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ブクドリ | BOOK DRIP

同じ数字を見ているのに、なぜ結論が違うのか

約3分で読めます 思考法・問題解決
目次

「解約率が下がってます」

会議で、部下がそう報告した。

「いや、上がってるだろ」

別の部門の人が反論した。

同じデータを見ているはずなのに、結論が真逆。

何が起きているのか。


「解約率」の定義が違った

調べてみたら、シンプルな話だった。

「解約率」の定義が、二人で違っていた。

部下は「解約数 ÷ 月初の顧客数」で計算していた。 別の人は「解約数 ÷ 累計顧客数」で計算していた。

分母が違うから、同じ解約数でも、解約率が変わる。

どっちが正しいとかじゃない。定義が違うんだから、数字が違って当然だ。

でも、二人ともそのことに気づいていなかった。「解約率」という同じ言葉を使っているから、同じものを見ていると思い込んでいた。


数字は「客観的」じゃない

「数字は嘘をつかない」

よく聞く言葉だ。でも、これは半分嘘だ。

数字そのものは嘘をつかない。でも、数字の「定義」は人によって違う。

売上。利益。稼働率。顧客満足度。

どれも「当たり前」に使っている言葉だけど、その計算方法は会社によって、部門によって、人によって違う。

「売上」一つとっても、「契約ベースの売上」と「入金ベースの売上」がある。どっちを使うかで、数字は変わる。

だから、数字を見る前に確認すべきことがある。

「その数字、どう計算したの?」


「継続的」と「一時的」を分けているか

三木雄信さんという人がいる。ソフトバンクの孫正義さんの元で働いていた人だ。

彼が面白いことを言っている。

「継続的な売上」と「一時的な売上」を分けていないと、危機に気づけない。

どういうことか。

全体の売上グラフが横ばいに見える会社がある。「まあ安定してるな」と思う。

でも、内訳を見ると違った。

屋台骨であるべき継続的売上(月額課金など)が急減していた。それを、一時的な売上(キャンペーンや大口案件)で必死に穴埋めしていた。

グラフは横ばい。でも、中身は崩壊寸前。

「売上」という同じ言葉で、全く違う現実を見ていた。


定義を揃えるだけで、議論が変わる

中尾隆一郎さんという人がいる。リクルートで29年間働いた人だ。

彼がこう言っている。

「数字で何でも分かると信じるバカ」と「数字では何も分からないと信じるバカ」のどちらにもなるな。

数字は7割程度の真実を捉えるツール。残りの3割は経験や知恵で補う。

でも、その7割すら活かせていない組織が多い。

なぜか。定義が揃っていないから。

同じ「解約率」でも、定義が違えば議論が噛み合わない。同じ「売上」でも、分け方が違えば見える景色が変わる。

数字を使う前に、まず定義を揃える。

これだけで、会議の質は劇的に変わる。


よくある「定義ズレ」のパターン

実務で起きやすい定義ズレをいくつか挙げておく。

1. 期間の違い 「月次」で見ているのか「累計」で見ているのか。累計データは常に右肩上がりに見えるから、短期的な悪化を見逃しやすい。

2. 分母の違い 「解約率」の分母は「月初顧客数」なのか「累計顧客数」なのか。分母が違えば、数字の意味は全く変わる。

3. 範囲の違い 「顧客満足度」の調査対象は「全顧客」なのか「アンケートに回答した顧客」なのか。回答者は満足度が高い層に偏りやすい。

4. 計上タイミングの違い 「売上」は「契約時」に計上するのか「入金時」に計上するのか。タイミングが違えば、同じ取引でも数字が変わる。

どれも「当たり前」に使っている言葉だ。でも、定義を確認せずに使うと、議論が噛み合わなくなる。


「それ、どう計算したの?」

今日から試せることがある。

会議で数字が出てきたら、「それ、どう計算したの?」と聞いてみろ。

「解約率が上がってます」→「その解約率、分母は何?」 「売上が伸びてます」→「それ、継続売上?一時売上?」 「顧客満足度が高いです」→「調査対象は誰?」

聞くのは恥ずかしくない。

むしろ、聞かずに議論を進める方が危険だ。定義が違う数字で議論しても、結論は出ない。


数字は「共通言語」になれる

数字の良いところは、「共通言語」になれることだ。

部門が違っても、役職が違っても、同じ数字を見れば、同じ事実を共有できる。

ただし、条件がある。

定義が揃っていること。

定義が揃っていない数字は、共通言語にならない。同じ言葉を話しているつもりで、全く違うことを言っている状態になる。

数字を武器にしたいなら、まず定義を揃えろ。

それだけで、数字は「誤解の元」から「共通言語」に変わる。


この記事で参考にした本

『孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術』三木雄信 → 「継続的売上と一時的売上を分ける」という視点。定義の曖昧さが危機を見えなくするという指摘。

『「数字で考える」は武器になる』中尾隆一郎 → 「数字で何でも分かると信じるバカにも、数字では何も分からないと信じるバカにもなるな」という言葉。数字は7割の真実を捉えるツール。


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『全体を見る』ほど、問題が見えなくなる。 全体を眺めても問題は見つからない。分けることで初めて見える。今回の「定義を揃える」と合わせて読むと、データ分析の基本が掴める。

「なるべく早く」の意味が、全員違った 言葉の定義のズレという点で、今回の記事と共通するテーマ。数字だけでなく、言葉全般の定義を揃える重要性。

調べてるだけで、動いてない 分析と行動のバランス。定義を揃えることは大事だが、分析に時間をかけすぎても成果は出ない。