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『超速で脳の疲れを取る 賢者の睡眠』メンタリストDaiGo|早起きするほど、脳は老けていく

健康・メンタル ✍ メンタリストDaiGo
約7分で読めます

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『超速で脳の疲れを取る 賢者の睡眠』
目次

眠っている間、脳は自分のサイズを最大6割ほど縮めるという。細胞のすき間を広げ、日中に溜まった老廃物を脳脊髄液で洗い流すためだ。この掃除を怠れば、ゴミは脳に居座り続ける。

その代表格が、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβである。つまり眠りとは、休息である以前に、脳のゴミ出しという生理的な必須作業なのだ。

『超速で脳の疲れを取る 賢者の睡眠』は、メンタリストのDaiGoさんが、この「眠りの科学」を膨大な研究データとともに実践的なTipsへ落とし込んだ一冊だ。

本書は睡眠を削って頑張る生き方を「愚眠」と呼び、自分の遺伝的な体質に合わせて戦略的に眠る技術を「賢眠」と名づける。要するに、努力の方向を「削る」から「整える」へ180度転換せよ、という提案である。

以下、その核心を編集部の視点で読み解いていく。

図解

寝てない人は、太って、嫌われる

本書がまず突きつけるのは、悪眠が脳・体・人間関係に与える具体的なダメージだ。恐怖から入るのは、読者に行動を変えさせるための戦略でもある。

脳への影響は深刻だ。極度の寝不足になると、目を開けたまま1〜10秒だけ脳の活動が止まる「マイクロスリープ」が起きる。本人に自覚はなく、居眠り運転の正体もこれだとされる。

1964年に高校生ランディ・ガードナーが約11日間の断眠に挑んだ実験では、幻覚や妄想が現れ、正気を失いかけたと伝えられる。眠らせないことは、それだけで人を壊しうるのだ。

学力との関係も見過ごせない。MITが大学生88人を1学期間追跡した研究では、期末テストの成績のばらつきの約25%が、日頃の睡眠の長さ・規則性・質で説明できたという。

しかもテスト直前の一夜漬けは成績にほぼ無関係だった。徹夜で詰め込む努力は、少なくともこの調査では報われていない。

体へのダメージはさらに手厳しい。シカゴ大の実験では、1日4時間睡眠を5日続けた人は、よく眠った人より1日平均385kcalも余計に食べていた。

原因はホルモンだ。寝不足になると食欲を高める「グレリン」が約28%増え、満腹を伝える「レプチン」が約18%減るという。脳が勝手に「もっと食べろ」と命じてくるのだから、寝不足太りは意志の弱さの問題ではない。加えて睡眠6時間以下の人は高血圧リスクが約3倍。

カロリンスカ研究所の実験では、2日連続で4時間睡眠だった人の顔写真は、第三者から「魅力がない」「不健康そう」と評価された。眠りは見た目にも出る。

意外だったのは人間関係への波及だ。カリフォルニア大バークレー校の研究によれば、寝不足の脳は相手の表情を正しく読めなくなり、好意的な笑顔すら敵意と誤認しやすくなる。

ランド研究所の試算では、日本の睡眠不足による経済損失は年間約15兆円にのぼるという。眠りは個人の問題を超えて、国家の経済問題でもあるわけだ。

個人の不調としてしか語られてこなかった睡眠を、社会全体のコストとして突きつける視点は新鮮だった。

最適な睡眠時間は、時計遺伝子が決めている

第2の柱は遺伝だ。本書の背骨にあたる主張は明快で、最適な睡眠時間や活動サイクルは努力ではなく、生まれ持った時計遺伝子で決まっている、というものだ。

体内時計が刻むおおよそ24時間のリズムを「サーカディアンリズム」、朝型か夜型かといった個人特性を「クロノタイプ」と呼ぶ。本書は睡眠専門医の分類にならい、これを動物に例えて4つに分ける。

人口の約半数を占める昼型の「クマ型」、朝に強い「ライオン型」、夜が本番の「オオカミ型」、眠りが浅い完璧主義の「イルカ型」だ。

ここで重要なのは、この分類に「気合いでショートスリーパーになる」枠が存在しないことだ。6時間以下で健康を保てる本物のショートスリーパーは、特定の遺伝子変異を持つ「10万人に4人」ほどの激レア体質で、訓練でなれるものではないと本書は釘を刺す。

大多数にとっての基本は約7.5時間。90分周期を5セット、という目安だ。ここは自己啓発的な精神論を、遺伝という動かせない前提で冷静に打ち消していて説得力がある。

寿命に関わるデータもある。スタンフォード大が高齢男性2675人を10年以上追った調査では、レム睡眠の割合が5%減るごとに、あらゆる原因による死亡リスクが13%上がっていた。

眠りの量だけでなく、質もまた寿命に直結するというわけだ。老後の健康まで見据えるなら、若いうちからレム睡眠を削らない生活設計が効いてくる、ということだろう。

早起きするほど、脳は老けていく

第3の柱、賢眠の実践編には、本書で最も刺激的な逆説が置かれている。「早起きは三文の徳」は、多くの人にとってむしろ害だ、というものだ。

ウェストミンスター大の調査では、午前7時より前に起きる人はストレスホルモン「コルチゾール」が過剰に分泌され、高止まりしていた。結果として慢性疲労や高血圧、イライラを招きやすい。

もちろん朝型のライオン型には当てはまらないが、体質に合わない早起きは毒になりうる。本書はここから「朝7時」を、多くの人にとっての早起きデッドラインと位置づける。

同様に寝だめも否定される。睡眠は貯金できず、休日の朝寝坊は「社会的時差ボケ」を招いて月曜の目覚めを悪くするだけ。だからこそ鍵は、寝る時刻ではなく起きる時刻を固定することにある。

環境と習慣のハックも具体的だ。アリゾナ大が高く評価した「刺激制御療法」は、ベッドで仕事やスマホをやめ、脳に「ベッド=眠る場所」と再学習させる方法。

10分眠れなければ一度ベッドを離れるのがコツだという。寝姿勢も重要で、ロチェスター大のマウス実験では横向きが最も脳の老廃物を洗い流せた。寝室を換気してCO2濃度を下げると翌日の集中力まで上がり、ラベンダーの香りは不眠だけでなく悪夢の頻度まで下げたという実験もあり、不安になりやすい人ほど散らかった寝室が無意識のストレスになるため、枕元を片付けるだけでも効くという。

食の提案は逆張り気味で面白い。糖質制限が流行る今、本書はあえて夜の戦略的な糖質を勧める。就寝前の米は睡眠時間を延ばし、就寝1時間前のキウイ2個は入眠を早めたというデータを引く。

冷やした塩茹でジャガイモも腸を介して睡眠の質を上げるという。一方でカフェインは就寝6時間前、アルコールは4時間前まで。寝酒は分解物のアセトアルデヒドが眠りを浅くするため、じつは逆効果だ。

運動は激しさより、階段や徒歩通勤といった日常動作「NEAT」を増やすことが睡眠圧を高める。日中の眠気には30分以内・1日2回までの昼寝が効く。

仮眠の直前にコーヒーを飲む「コーヒーナップ」を組み合わせれば、カフェインが効き始める15〜20分後にちょうどすっきり目覚められる。

眠りは、夜と朝の作法で仕上げる

賢眠を締めくくるのが、夜と朝のルーティンだ。両者は「今夜の眠りは今朝の過ごし方で決まる」という考えで地続きになっている。

夜の原理は深部体温のコントロールにある。体の中心温度が急に下がると強い眠気が来るので、就寝90分前に40度前後のぬるめの湯へ20〜30分つかる。

上げた深部体温が寝るころちょうど急降下する仕組みだ。ちなみに靴下を履いて寝るのは足からの放熱を妨げ、逆効果になるという。体を緩めたら思考を止める番で、本書は顔から足まで順に脱力する米軍式の2分入眠法や、不安を紙に書き出す「筆記開示」、単調な連想で頭を空にする「マインドシャッフル」を紹介する。

興味深いことに、共感力が高く頼れるパートナーがそばにいる人ほど不安が減ってよく眠れるという報告もある。眠りの質は、隣に誰がいるかにすら左右されるらしい。

朝の作法はもっとシンプルだ。起きたら真っ先にカーテンを開けて朝日を浴びる。これで体内時計がリセットされ、約15時間後に安眠ホルモン「メラトニン」が分泌されるタイマーが動き出す。

日中に朝日で活性化したセロトニンが、夜にメラトニンへ変わるからだ。逆にスヌーズは目覚めを最悪にするので撤廃し、起きぬけすぐのコーヒーもコルチゾールの分泌ピークと重なって逆効果になる。

少し時間を置いてから飲むのが正解だという。

睡眠は根性ではなく、設計の問題だ

本書の最大の強みは、体験談ではなく研究データで押し切る密度の高さにある。MITやスタンフォード、シカゴ大といった一流機関の論文を次々に引き、しかも「なぜそうなるのか」という体の仕組みまで説明するので、腹落ちして行動を変えやすい。

「睡眠を削って頑張る」という発想が、いかに時代遅れかを思い知らされる。

一方で、留保も必要だ。引用される個々の実験には被験者数が小さいものや条件の限られたものも含まれ、キウイやジャガイモのような食のTipsを万人に効く必勝法として受け取るのは早計だろう。

本書はあくまで、確度の異なる知見を「まず試す価値のある選択肢」として幅広く並べたカタログに近い。そう割り切り、自分のクロノタイプに合うものだけを取捨選択するのが賢い読み方だ。

もう一つ意識したいのは、主語の切り替えだ。ここに並ぶTipsの多くは、平均値や集団の傾向から導かれている。だが実際に眠るのは平均的な誰かではなく、固有の体質と生活を抱えた自分だ。

だとすれば本書との付き合い方は、全部を守ろうとする優等生ではなく、二週間ほど一つずつ試して自分の体で効果を測る実験者に近い。データを鵜呑みにするのではなく、仮説として自分に当てて確かめる——その姿勢まで含めて、本書は「賢く眠る」を説いているのだと思う。

それでも、貫かれるメッセージは強い。眠りは根性で削る対象ではなく、遺伝と生理に合わせて設計する対象だ——この一点さえ握れば、今夜からできることは多い。手始めに入浴の時刻を90分前倒しにする。それだけで、明日の脳の冴えは確かに変わり始める。


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