筋トレの成果を決めていたのは、休んでいる時間だった
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もっと重く、もっと追い込む。トレーニングの改善案は、たいていこの方向に向かいます。
ところが庵野拓将さんの『科学的に正しい筋トレ 最強の教科書』を読むと、成果を決めているのは負荷の高さではないことが分かります。
決めているのは総負荷量です。重量と回数とセット数を掛け合わせた総量。そしてこの総量は、休み方によって上下します。
つまり、追い込むほど成果が出るとは限りません。
高強度でなくてもいい。決めているのは総量
マクマスター大学のミッチェルらの研究が分かりやすい。
トレーニング未経験者を、最大挙上重量の80%で行う高強度グループと、30%で行う低強度グループに分けました。どちらも1日3セット、週3回、疲労困憊になるまで、10週間続けます。
結果、両グループとも筋肉量は増加し、グループ間に有意な差は認められませんでした。
同大学のバードらの研究も同じ方向を示します。1セットのグループの平均総負荷量は942kg、3セットのグループは2184kg。総負荷量が高かった3セットのほうが、トレーニング後の筋タンパク質の合成率が有意に高くなりました。
サウサンプトン・ソレント大学のフィッシャーらは、この仕組みを運動単位のサイクルで説明しています。低強度でも疲労困憊まで行えば、すべての筋線維を収縮させることが可能になる、と。
重さは手段のひとつであって、目的ではありませんでした。
セット間で「早く次へ」は、損をしている
総負荷量が指標だとすると、休憩の意味が変わります。
ニューヨーク市立大学のシェーンフェルドらは、セット間の休憩時間について複数の研究を分析し、1分間の短い休憩と3分間の長い休憩を比較するメタアナリシスを行いました。
結果は、筋肥大と筋力増強のいずれにおいても、長時間の休憩のほうが有意に効果的でした。
休憩を短くすると、次のセットで挙げられる重量も回数も落ちます。追い込んでいる感覚は強くなりますが、総負荷量は減っている。感覚と結果が逆を向く典型例です。
同じシェーンフェルドらのメタアナリシスでは、運動スピードについても8秒以下なら筋肥大の効果に大きな差はなく、8秒より遅いと効果が低いことが示されています。ゆっくり動かすほど効くわけでもありません。
準備運動のストレッチが、成果を削っていた
もうひとつ、習慣として定着している行為が疑われています。
ルイジアナ州立大学のネルソンらの研究では、トレーニング前にストレッチを行った場合、運動回数が24%少なくなりました。
サンパウロ大学のバローゾらが経験者を対象に行った研究では、運動回数が18%、総負荷量が23%減少しています。
さらに同大学のジュニオールらが10週間追跡した研究では、ストレッチを行わなかったグループの筋断面積が12.7%増加したのに対し、ストレッチを行ったグループは7.4%の増加にとどまりました。
では何をすればいいのか。同じくサンパウロ大学のアバドらによれば、有酸素運動を行った後にその種目に特化したウォームアップを行うと、そうでない場合に比べて最大挙上重量が8.4%増加しました。
体を温めることと、伸ばすことは別の話でした。
明日からできること
誤解:頻度を増やすほど、筋肉はつく → セントラルフロリダ大学のコフーンらは、週3回と週6回のグループを、週単位の総負荷量が同じになるように設定して8週間比較しました。筋肉量の増加でも脂肪量の減少でも、有意な差は認められていません。
西スコットランド大学のラルストンらによる12の研究のメタアナリシスでも、週単位の総負荷量が同じなら頻度による筋力増強効果に有意差はありませんでした。
週2回でも6回でも、合計が同じなら結果は同じ。だとすれば、続けやすいほうを選ぶのが合理的です。
正しいアプローチ:睡眠時間を、トレーニング計画の一部として扱う → イギリスのUKスポーツが行った研究では、睡眠時間6時間未満のグループは8時間以上のグループに比べ、トレーニングの総負荷量が有意に減少しました。
寝不足の日は、同じメニューをこなしているつもりでも総量が落ちています。そしてマクマスター大学のコワセヴィッチらのレビューによれば、筋トレは睡眠の時間は増やさないものの、質を高めます。
睡眠と筋トレは、互いの結果を押し上げる関係にありました。
もうひとつ、継続について。本書によれば、ジムなどで筋トレを始めた人のうち1年続けられる人は4%に満たないそうです。96%が1年以内に脱落する。
サウサンプトン大学のステマタキスらが8万306名を対象に行った調査では、筋トレはがんによる死亡率を31%、すべての病気による死亡率を23%減少させ、しかもジムでも自宅の自重トレでも同等の結果が得られました。
続けられる場所でやるほうが、強い場所でやるより効きます。
おわりに
ボディビル世界チャンピオンの山岸秀匡さんは『筋トレは人生を変える哲学だ』で、自身の睡眠を23時就寝、6時起床の7時間に固定していると書いています。
競技として突き詰めている人ほど、休息を管理しています。
追い込むことは目に見えます。休むことは見えません。それでも、結果を作っているのは後者のほうでした。
この記事で参考にした本
『科学的に正しい筋トレ 最強の教科書』庵野拓将 → 総負荷量という指標を軸に、強度、休憩、頻度、ストレッチ、睡眠を研究論文で検証した一冊。定説がいくつも覆る。
『ボディビル世界チャンピオンが伝授する 筋トレは人生を変える哲学だ』山岸秀匡 → 競技者の側から見た実践。睡眠、水分、食事の管理を含めて生活全体で設計している点が参考になる。
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