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ブクドリ | BOOK DRIP

なぜ論理は正しいのに間違えるのか

約5分で読めます 思考法・問題解決
目次

月曜の朝、上司に資料を見せた。

週末返上で作った。データも揃えた。グラフもきれいに仕上げた。

「ふーん」と読んだ上司が、一言。

「で、結論は?」

頭が真っ白になった。

結論、あるよ。売上が下がってるって。グラフ見ればわかるでしょ。なんで伝わらないんだ。

これ、私だけじゃないはずです。

一生懸命資料を作った。でも「ポイントがぼやけてる」と言われる。会議で発言した。でも「それ、今の話と関係ある?」と返される。

なんで?ちゃんと考えたのに。

答えは意外なところにありました。

考え方が間違っていたんじゃない。考え始める場所が間違っていた。


最初にExcelを開いた時点で、負けてた

私の失敗パターン、こうでした。

上司から「売上レポート作って」と言われる。 ↓ すぐExcelを開く。 ↓ データを並べる。グラフを作る。 ↓ 見栄えを整える。 ↓ 提出。 ↓ 「で、何が言いたいの?」

どこで間違えたかわかりますか。

最初です。Excelを開いた時点で負けてた。

「このレポートは何のためか」を考えずに、作業を始めてしまった。

元BCGコンサルタントの高松智史さんが、面白い言葉を使っています。

「TASKバカ」。

作業から考え始める人のこと。「まず資料を作ろう」「データを集めよう」。やることリストを消化することが目的になって、そのタスクが何の問いに答えるためなのかを考えない。

心当たりありませんか。私はありすぎて耳が痛い。

もう一つ、「打ち手バカ」というのもあります。

解決策から考え始める人。

「AIを導入しよう」「SNSマーケティングを強化しよう」。

手段が先に決まっていて、それが本当に問題を解決するかは検証しない。

IT部門の人に「うちもDXやらないと」と相談されて、「何を解決したいんですか?」と聞いたら、「え、DXってやるものじゃないんですか」と返されたことがあります。

手段と目的が逆転している。よくある話です。

じゃあ、どうすればいいか。

「論点バカ」になればいい。

「どの問いに答えるべきか」を最初に決める。

売上レポートなら、「なぜ今期売上が減少したのか」に答えるのか。「来期どこに投資すべきか」に答えるのか。

問いが決まれば、必要なデータも、グラフの見せ方も、結論も決まる。

問いを決めずに作業を始めると、「で、何が言いたいの?」が待っている。


上司の指示が理解できないとき、やってはいけないこと

こんな経験ありませんか。

上司から指示が飛んでくる。意味がわからない。「なんでそんなこと言うんだ」と思う。

で、反論する。

「それは違うと思います」「こっちの方が効率的です」

結果、空気が悪くなる。議論がかみ合わない。

私も昔よくやりました。「正論を言えば通じる」と思ってた。

通じなかった。

ノーベル経済学賞を取ったバナジーとデュフロという学者がいます。面白いデータを出しています。

「移民は経済にプラスか」という質問。経済学者の40%が「イエス」と答えた。一般市民は25%。

これ、「どっちが正しいか」の問題じゃないんです。

見ている「論点」が違う。

経済学者はGDPへの影響を見ている。一般市民は自分の地域の治安や雇用を心配している。

同じ質問なのに、答える人によって「問い」の意味が違う。

上司の指示が理解できないとき、相手が間違っているとは限らない。

相手が見ている「論点」が違うだけかもしれない。

高松さんは「辻褄思考」という方法を勧めています。

相手の発言が理解不能だったとき、まず「それが正しいと仮定する」。そして、「どう考えれば辻褄が合うか」を考える。

試してみると、意外なことがわかります。

上司は別の情報を持っている。見えている景色が違う。優先順位が違う。

「なるほど、そういう視点だったのか」と思えたら、議論がかみ合い始める。


「売上伸びてます」は、何も言っていない

もう一つ、痛い失敗談があります。

会議でグラフを見せて、こう言いました。

「売上は前年比15%増です」

上司が言いました。

「だから?」

えっ。15%増って、すごくない?

「15%増えたから何なの。このまま投資続けていいの?撤退した方がいいの?」

そう言われて、固まりました。

高松さんがBCG時代に言われたことがあるそうです。

「このグラフから何が言えるか」と聞かれて、「売上伸びてます」と答えた。

返ってきた言葉。

「何も言っていないでしょ」

厳しい。でも正しい。

事実を並べるだけじゃダメなんです。

「15%増えている」はファクト(事実)。

「このペースなら来期には黒字化できる。だから今は投資を続けるべき」は示唆

ファクトは誰でも読める。示唆は考えないと出てこない。

「だから何?」に答えられて初めて、意味のある発言になる。

これ、メールでもよくある失敗です。

長々と経緯を書いて、「以上、ご報告まで」で終わる。

読んだ相手は「で、何してほしいの?」と思う。

最後に一行。「ついては、〇〇をご検討いただければ幸いです」があるかないかで、相手の受け取り方が変わる。


明日からやること、1つだけ

ここまで読んで、いろいろ試したくなったかもしれません。

でも、1つだけにしてください。覚えられないので。

仕事を始める前に、一文だけ書く。

「この仕事は、〇〇という問いに答えるためのもの」

これだけ。

売上レポートなら、「このレポートは『なぜ今期売上が減少したのか』という問いに答えるためのもの」と書く。

メールなら、「このメールは『来週の会議をいつにするか決める』ためのもの」と書く。

「そんな当たり前のこと」と思うかもしれません。

でも、やってみてください。

書けないときがあります。「あれ、この仕事、何のためにやるんだっけ」と。

書けないなら、作業を始めちゃダメです。「で、何が言いたいの?」が待っている。

「でも、上司に言われたからやるんだし…」

わかる。私もそう思ってた。

でもね、「上司に言われたから」で始めると、上司が満足する成果物にならないんです。上司が本当に知りたいことを把握してないから。

だから、わからなければ聞けばいい。

「このレポートは、どの問いに答えればいいですか?」って。

聞くのが恥ずかしければ、「〇〇という観点でまとめようと思いますが、よろしいですか?」と確認すればいい。

最初の5分で問いを確認すれば、あとの5時間が無駄にならない。


「で、何が言いたいの?」

この言葉、もう聞きたくないですよね。

私も聞きたくない。

聞かないためにできることは、シンプル。

作業を始める前に、問いを決める。

それだけで、考え方は変わらなくても、結論の刺さり方が変わります。

明日の朝、最初のタスクを始める前に試してみてください。


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