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ブクドリ | BOOK DRIP

「わからない」に耐えられない人が、判断を間違える

約4分で読めます 思考法・問題解決
目次

会議で質問された。答えがすぐに出なかった。

沈黙が怖くて、とっさに「たぶん〇〇だと思います」と言った。

後で調べたら、全然違った。

この経験、あるだろう。


「せっかち」は能力じゃない

面白い研究がある。

人間の脳には「せっかちモード」と「じっくりモード」がある。心理学では「二重過程理論」と呼ばれている。

せっかちモードは、瞬時に判断する。直感で動く。速い。

じっくりモードは、論理的に考える。分析する。遅い。

どっちが優れているか。

答えは「どちらでもない」だ。

問題は、せっかちモードが「デフォルト」になっていること。人間は、放っておくと「速く答えを出す」方に流れる。

なぜか。

答えが出ないと、不安だからだ。


「認知資源」という名のMP

ここで、認知資源という概念が出てくる。

ゲームのMPみたいなものだと思えばいい。考えるたびに消費される。疲れると回復しない。一日の量は決まっている。

じっくり考えることは、MPをたくさん使う。だから脳は嫌がる。

「もういいでしょ、このくらいで」「早く結論出そうよ」

脳が勝手にそう言ってくる。

結果、安易な答えに飛びつく。

「とりあえず」で決める。「まあいいか」で終わらせる。

それを「決断力がある」と勘違いしている人が、けっこういる。


ネガティブ・ケイパビリティという力

19世紀の詩人、ジョン・キーツが面白いことを言っている。

「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉を作った。

「不確実性、謎、疑念の中に在っても、いら立ちを覚えることなく耐える力」

要は、「わからない」に耐える力だ。

これ、現代ではめちゃくちゃ重要なスキルになっている。

なぜか。

世の中が複雑すぎるからだ。

簡単に答えが出る問題は、もう解かれている。残っているのは、すぐに答えが出ない問題ばかり。

なのに、「わからない」に耐えられない人が、安易な答えに飛びつく。

「AIに仕事を奪われる」→ だからプログラミングを学ぼう。 「老後2000万円問題」→ だから投資を始めよう。 「終身雇用崩壊」→ だから副業を始めよう。

悪くない。でも、「本当にそれが自分の問題か」を考えてない。

焦って動いて、後悔する。


「待つ」ことの価値

精神科医の帚木蓬生さんが、ネガティブ・ケイパビリティについて書いている。

医療の現場では、「わからない」ことだらけだという。

患者の症状がはっきりしない。原因が特定できない。治療法が確立されていない。

そのとき、焦って診断を下すと、誤診になる。

「もう少し待とう」「様子を見よう」

この判断ができるかどうかが、名医と普通の医者を分ける。

ビジネスでも同じだ。

上司に「どう思う?」と聞かれて、すぐに答えなきゃいけないと思っている。

でも、本当にそうか?

「まだわかりません」「もう少し考えさせてください」

これが言える人と、言えない人がいる。

言えない人は、たいてい「できる人」に見られたい人だ。


「わからない」と言える人が強い

逆説的だけど、「わからない」と言える人の方が信頼される。

なぜか。

「この人は、わかったフリをしない」とわかるからだ。

「たぶん〇〇だと思います」と言う人は、当たっているときはいい。でも、外れたときの信用の落ち方がすごい。

「わかりません。調べます」と言う人は、地味だけど、長期的に信頼を積み上げる。

どっちがいいか。明らかだろう。


曖昧さに耐える練習

じゃあ、どうすればネガティブ・ケイパビリティを鍛えられるか。

一つだけ、試してほしいことがある。

「わからない」を、そのまま24時間放置する。

質問されて、答えがわからない。普通なら、すぐにGoogle検索する。ChatGPTに聞く。

それを、あえてやらない。

「わからない」という状態のまま、一晩寝る。

不思議なことに、脳は勝手に働いている。翌朝、ふと答えが浮かぶことがある。

これが「じっくりモード」だ。

すぐに答えを求めると、せっかちモードしか使えない。あえて待つことで、じっくりモードが動き出す。

焦る必要はない。

「わからない」は、「まだ答えが出ていない」だけだ。


「答えを急ぐ人」が見落とすもの

最後に、一つだけ。

答えを急ぐ人は、「問い」を間違えることが多い。

「どうすれば成功できるか」と聞く前に、「自分にとっての成功とは何か」を考えるべきだ。

「どうすれば稼げるか」と聞く前に、「なぜ稼ぎたいのか」を考えるべきだ。

答えを急ぐと、問いを検証する時間がない。

間違った問いに、正しい答えを出しても意味がない。

「わからない」に耐える時間。

それは、問いを検証する時間でもある。

焦るな。待て。

「わからない」は、悪いことじゃない。


この記事で参考にした本

『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』枝廣淳子 → 「わからない」に耐える力が、なぜ現代で重要なのかを教えてくれた

『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』帚木蓬生 → 医療現場から見た「待つ」ことの価値。名医の条件がわかった


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