一緒に過ごしていないんです。
グロービス経営大学院の『「人的ネットワーク」づくりの教科書』も、効果が薄い行動として「むやみに名刺交換だけ行う」を挙げています。
では、交流会に熱心でないのに人が集まる人は、その時間をどこで積んでいるのでしょうか。
人は「同じ活動」の周りでつながっていく
社会学者のスコット・フェルド氏は1981年、人のつながりは「焦点」の周りに生まれるという理論を発表しました。
焦点とは、職場、サークル、近所、家族のように、人々の活動がまとまる場のことです。同じ焦点を共有する人同士は、何度も顔を合わせる。だから、つながりが生まれやすい。フェルド氏は、1960年代のデトロイトの地域調査のデータでこの考え方を検証しています。
たとえば、毎週の社内勉強会で資料を用意している人を思い浮かべてください。本人は人脈づくりのつもりがなくても、半年たてば同じ顔ぶれと数十時間を過ごしています。
「人脈を作ろうとしない人」の多くは、こうした繰り返し会う場を持っているのだと思います。人を集めに行っていないのに、活動のほうが会う回数を運んでくれる。
回数だけではありません。同じ活動をしていると、相手の仕事ぶりや人柄を、自己紹介より確かな形で見ることになります。締め切りを守る人か、困ったときに手を貸す人か。誰かを紹介したり誘ったりするとき、人はこうした観察を頼りにします。この部分は、フェルド氏の理論から一歩進めた私の解釈です。
ただし、同じ場にいるだけでは足りません。ホール氏の調査では、同僚と何百時間も過ごしながら、相手を「知り合い」と答えた人もいました。仕事の外に関係がなかったからです。
関係を早く深めていたのは、冗談を言い合う、近況を伝え合う、意味のある会話をするといったやり取りでした。
作家のエリック・バーカー氏も『残酷すぎる成功法則』で、打算的なネットワーキングより、友だちづくりとして人とつながることを勧めています。共通の趣味のグループに入ることは、その手軽な入口です。
気前のよさは評価を生み、貸し借りの釣り合いは消耗を防ぐ
人が集まる人について、「見返りを求めずに与え続けるからだ」という説明もよく聞きます。これは半分当たっていて、半分は危うい説明です。
バーカー氏は同書で、組織心理学者アダム・グラント氏の研究を紹介しています。エンジニアや医学生の調査で、成績が最も悪い層にも、最も良い層にも、他人に与える「ギバー」が多かったというものです。与えるだけでは、搾取されて沈むこともあります。
この分かれ目を考えるうえで参考になるのが、組織行動学者のフランシス・フリン氏が2003年に発表した研究です。大企業の従業員161人について、同僚との手助けのやり取りを調べました。
結果は3つに分かれました。
- 気前がよいと見られている人ほど、職場での地位(周囲からの一目置かれ方)が高い
- 手助けの貸し借りが釣り合っている人ほど、生産性が高い
- 手助けを頻繁にやり取りしている人は、地位と生産性の両方が高い
与えるほど評価は上がる。でも、与えるばかりだと自分の仕事が削られる。小さなやり取りの回数を増やすと、その両立に近づけます。これは1社の調査で、因果の向きまでは確かめられていません。
グロービスの教科書が挙げるGIVEの例も、議事録を取る、イベントの会計係を引き受けるといった小さなものです。人が集まる人は、大きな犠牲を払っているというより、小さな手助けを何度もやり取りしているのだと思います。
釣り合いには、自分が受け取る側に回ることも含まれます。社会心理学者ハイディ・グラント氏の『人に頼む技術』は、頼み事への見積もりのずれを紹介しています。
参加者が合わせて1万4000人以上の見知らぬ人に頼み事をした一連の実験では、頼む側は応じてもらえる確率を平均で48%も低く見積もっていました。この研究をまとめたヴァネッサ・ボーンズ氏は、断るときの気まずさを頼む側が軽く見ていることが原因だと述べています。
つまり応じる側には、断りにくさも働いている。頼むなら、小さく具体的に頼むのが礼儀です。
名刺の枚数を、会う回数と小さな貸し借りに置き換える
ここまでを行動に落とすと、変えるのは努力の向け先です。
誤解:人脈は交流会で広げるもの → 一晩では、関係に必要な時間は積み上がりません。人は結局、知っている顔と話します。
正しいアプローチ:同じ顔ぶれと繰り返し会う場を1つ選ぶ → たとえば月2回の勉強会、部署をまたぐプロジェクト、地域のスポーツチーム。回数が時間を運びます。
誤解:見返りを求めず、与え続けるほど人が集まる → 気前のよさは評価につながりますが、偏った貸し借りは自分の仕事を削ります。
正しいアプローチ:5分で済む手助けを頻繁に。自分からも小さく頼む → たとえば会議のメモを共有する、質問に一つ答える、詳しい人を紹介する。そして自分も「この資料、見てもらえますか」と頼む。
明日からできることは2つです。
1つ目は、すでに参加している定例の場で、本題の前後に5分だけ仕事以外の話をすること。ホール氏は、同じ職場の相手と距離を縮めたいならランチなどに誘って場面を変えることを勧めています。
2つ目は、今週中に誰かの質問に1つ答え、自分も1つ小さな頼み事をすることです。
おわりに
人脈を作ろうとしない人は、何もしていないわけではありません。人と会う回数を活動のほうに預け、小さな貸し借りを続けているだけです。
次に交流会の案内が来たら、行くかどうかより先に、同じ顔ぶれと来月もまた会える場があるかを考えてみてください。
この記事で参考にした本
『「人的ネットワーク」づくりの教科書』グロービス経営大学院 → 議事録や会計係を引き受けるといった小さなGIVEと、名刺交換だけでは関係が深まらないという行動の整理
『残酷すぎる成功法則』エリック・バーカー氏 → ギバーが成績の最下位にも最上位にもいるという研究の紹介と、ネットワーキングを友だちづくりとして捉え直す視点
『人に頼む技術』ハイディ・グラント氏 → 頼む側は、相手が応じてくれる確率を大きく低く見積もるという研究
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