「わからない」に耐えられない人が、判断を間違える
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会議で質問された。答えがすぐに出なかった。
沈黙が怖くて、とっさに「たぶん〇〇だと思います」と言った。
後で調べたら、全然違った。
この経験、あるだろう。
「せっかち」は能力じゃない
面白い研究がある。
人間の脳には「せっかちモード」と「じっくりモード」がある。心理学では「二重過程理論」と呼ばれている。
せっかちモードは、瞬時に判断する。直感で動く。速い。
じっくりモードは、論理的に考える。分析する。遅い。
どっちが優れているか。
答えは「どちらでもない」だ。
問題は、せっかちモードが「デフォルト」になっていること。人間は、放っておくと「速く答えを出す」方に流れる。
なぜか。
答えが出ないと、不安だからだ。
「認知資源」という名のMP
ここで、認知資源という概念が出てくる。
ゲームのMPみたいなものだと思えばいい。考えるたびに消費される。疲れると回復しない。一日の量は決まっている。
じっくり考えることは、MPをたくさん使う。だから脳は嫌がる。
「もういいでしょ、このくらいで」「早く結論出そうよ」
脳が勝手にそう言ってくる。
結果、安易な答えに飛びつく。
「とりあえず」で決める。「まあいいか」で終わらせる。
それを「決断力がある」と勘違いしている人が、けっこういる。
ネガティブ・ケイパビリティという力
19世紀の詩人、ジョン・キーツが面白いことを言っている。
「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉を作った。
「不確実性、謎、疑念の中に在っても、いら立ちを覚えることなく耐える力」
要は、「わからない」に耐える力だ。
これ、現代ではめちゃくちゃ重要なスキルになっている。
なぜか。
世の中が複雑すぎるからだ。
簡単に答えが出る問題は、もう解かれている。残っているのは、すぐに答えが出ない問題ばかり。
なのに、「わからない」に耐えられない人が、安易な答えに飛びつく。
「AIに仕事を奪われる」→ だからプログラミングを学ぼう。 「老後2000万円問題」→ だから投資を始めよう。 「終身雇用崩壊」→ だから副業を始めよう。
悪くない。でも、「本当にそれが自分の問題か」を考えてない。
焦って動いて、後悔する。
「待つ」ことの価値
精神科医の帚木蓬生さんが、ネガティブ・ケイパビリティについて書いている。
医療の現場では、「わからない」ことだらけだという。
患者の症状がはっきりしない。原因が特定できない。治療法が確立されていない。
そのとき、焦って診断を下すと、誤診になる。
「もう少し待とう」「様子を見よう」
この判断ができるかどうかが、名医と普通の医者を分ける。
ビジネスでも同じだ。
上司に「どう思う?」と聞かれて、すぐに答えなきゃいけないと思っている。
でも、本当にそうか?
「まだわかりません」「もう少し考えさせてください」
これが言える人と、言えない人がいる。
言えない人は、たいてい「できる人」に見られたい人だ。
「わからない」と言える人が強い
逆説的だけど、「わからない」と言える人の方が信頼される。
なぜか。
「この人は、わかったフリをしない」とわかるからだ。
「たぶん〇〇だと思います」と言う人は、当たっているときはいい。でも、外れたときの信用の落ち方がすごい。
「わかりません。調べます」と言う人は、地味だけど、長期的に信頼を積み上げる。
どっちがいいか。明らかだろう。
曖昧さに耐える練習
じゃあ、どうすればネガティブ・ケイパビリティを鍛えられるか。
一つだけ、試してほしいことがある。
「わからない」を、そのまま24時間放置する。
質問されて、答えがわからない。普通なら、すぐにGoogle検索する。ChatGPTに聞く。
それを、あえてやらない。
「わからない」という状態のまま、一晩寝る。
不思議なことに、脳は勝手に働いている。翌朝、ふと答えが浮かぶことがある。
これが「じっくりモード」だ。
すぐに答えを求めると、せっかちモードしか使えない。あえて待つことで、じっくりモードが動き出す。
焦る必要はない。
「わからない」は、「まだ答えが出ていない」だけだ。
「答えを急ぐ人」が見落とすもの
最後に、一つだけ。
答えを急ぐ人は、「問い」を間違えることが多い。
「どうすれば成功できるか」と聞く前に、「自分にとっての成功とは何か」を考えるべきだ。
「どうすれば稼げるか」と聞く前に、「なぜ稼ぎたいのか」を考えるべきだ。
答えを急ぐと、問いを検証する時間がない。
間違った問いに、正しい答えを出しても意味がない。
「わからない」に耐える時間。
それは、問いを検証する時間でもある。
焦るな。待て。
「わからない」は、悪いことじゃない。
この記事で参考にした本
『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』枝廣淳子 → 「わからない」に耐える力が、なぜ現代で重要なのかを教えてくれた
『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』帚木蓬生 → 医療現場から見た「待つ」ことの価値。名医の条件がわかった
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