『全体を見る』ほど、問題が見えなくなる。
目次
「売上が前年比で10%落ちてます」
会議で報告があった。
原因を探した。景気のせいか。競合のせいか。季節要因か。
いろいろ考えた。でも、どれもピンとこない。
「まあ、全体的に厳しいからね」
そう言って、会議は終わった。
「全体」を見ても、何も見えない
多くの人は、問題が起きると「全体の数字」を見る。
売上が落ちた → 全体の売上を見る クレームが増えた → 全体のクレーム件数を見る 生産性が下がった → 全体の生産性を見る
でも、全体を眺めていても、問題の本質は見えてこない。
なぜか。
問題は、いつも「どこかの一部」に潜んでいるから。
「分ける」と見えてくる
ソフトバンクの孫正義社長に叩き込まれた仕事術がある。
「分ける」
これが、数字で問題を解決する鉄則らしい。
ある営業部門で「売上が伸びない」という問題があった。
全体の売上を見ても、なぜ伸びないのかわからなかった。
そこで、売上を「業種別」に分けてみた。
すると、意外な事実がわかった。
新規顧客は増えている。美容業界の受注継続率は高い。
でも、美容業界以外の受注継続率が極端に低かった。
問題は「売上全体」じゃなかった。
「美容業界以外のリピート」という、ごく一部の問題だった。
Yahoo! BBの100万件
もう一つ、ソフトバンクの事例がある。
Yahoo! BBが急成長したとき、コールセンターに月間100万件以上の問い合わせが殺到した。
「問い合わせが多すぎて対応できない」
これが問題だと思われていた。
でも、孫社長は違うアプローチをとった。
100万件の問い合わせ内容を全部プリントアウトして、床に広げた。
そして、内容ごとに分類した。
すると、7つの山ができた。
そのうち2つの山が、圧倒的に大きかった。
全体の約8割を占めていた。
つまり、100万件の問題を解決する必要はなかった。
2つの問題を解決すれば、8割が解消する。
「分ける」ことで、やるべきことが明確になった。
なぜ「全体」を見てしまうのか
人間は、全体を見たくなる生き物だ。
「全体像を把握してから判断したい」
「まず大きな数字を確認しよう」
この発想が、問題解決を遅らせる。
全体を見ると、なんとなく「厳しいね」で終わってしまう。
分けると、「ここが問題だ」と特定できる。
全体を見ると、「頑張ろう」という精神論になる。
分けると、「ここに集中しよう」という具体策になる。
今日からできること
次に「数字が悪い」と感じたら、一つだけ試してほしい。
その数字を、3つ以上に分けてみる。
売上なら、「業種別」「地域別」「担当者別」「商品別」。
クレームなら、「内容別」「時間帯別」「顧客属性別」。
生産性なら、「工程別」「チーム別」「曜日別」。
全体を眺めていたときには見えなかった「犯人」が、必ずどこかに隠れている。
よくある失敗
「全体を見てから判断しよう」とすること。
全体を眺めると、「厳しいね」で終わる。具体的な打ち手が見えない。
分けることを後回しにするほど、問題の発見が遅れる。
問題は「全体」にはない。
問題は、いつも「どこかの一部」にある。
分ければ、見える。
参考書籍
-
三木雄信『孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術』 ソフトバンク流の「分ける」技術の原典。Yahoo! BBの事例など、具体例が豊富。
-
安宅和人『イシューからはじめよ』 問題を分解し、本質を特定する技術。「分ける」思考の背景にある論理がわかる。
合わせて読みたい
『孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術』三木雄信 本記事で紹介したYahoo! BBの事例の詳細を解説。数字で問題を「分ける」技術の原典だ。
データを集めた。グラフも作った。提案もした。──なのに、「で、どうすればいいの?」と言われた。 数字を「分ける」だけでなく、行動に変える方法。分析から示唆を導く技術がわかる。
なぜあの人と議論が噛み合わないのか──「抽象度」のズレが生み出す永遠の平行線 「全体」と「部分」の視点の違いが議論を複雑にする。抽象度を使い分ける思考法がわかる。