「このまま行けば」が、いつも外れる理由
目次
「この調子で行けば、来年は売上2倍だな」
グラフを見てそう思った。右肩上がり。3ヶ月連続で伸びてる。
半年後、売上は横ばいだった。
なんでだ。
人間は「直線」しか見えない
ファクトフルネスという本がある。
スウェーデンの医師、ハンス・ロスリング氏が書いた。世界の正しい見方について教えてくれる本だ。
その中で、興味深い概念が出てくる。
「直線本能」
人間は、グラフを見ると「直線で続く」と思い込む。
上がっているものは、上がり続けると思う。下がっているものは、下がり続けると思う。
でも、現実のグラフは直線じゃない。
S字カーブもある。指数関数もある。ある時点で頭打ちになるものもある。
人間の脳は、それを想像するのが苦手だ。
「人口爆発」という予測の外れ方
ロスリング氏が出す例がわかりやすい。
「世界の人口は、このまま増え続けて大変なことになる」
1960年代、こう言われていた。人口爆発が起きる。食料が足りなくなる。地球は破滅する。
実際、人口は増えた。1960年に30億人だったのが、2020年には78億人になった。
でも、「このまま」は続かなかった。
子供の数は減った。出生率は下がった。国連の予測では、21世紀中に110億人程度で頭打ちになる。
なぜ予測が外れたか。
人口増加のグラフは「直線」じゃなかった。
最初は急激に増える。でも、ある程度豊かになると出生率が下がる。S字カーブを描いて安定する。
直線で見ていた人たちには、これが見えなかった。
売上も、成長も、直線じゃない
これ、ビジネスでも同じだ。
新しいサービスを始めた。最初の3ヶ月、ユーザーが倍々で増えた。
「このペースなら、1年後には10万人だ」
半年後、伸びは止まった。
なぜか。
初期に飛びつく人(アーリーアダプター)と、後から来る人(マジョリティ)は違う。最初の勢いは、続かないことが多い。
成長曲線はS字カーブを描く。
最初は緩やか。次に急激に伸びる。そして、どこかで頭打ちになる。
直線で延長線を引くと、必ず予測は外れる。
「下がり続ける」も、外れる
逆のパターンもある。
「うちの業界は終わりだ。このまま縮小し続ける」
確かにグラフは右肩下がり。でも、ゼロになるわけじゃない。
ある程度まで下がると、残った需要で安定することが多い。
あるいは、底を打って反転することもある。
「下がっているから、もっと下がる」
この予測も、直線本能のせいで外れる。
なぜ人間は直線しか見えないのか
理由は単純だ。
直線が一番簡単だから。
S字カーブを予測するには、構造を理解しないといけない。
「なぜ今、増えているのか」「その要因は、いつまで続くのか」「どこかで変わる要素はないか」
これを考えるのは、脳にとって負荷が高い。
だから、脳はサボる。
「上がってるから上がる」「下がってるから下がる」
これで済ませようとする。
「このまま」を疑え
じゃあ、どうすればいいか。
一つだけ、試してほしいことがある。
「このまま行けば」と思ったとき、「なぜこのままが続くと思うのか」を自問する。
たいてい、答えられない。
「だって、今まで続いてきたから」
それは理由じゃない。過去の延長線でしかない。
本当の理由を考えると、「続かない理由」も見えてくる。
- 初期のアーリーアダプターが一巡する
- 競合が参入してくる
- 市場が飽和する
- トレンドが変わる
「続く理由」と「続かない理由」の両方を考える。
それだけで、予測の精度は上がる。
専門家も間違える
ちなみに、ロスリング氏の調査によると、世界の人口増加について正しく答えられた人は、わずか7%だった。
医者も、教授も、ジャーナリストも間違えた。
なぜか。
直線本能は、知識の量では克服できないからだ。
「知っている」と「本能に逆らえる」は違う。
意識的に「直線じゃないかもしれない」と疑わないと、同じ罠にはまる。
予測は外れる。それでも考える意味
最後に、一つだけ。
予測は、外れるためにある。
矛盾しているように聞こえるかもしれない。
でも、予測を立てることで「何が外れたか」がわかる。
「直線で考えていたから外れた」「S字カーブを考慮していなかったから外れた」
この振り返りが、次の予測を精度を上げる。
「このまま行けば」を疑うこと。
それが、直線本能から抜け出す第一歩だ。
この記事で参考にした本
『FACTFULNESS』ハンス・ロスリング → 「直線本能」という概念。人口増加の予測が外れた理由がわかりやすかった
『ノイズに振り回されない情報活用力』鈴木進介 → 情報を見る際のフィルターの重要性。「相関と因果を混同しない」という視点
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なぜ論理は正しいのに間違えるのか 前提が間違っていると、どんなに論理的でも結論は間違う。「このまま続く」という前提自体を疑え。
去年の成功を、今年も繰り返した。通用しなかった。 過去のパターンが続くと思い込む。成功体験も、直線で延長すると失敗する。